13 / 28
動画配信者⑤
しおりを挟む「やったぁ~やっと勝ったぞ。」
「お兄ちゃんに負けちゃった。(手加減して負けてあげたけど、はしゃいでいるお兄ちゃん可愛いなぁ。)」
妹と超乱闘を初めて数十分。
嫌らしいコマとビームが使えるロボロボに最初はボコボコにされていたが、それの出てくるタイミングを見切り下Bのリベ◯ジをし、溜めに溜まった状態で横Bを打ってラ◯アットを決めることで、何とか場外にロボロボを六試合目で吹き飛ばすことが出来た。
前世では勉強同様超乱闘も少しやるだけでいくつものキャラを極めていたつもりだが、かおりと六試合やって一試合しか勝てなかったということは、かおりが強過ぎるのか? それとも弱いのか?
とりあえず、後でお姉ちゃんとも超乱闘をやってみて俺の実力を試してみよう。それで勝てそうだったらここで負けた鬱憤をお姉ちゃんに……
まぁ、お姉ちゃんには襲われたしそれくらいのことをしたくらいで怒られることはないだろう。
「ねぇねぇお兄ちゃん。」
「ん?どうしたんのかおり?」
「さっき投稿したMV見てみようよ!!もしかしたら、もう一億再生回数超えてるかもよ?」
「そんな訳ないだろ~ったく、それじゃあ少し見てみるか。」
冗談半分で、一万再生くらいされてたらいいなと思いながらヨウヅベを開こうとするが、開かない。
可笑しいなと思いながらも、何度スマホをタップしてもヨウヅベを開くことが出来ないので、一度シャットダウンしてもう一回起動させて開こうとするが………開かない。
何でだろうと、膝の上で赤色の女の子らしいスマホを弄る妹を撫でながらスマホを放置することにすると、膝の上で妹が深刻そうな顔をした。
「うわぁ……これは、ちょっとヤバイかも。」
「ん?どうしたんだそんな深刻そうな顔をして?」
「この記事見てよお兄ちゃん!!」
突きつけられた赤いスマホの画面を見ると、そこに書かれているのは………えっ?
もう一度よく近付いてその記事の名前を見てみるが、何も変わらない。
スマホの画面に映っていた記事の名前は「ヨウヅベのサーバーダウンは一人の男性のMVが原因」となっていた。
あれ?
もしかしてだけど、俺の動画が原因じゃないよな?
嫌な未来を想像し冷や汗をかきながら記事を見ると、その男性のMVというのは……恐らく俺の事だった。
記事には、チャンネル登録者数が動画を投稿してから数十分で一億人を突破したことや、投稿されたから数分で視聴回数が十億再生回数を超えたこと、そのチャンネル名が「狼一」という、俺の名前を逆さにしただけの適当な名前も記事に乗っていた。
どういうことだ?
何で俺の投稿したMVがあのヨウヅベのサーバーをダウンさせた!?
そんなことがあるなんて今まで聞いたこともないし、あのヨウヅベのサーバーがダウンするなんてことがあるわけ………
しかし、俺の目の前にはそれについて書かれた記事が。
現実でないと思いたくても、現実だということを認識しなければいけなかった。
■■■■■■■■■■■■■
「お母さんごめんなさい。」
「お母さんあのMVが投稿されるなんて知らなかったなぁ~相談もされなかったし悲しいなぁ~」
「うっ」
「別にお兄ちゃんの動画を皆に広めるのは悪いことじゃなくない?よくよく考えれば男に飢えた女共の特定だってお母さんの権力でいけるし。」
「別にお母さんも一狼の動画が投稿されて、皆に一狼の凄さが伝わるのはいいの。でも、声を掛けるくらいのことはしてほしかったな。」
「ごめんなさい。」
正座のような姿勢をとって、俺はお母さんに頭を下げる。
かおりから権力という恐ろしい言葉が聞こえたが、保護者であるお母さんからしたら、子供が何も言わずに動画を投稿したら悲しくなるだろう。
前世では親が酷い親だった為、何も親に相談せず動画を投稿したり配信していたが、今の親であるお母さんは酷い親などでない。それなら、相談はしなくても声掛けくらいはした方が良かっただろう。
俺は自分のした行動に後悔を感じた。
「……デート。」
「え?」
「お母さんとデートしてくれたら許してあげようかな~」
「なっ!!この糞親めぇ!!本当はそれが狙いだ……」
「デート何かでいいの?」
「え?もしかして、本当にデートしてくれるの?」
「お兄ちゃんっ!!?」
「うん。お母さんの空いてる日って何曜日?」
もの凄い勢いでガッツポーズを取る母親。
そんな母親を血走った目で妬ましく見つめるかおり。
この世界で男性とデート出来るというのは、物語上での出来事。
女性に対して恐怖心を抱いている男や傲慢な男しか居ない世界で、女性とわざわざデートをしようなんて思考をする男性は居ない。
現に、母親の華でさえ、少しの期待はしていたがほぼ冗談だった。
しかし、息子である一狼にほぼ諦めていたデートの日程を迫られているのだ。
簡単に言えば、デートは目の前。
女性として一度は思った男性とのデート……そんな妄想止まりだったデートが男性と、しかもイケメンで体も太っておらず筋肉質な一狼と出来そうなのだ。
こうしてガッツポーズをするのは女性として正常な行動。
そして、血走った目でそれを見つめるかおりも女性として正常な行動と言えるのだ。
しかし、それを正常と思わない一狼は、そんな母親や妹のかおりを困惑した表情で見つめた。
「それで、何日にするのデート?」
「ええっとぉですねぇ……土曜日なんてどうでしょうか?」
「それじゃあ土曜日ね。約束だよ。」
「……嬉し過ぎて土曜日になる頃には死んでそう。」
緊張のあまり語尾が滅茶苦茶な中会話をする華。
ここで一狼とデートの日程を合わせられなければ、デートは中止。
目の前まできた全女性の夢の男性とのデートが消え去ってしまう。
そんな緊張の中、自分の全ての運を使ってもと土曜日を選択すると、見事その曜日にデートを約束することが出来た。
見事全女性の夢を叶えることが出来た嬉しさから、”嬉し過ぎて土曜日になる頃には死んでそう”という言葉が出るのは断じて普通だ。
外せ外せと願っていたかおりだが、見事デートの日程を合わせられその場に崩れる。
どうして自分では無いんだと頭を動かしても、現実は変わらない。
イケメンで優しさを何十倍にも増した兄とのデートを、自分の母親は出来るのだ。
妬ましい。実に妬ましい。
全世界の女性の嫉妬をこの手に────
半分本気で華の首に一直線に動いていった手は、一狼に容易く止められた。
────────────────────────────────
ちなみに、姉は幸せな夢を見てまだ寝てます。
50
お気に入りに追加
553
あなたにおすすめの小説

