私の婚約者まで奪った妹に「ざまぁ」したいなと思っていたら、その妹は奴隷として売られてました。

狼狼3

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おまけ

全てを奪った代償

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「ねぇ。お願いだから、許して下さい。もう魅了なんてしませんから。」

 私は、屈辱を覚えながらもそうロメン王子に言葉を投げる。
 どうしてこの私が………
 こんな糞野郎に頭を下げなければ……
 でも、ここで頭を下げなければ奴隷解放からの道はほぼない。
 屈辱的だが、心を押し潰して言うことにした。

 そうしてロメン王子にさっきの言葉を掛けた後、ロメン王子は心底嫌そうに答えた。

「嫌に決まってるじゃん。一生君は奴隷の姿が似合うよ。」
「な、何でですか?私が奴隷の姿が似合うとは一体?」

 私は、糞野郎の答えに怒りを覚える。
 この私に向かって、どんな物言いをしているのだお前は?
 奴隷の姿が似合う?
 それこそお前の方が奴隷に似合っているわ。
 ふざけるなよ、カスが。

 本当は思ったこと全てを言ってやりたいが、奴隷の私が言える内容でないので、軽めに反発する。……絶対に後で奴隷にして同じこと言わせてやりたい。

「だって、君は僕の可愛い妻のフィーネットを物凄く苛めたじゃないか。それも、幼い頃から。フィーネットにその話を聞いた時、僕はどうして気付かなかったんだって、自分自身を殴りたくなったよ。建前は王族を苛めたからだけど、僕は絶対にこんなに可愛い妻であるフィーネットを苛めたお前を許さない。 」
「ロメン王子……ありがとう。」
「妻である君を守るのは、夫の役目だろ?そこに、お礼も何もないよ。」
「うぅ……」

 悲しさでは無く、嬉しさで泣いているお姉ちゃんを糞野郎はそっと抱き締める。その姿は、美男美女の二人だからかとても華があり、牢獄が幾つも置いてある暗い雰囲気の場所で、その二人は異様に輝いている。私以外に居る犯罪奴隷達もこの二人をじっと見つめている。
 ロメン王子の隣に居るのは、本当なら私だったというのに。
 糞女が。 
 ……ってか、ロメン王子が糞女のことを妻と言っているということは、もう結婚をしたのか二人は?
 良く見ると、糞女の左の薬指には、私が今まで見たことのないような程大きなダイヤモンドの指輪がついてある。私でさえ、お父さんやお母さんからあんなにデカイダイヤモンドのついた指輪を貰ったことなんてないというのに。

 どうして。
 どうしてこの糞女は幸せそうなんだ。
 今まで私に、様々な物を奪われてきたというのに。
 今まで通り奪われていればよかったのに。
 なのに、何故こんなに幸せそうな顔をしているんだ。
 ふざけるな。
 ふざけるな。
 ロメン王子の隣に居るのは私の筈だったんだぞ!!

 怒りのあまり、壊れるはずもない頑丈に作られた鉄格子をガンガンと揺らす。ガンガンと鉄格子を揺らしものすごい音を立てる私に、他の犯罪者達は冷たい目で見てくるがそんなの知らない。
今なら、私を奴隷から解放して、私に半殺しにされて、ロメン王子との婚約を破棄したら許してやる。
 ガンガンと鉄格子を揺らし続けていると、糞女が震えながら口を開く。

「私は、貴女に小さな頃から全てを奪われてきました。親以外にも、メイドや使用人から私は居ない者扱いされて、一度は死すら覚悟しました。
「………それで?」
「なっ、貴様!!」

 私は早く奴隷解放の言葉が聞きたくて、聞き返す。
 王子が以上な程の殺意を向けてくるが、そんなの知ったことではない。

「だけど、そんな一人ぼっちだった私をこの優しくて格好いい夫のロメン王子は救ってくれました。一人でいる私を寂しく思って、お人形を手作りで作ってくれたり、私に優しく話かけたり…………ロメン王子が居なかったとすれば、私はこの世にもう居なかったと思います。」
「……………」

 奪われるだけのお前なんか、この世に居なくていいわ。
 
「私は、貴女が嫌いです。努力もせずに、私が受けるはずだった物まで奪う、貴女が。だから………私の物を全て奪ったんだから、一生貴女は奴隷になって、人権を奪われて下さい。今まで人の物を沢山奪ってきたんだから、奪われてみてはいかがですか?……ロメン王子は一応は血の繋がった妹にこのようなことを言う私を嫌いになりますか?」
「いいや、なるわけない。……にしても、よく頑張ったな。」

 先程と同じように、糞野郎は糞女を抱き締める。
 ……今、何て言った?
 私に対して、奴隷になってだと?
 今まで私に奪われてきただけのお前が何を言っているんだ。
 はやく、訂正しろ。
 絶対に許せない。

「ふざけるな。私を早く奴隷から解放しろよ。今まで奪われてきた糞女が、調子に乗るな!!それと、私に対して冗談でも奴隷になれと言ったんだ。一発ぶん殴らせろ!!それと、その糞野郎との婚約を破棄し──」

 怒りのあまり、言葉を出してしまった私。
 このまま最後まで怒鳴り散らしてやろうと思った瞬間、視界が真っ暗になり何も見えなくなる。
 な、何をやった。
 この私に、どんな卑劣なことをしたんだ。

「今言ったのって、王族に対する罵声だよね?王族に罵声を浴びせたら、どうなるか知って言ってるのかな?貴族なら爵位取り消し、平民なら終身刑。奴隷なら……死刑だよね♪フィーネットは僕と結婚したし、王族の仲間入り。………フィーネットどうしたい?」

 視界が真っ暗な状態で、耳から聞こえてくる言葉に頭が混乱する。
 お姉ちゃん♪
 優しいお姉ちゃんなら、酷いことなんてしないよね♪?
 こんなところで、死ぬなんて絶対いやよ!
 や、やめて。

 地下の牢獄が集まる場所で一人の奴隷が言葉を出そうとした瞬間、薬指に大きな宝石が付いた指輪を持った美少女が、縦に大きく腕を振る。その可憐で小さな手が縦に振れたことを確認すると、美少女の隣に居る美青年は腰に付いている剣を抜き出し、牢獄に向かって剣を振るった。


 地下の監獄が集まる場所に、鉄のような匂いが広がった。
 
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