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動画配信者①
しおりを挟む「ねぇ。お母さん。買って欲しい物があるんだけど。」
「何々!? 一朗の欲しい物だったら、借金しても買ってあげるよ?」
「えーっと、そんな高額な物じゃなくてダンベルが欲しいんだよね。」
思った以上に食べれなかった朝食を終えたリビングで、俺はお母さんにお願いをすることにする。膝の上には妹が居て、直ぐ隣にはお姉ちゃんとお母さんが居る。美女に囲まれた俺は、前世から見れば大勢の男子諸君から恨まれそうな状況だが、この世界では一切問題わない。
「ダンベルくらいだったらお姉ちゃん買えるぞ。買うのは、一キログラムの奴でいいのか?」
「え?十キログラムの奴が二つ欲しかったんだけど、駄目かな?」
「そんなに重たいので筋肉を付けたら、体が壊れちゃうぞ?」
この世界の男は、甘やかされて育てられる為傲慢になり、自分を鍛えようとする者は居ない。数百年前は男女同じくらいの筋肉を付けていたが、甘やかされて自分を鍛えようとしない男の体は遺伝的にどんどん弱っていき、今では体質的に強固な筋肉が出来る男は存在しなくなった。
そんな男である一朗の「十キロのダンベルが欲しい」という発言にストップを掛けたのは、女なら当たり前の行動だ。普通の男なら十キロのダンベルを持ち上げることすら出来ないし、粗大ゴミになることを予想して買うことを中断したのだ。流石に可愛い弟の頼み事とはいえ、ゴミを増やすようなことはしない。
「大丈夫だよ。結構俺って体鍛えているつもりだし。ほら、触ってみる?」
俺はかおりを膝から退けてお母さんの膝に移し変えると、お姉ちゃんの手を俺の腹筋に付ける。俺の体を調べてみたが、前世の頃と変わらず身長と体重と筋肉量は同じだった。年も同じで、俺の体ごとこの世界に連れてこられたような感じだ。一応、前の名前を思い出すことは出来ないが、違う名前だった気がする。
「ほらほら、結構固いし割れてるでしょ?」
「ぶはぁ!!」
鼻血を出しながら座っていた体勢から、テーブル目掛けて頭から倒れる。
大きな音を出しながら倒れたお姉ちゃんを助けようと動こうとすると、隣に居るお母さんとかおりに腕を捕まれる。すると、二人とも嫌らしい顔をしながら俺の腹筋を触ってきた。
「「ぶはぁ!!」」
二人は幸せそうな顔で鼻血を出しながら、お姉ちゃんと同じようにテーブルに頭をぶつける。三人とも美女でとても可愛いが、鼻血を出した状態で倒れられると軽いホラーだ。俺の服にも飛び散った鼻血が付いていて、ここがゾンビのいる世界だと想像するとぶるっと体が震える。
俺はダンベルを得るのに、鼻血だらけの女性に囲まれるという恐怖を味わった。
■■■■■■
「う~ん。暇だなぁ~。結構時間あるし、動画とか投稿してみるのありかな?」
お母さん達が全員出掛けた部屋で、ヨウヅベに投稿された動画を見て呟く。
以前なら学校に登校している今の時間は、俺にとって暇な時間だ。
お母さんからは「外に出たら痴女に襲われる」と言われているし、外に出ることも出来ないのでこうやって動画を見て暇を潰しているが、動画は全て女性が撮った物で面白い物もあるがやはり男性の奴が見たい。
そんな俺は、いっそのこと動画を出してみればいいんじゃないかと思った。
男である俺が動画を出せば、男の出した動画ということで注目されるだろう。そうすれば、他の男達も俺を真似して動画を出し始めるかもしれない。それに、給付金が貰える為働く必要はないが、何もしないで生きるのは人として嫌なので、後々広告収入が見込めそうな動画投稿をするのは良いことだろう。それに、前世で動画投稿を少ししたことがあるので、編集の仕方などはもう理解している。
「それじゃあ、どういうジャンルの奴を投稿してみるか。う~ん。著作権がちょっと面倒臭そうだけど、まずは注目されなきゃいけないし歌ってみたとかやってみるか。」
「あー」と、一度発生練習をする。
俺は何でも出来る体質だったので、何回か練習すれば直ぐに歌を覚えて歌うことが出来る。それに、歌ってみたの動画を見て分かったがこの世界では男性が少ないからか、前世で男性が作った人気だった曲が無くなっている。
……歌ってみたじゃなくて、いっそのこと前世の曲をパクってMVでも作ってみるか。
この部屋に置いてあったパソコンを使って、俺はうろ覚えながらも軽く曲を作成することに決めた。
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