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜
水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。
その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。
危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。
彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。
初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。
そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。
警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。
これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。

男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にいますが会社員してます
neru
ファンタジー
30を過ぎた松田 茂人(まつだ しげひと )は男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にひょんなことから転移してしまう。
松本は新しい世界で会社員となり働くこととなる。
ちなみに、新しい世界の女性は全員高身長、美形だ。
PS.2月27日から4月まで投稿頻度が減ることを許して下さい。

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
転生したら男女逆転世界
美鈴
ファンタジー
階段から落ちたら見知らぬ場所にいた僕。名前は覚えてるけど名字は分からない。年齢は多分15歳だと思うけど…。えっ…男性警護官!?って、何?男性が少ないって!?男性が襲われる危険がある!?そんな事言われても…。えっ…君が助けてくれるの?じゃあお願いします!って感じで始まっていく物語…。
※カクヨム様にも掲載しております

シン・三毛猫現象 〜自然出産される男が3万人に1人の割合になった世界に帰還した僕はとんでもなくモテモテになったようです〜
ミコガミヒデカズ
ファンタジー
気軽に読めるあべこべ、男女比モノです。
以前、私がカクヨム様で書いていた小説をリメイクしたものです。
とあるきっかけで異世界エニックスウェアに転移した主人公、佐久間修。彼はもう一人の転移者と共に魔王との決戦に挑むが、
「儂の味方になれば世界の半分をやろう」
そんな魔王の提案に共に転移したもう一人の勇者が応じてしまう。そんな事はさせないと修は魔王を倒そうとするが、事もあろうに味方だったもう一人の勇者が魔王と手を組み攻撃してきた。
瞬間移動の術でなんとか難を逃れた修だったが、たどり着いたのは男のほとんどが姿を消した異世界転移15年後の地球だった…。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!
やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり
目覚めると20歳無職だった主人公。
転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。
”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。
これではまともな生活ができない。
――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう!
こうして彼の転生生活が幕を開けた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる