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しおりを挟む今日は平日。
お姉ちゃんは高校へ、華は会社へ仕事に行っている。
俺と離れるのは嫌と、華が会社へ俺も連れていきたいと会社へ連れていこうとした時は苦労した。愛されているということが伝わってくるので嫌な訳じゃないが、流石に毎日のようにやられると疲れてしまう。
仕事場に行ってみたいという気持ちも多少はあるのだが、行ってみたとしてもすることがない。それに俺が男ということもあって、職場の人が仕事に集中出来なかったら申し訳無さすぎる。更に、一回許可してしまえば華のことだからその後も仕事場へ毎日のように行く事になるだろう。あの花恋さんのような人がいるかもしれないと思うと、どうしても足が遠ざかる。だから、俺はキスを何度もすることで華を仕事へ見送っている。
そんな平日だが、今日は家にかえでがいる。
平日のこの時間は家事をやっている筈だが、今日はかおりを膝に乗せてかえでと一緒にだらだらしている。
今日かおりが家に居るのは、学校の創立記念日ということで休みになっているからだ。最近は華が俺の膝を独占してるせいか、かおりは俺の膝の上を堪能するように背中に体重を掛けてきたり、左右に体を揺らしたりしている。
華ばかり構っていたから、かおりは少し寂しかったのだろうか。
心地良さそうに俺の膝の上で寛ぐかおりを見ながら、俺はかえでと向き合う時間を増やすことを考えていた。
「そういえばお兄ちゃん。お兄ちゃんの動画二千億再生回数達成してたよ?」
「え? 嘘だろ。」
かおりの口から出てきた問題発言にまさかと思いながら、かおりが見せてきたスマホの画面を見てみると、考えたくないが二千億をちょっと超えた二千二百億再生回数と書いてあった。
前世規模で見ても、流石に二千億を超えた動画なんて見たことがない。それに加えて、まさかと思いながらチャンネルの総再生回数を見てみると、たった一本の動画で俺が世界一位となっていた。
嘘だろと思っても、それは事実でしかない。
男が少ない結果、全世界の女性が男を求めた結果こういう出鱈目な数字が出たのだろうか。
コメントを見てみても、全体的に外国語が目立つ。
全て日本語で歌っていたというのに、思いの外日本人より外国人の方が多いのだ。
その英語で書かれているのは、『I'm falling love with you』や 、まだ出会ったこともないというのに『Will you marry me?』など。
アラブ語などでもそれと似たようなことが書かれていたが、この世界の女性は積極的なのだろうか。この世界は愛が軽い……いや、そんなことはないと華が証明をしている。それとも、男との出会いが極端に少ないこの世界では初対面で口説いてくるのが一般常識なのだろうか。
コメントとしようにもこのような膨大な数にコメントを返せる訳ないし、そもそも返すコメントが見つからない。ごめんなさいとコメントを返したって、気まず過ぎないかそれは。
どうすればいいのか分からず、俺は考えることを一度止めた。
「そういえばお兄ちゃん?」
「どうしたんだかえで?」
「このコメントに書いてあること真に受けたりしないよね?」
「え?」
「例えば、その英語でお兄ちゃんのことを口説きに来ている奴。お兄ちゃんはこんな女よりも私の方がいいよね?」
ん?
何か、話が変わってる気がする。
口説かれたところまでは分かるが、どうしてそこにかえでが?
少し言葉の選び方に違和感を感じたが、初対面の人よりもかおりの方が可愛いのは事実だった為首を縦に振った。
「えへへ。やっぱりお兄ちゃんは私の方がいいよね~」
「かえでは可愛いなぁ~」
かえでの機嫌が一瞬悪くなったと思ったが、この様子を見ると大丈夫らしい。 一瞬だが、何かかおりから冷たい物を感じたがそれは気のせいだったのだろうか。
俺は再び甘えて出してきたかえでの髪の毛を、猫の毛並みを整えるように優しく撫でた。
「ねぇお兄ちゃん。曲はもう出さないの?」
「曲か…… 作ろうと思ってる曲のイメージはついているんだけど、一曲目の再生回数がこれだから投稿するのに躊躇しちゃってさ。」
「大丈夫だよお兄ちゃん。お兄ちゃんの偉大さだったら、これくらいの再生回数は普通だから。……もしよかったら、私もお兄ちゃんの曲に出たいな。」
「かえでも出たいのか?」
「うん。」
かおりもやるんだったら、ラップ形式の奴はどうだろうか。
この世界男が少ないせいか、全くラップやバンドのような物が全く発展していない。前世からラップはやりたいと思っても、悲しいことに相手が居なかったので出来なかったジャンルだ。……ラップをこの世界でも聞いてみたいし、前世のラップを基にいっそのこと自分でラップを作ってみるか。
「一応聞くんだけど、かおりって早口言葉得意か?」
「早口言葉? んー 得意じゃないけど、人並みには出来ると思うよ。」
「苦手じゃないなら大丈夫だ。」
最悪加工で何とでもなると思った俺は、ラップを作ることを決意した。
……別に六十億人のチャンネル登録者の圧力を感じた訳じゃない。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
一狼の想像する早口言葉
「生麦」
「生米」
「生卵」
かりんの想像する早口言葉
「お兄ちゃん好き」
「お兄ちゃん好き」
「お兄ちゃん好き」
華が一狼のことを独占し過ぎた為、若干かおりはヤンデレになってます。
※治るかは不明。作者でも不明
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