25 / 28
試合の応援④
しおりを挟む「ねぇねぇ。私達約束したよね。男の子が居たら、二人で協力して虜にしようって?なのに、どうして嘘ついたの?ていうか、あんなイケメンが桜の弟だと思わなかったし。ずるい。ずるい。ずるい。」
「──まぁ、落ち着け落ち着け。そんなこと言っても、一狼は私の弟だからな。それに、一狼は男の子じゃなくて私にとっては未来の婿だから。男の子じゃない一狼を花恋に教える必要はない。」
「屁理屈と意味不明なこと交えて言ったって大罪じゃあぁぁぁ──」
花恋に競技場から離れた場所にある女子トイレに呼び出された桜。
鼻血を出しながら倒れた後、数分で立ち上がった花恋は桜を女子トイレに呼び出していた。
呼び出された桜の頬には大きな紅葉が何枚も咲いており、何度もビンタされたことが分かる。彼女は大きな紅葉が出来た場所を必死に抑えていて、今も痛みを耐えようと踏ん張っている。
「そんな怒るなって──」
「怒るに決まってるでしょ!!?何よあの物語とかでしか出てこないような男性は。優しくてイケメンで笑顔が可愛くて美しいって、もう完璧でしょ?そんな男性が弟に居ることを今まで隠してたんだから、これくらいは当然。」
「……一狼はこんな私を見たら、可哀想だと思って優しく抱き締めてくれると思うか?」
「もっとやって欲しいようだね。」
痛い痛いとヒリヒリする頬を触りながら嘆いていた桜だが、どうやらまだ余裕があるらしい。すかさずそんな親友を見て、花恋はもう一撃頬にビンタを加える。二人は幼稚園からの幼なじみで、中学校を除けば、幼稚園、小学校、高校が同じ二人だ。十年以上の長い付き合いである。そんな二人は、幼稚園の頃からサッカーをやる仲で、幼稚園の頃から仲が良かった。そんな二人は、小学校高学年になって異性という者を求めるようになった。……といっても、桜は愛しい一狼が居るので主に花恋だが。桜は花恋に頼まれ、男を見つけたら報告、連絡、相談をしようという協定を結んだ。これは今も続いている協定で、男を見つけたらすぐ報告を相手にするという物だった。……しかし、桜は一狼が居ることを隠していた。協定を結んでいるのに裏切られたとは、親友であれ半殺しにしなければいけないだろう。理由も小学生が言い訳に考えたような屁理屈まがいの物だ。容赦など無しだ。
「冗談だから。落ち着いて。ていうか、それ以上私の頬叩いたら一狼に言い付けるぞ?」
「ちょっ!?それは卑怯じゃ……もし、一狼様に嫌われたりでもしたら──」
「……言っとくけど、一狼は様付けとか嫌うからな。」
「えっ?そうなの?メモしなきゃ。メモメモ。」
ポッケからメモを取り出したと思ったら、桜の言ったことを重要そうにメモする花恋。遠くから見たら、トイレの中で必死にメモをしているので、何やってんだこいつと異端な物を見る目で見られるだろう。ちなみに、桜もその内の一人だ。実際に、メモを取り出した花恋から少し離れた場所からジト目で見ている。しかし、彼女はメモを取るのに必死なのか気付いていない。
「それで、他に何かある?一狼ちゃんが嫌いなことって?」
「今度はちゃん付けとか、もはや嫌われに行ってるのか?何が一狼ちゃんだ。一狼がもっと小さい時も言ってないぞそんなこと。一狼のプライドが傷つけられて余計嫌われるぞ。」
「えーっと……じゃあ、一狼君?」
「……そんなもんでいいんじゃないか?まぁ、私は一狼って呼んでるけどな。イケメンの弟が居るなんて、幸せだなぁ~」
「潰す潰す潰す潰す潰す───」
「お、おい、怒るなって。一狼が好きなことを教えてやるから。」
「是非お願いします。義お姉さま♪」
「勝手に義をつけるなあああああ──」
一狼を守るかのように、義をつけて自分のことを呼びやがった花恋に、桜はぷすっとした態度で、腕を組んで何一つ話すことのないように自身の口をチャックした。一狼の相手の結婚枠は最高であと二つ。いくら親友であれ、その枠の一つが奪われるような行為をしてはいけないと、義お姉さまと呼ばれた時瞬時に本能が反応した。一狼の好きなことや嫌いなこと。それを知っているのは、家族である私だけの特権だ。親友であろうと、愛しい一狼に好かれるような要素は与えない。敵に塩を与えるような真似は絶対にしないのだ。
トイレの中で桜の次の発言をピタリとも動かないで待つ花恋に、ぷすっとした態度で何も話そうとしない桜。トイレの中でこいつらは何しているんだという視線を向けて、トイレに来た女性達は過ぎ去っていく。しかも入り口付近でそんなことをしている為、トイレに入りずらい。迷惑な奴等である。そんな二人に、ある一人の女性が割り込んできた。
「ちょっと貴方達邪魔なんだけど?入り口付近で、意味不明なことしないで頂戴?」
「あ?こっちは今までの人生において一番大切なことを聞こうとしているんだけど?邪魔するなカス。入ってくるな。」
「ちょっ!!止めろって。」
「何!?悪いのは貴方達なんだから、さっさと退いてちょうだ……はい。分かりました。勝手に割り込んですみませんでした。」
「……次やったら◯す。」
「怖っ!!」
割り込んできて女性の首もとにシャーペンを向ける花恋。表情は軽く笑っているが、目が笑っていない。目に光りが無く、薄く濁っているようで何時殺られても無理無い。そんな花恋を見て怖じ気付いた女性は、花恋に謝るとトイレをしに来たはずだったのに、そのまま走って帰って行ってしまった。普段男性との接点が無い花恋において、一狼の好きなことと言うのは数十万払ってでも欲しい程の大切な情報である。気性が激しくなるのは当たり前だが、声を掛けた女性は貧乏くじを引かされたような物である。通り過ぎる女性の中で、二人に掛けようとしていた女性は複数居たのだがスルーをした。声を掛けてしまった女性が悪いとも言えるが、流石に可哀想だろう。……そんな花恋を見て、桜は少し恐怖から距離を開けている。
「なぁなぁ?一狼の好きなこと言わないって言ったら、どうする?」
「え?半殺しにする♪」
「えっ!?……はい。是非説明させて頂きます。えーっと、一狼の好きなことはですね………」
桜は自分の死を悟ったのか、半ば諦めた様子で少しずつ話しだした。親の華や妹のかおりからすれば半殺しにされてでも黙り続けろよと思うが、女性に対する花恋の様子を見て、桜は瞬時に花恋に従うことを決めた。桜が話し始めている間、またしても罠に掛かった一人の女性が二人に声を掛け……ご退場となった。押されたらそのまま押し切られてしまう自分が少し嫌に感じていた桜だが、その光景を見て自分の判断を内心物凄く褒めた。
41
お気に入りに追加
528
あなたにおすすめの小説
性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!
やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり
目覚めると20歳無職だった主人公。
転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。
”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。
これではまともな生活ができない。
――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう!
こうして彼の転生生活が幕を開けた。
男女比1:10。男子の立場が弱い学園で美少女たちをわからせるためにヒロインと手を組んで攻略を始めてみたんだけど…チョロいんなのはどうして?
悠
ファンタジー
貞操逆転世界に転生してきた日浦大晴(ひうらたいせい)の通う学園には"独特の校風"がある。
それは——男子は女子より立場が弱い
学園で一番立場が上なのは女子5人のメンバーからなる生徒会。
拾ってくれた九空鹿波(くそらかなみ)と手を組み、まずは生徒会を攻略しようとするが……。
「既に攻略済みの女の子をさらに落とすなんて……面白いじゃない」
協力者の鹿波だけは知っている。
大晴が既に女の子を"攻略済み"だと。
勝利200%ラブコメ!?
既に攻略済みの美少女を本気で''分からせ"たら……さて、どうなるんでしょうねぇ?
スマートシステムで異世界革命
小川悟
ファンタジー
/// 毎日19時に投稿する予定です。 ///
★☆★ システム開発の天才!異世界転移して魔法陣構築で生産チート! ★☆★
新道亘《シンドウアタル》は、自分でも気が付かないうちにボッチ人生を歩み始めていた。
それならボッチ卒業の為に、現実世界のしがらみを全て捨て、新たな人生を歩もうとしたら、異世界女神と事故で現実世界のすべてを捨て、やり直すことになってしまった。
異世界に行くために、新たなスキルを神々と作ったら、とんでもなく生産チートなスキルが出来上がる。
スマフォのような便利なスキルで異世界に生産革命を起こします!
序章(全5話)異世界転移までの神々とのお話しです
第1章(全12話+1話)転生した場所での検証と訓練
第2章(全13話+1話)滞在先の街と出会い
第3章(全44話+4話)遺産活用と結婚
第4章(全17話)ダンジョン探索
第5章(執筆中)公的ギルド?
※第3章以降は少し内容が過激になってきます。
上記はあくまで予定です。
カクヨムでも投稿しています。
悩んでいる娘を励ましたら、チアリーダーたちに愛されはじめた
上谷レイジ
恋愛
「他人は他人、自分は自分」を信条として生きている清水優汰は、幼なじみに振り回される日々を過ごしていた。
そんな時、クラスメートの頼みでチアリーディング部の高橋奈津美を励ましたことがきっかけとなり、優汰の毎日は今まで縁がなかったチアリーダーたちに愛される日々へと変わっていく。
※執筆協力、独自設定考案など:九戸政景様
高橋奈津美のキャラクターデザイン原案:アカツキ様(twitterID:aktk511)
※小説家になろう、ノベルアップ+、ハーメルン、カクヨムでも公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる