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「うわあ、すごいです! これが私の下女服! ありがとうございますレニさん!」
「とんでもございません、オレーリア様からの、指示で……」
「そうなんですね! オレーリア様にもよろしくお伝えください」

 こないだ体の寸法を測ってもらったんですが、このためだったみたいです。私は自分にぴったりのお仕着せでくるりと回りました。踊りたい気分です!
 今まで使わせてもらっていた下女服も良かったんですが、やっぱり借りてるものなので汚したくなくて、汚れてもいい布を縫い付けたらもっさりしちゃったんですよね。

 この国は少し暖かいので、このくらい薄いものだと助かります!
 それでいてしっかりした布地で、簡単に破れそうにありません。さすがは大国です。

 こんなものをくださるなんて、本当に、オレーリア様は素晴らしい方です。何かお返しできればいいんですけど。

「手触りもすっごくいいです。高級品みたい」
「そ、そんなことは、ないんですけど!」
「ふふっ、そうですよね! でもそのくらいすごいです。嬉しいです!」

 人質のために高級な布を使う人なんているはずはありません。
 それでも私が今まで持っていた中で、一番いい布に思えます。すでに最高に気に入っています。嬉しいです。

「これでまたバリバリ働きますね!」
 高級感は布だけで、デザインはしっかり働き者の服です。肘のところとか袖のところとか、汚れやすい、破れやすいところが頑丈に作られているのがわかります。
 これなら気にせず動けますし、長く使うことができるでしょう。

 薄いのに機能性もあるって、神では!?

「い、いえ、リアンナ様は働くようなお立場では……いえ、ええっと……」

 レニさんはなぜかとても困ったような顔をしています。そういえばレニさんは上司オレーリア様に振り回されてるお立場でした。この服のことも迷惑をかけたのかも。
 でも私が謝るのも変だし、もう一度、丁寧にお礼を言っておきました。

「とんでもないです。……お気に召されたようで、よかったです……」
 疲れた中にも安堵の表情を見せてくれました。よかった。無茶振りが終わって少し休めるといいですね。
 レニさん、いつも疲れた顔してますから。





「あ、ルーさん、こんにちは!」
「今日も熱心だな、リア」
「ふふっ、熱心にもなりますよ、ほらこれ見てください新しいお仕着せです!」

 私はご機嫌でぐるぐると回ってみせました。
 ルーさんと話すのはもう何度目かで、すっかり慣れてしまいました。未だに他の下女さんとはあまり会話が成立しないので、お話できて嬉しいです。

「今日は商人さんなんですね」
「ああ、別人みたいに見えるだろう?」
「えー、それはないですよ。ルーさん、何着ててもなんか目立ちますもん」

 どんな格好をしていても、何か妙に迫力があるというか。主人がいるとか言ってましたけど、ルーさん自身も貴族なのかも?
 レニさんも男爵令嬢らしいんですけど、下女さん達と働いてますしね。

「そうか、わかるか……うーん……」
「わかっちゃ駄目でしたか?」
「いや、よく言ってくれた。これならわからないと思っていたが、意味はなかったようだ」

 どうやら変装したかったみたいです。
 私はぴんときました。
 貴族さんが変装する=このあたりで女性と密会するってことですね!?

 わあああ、一気にテンションがあがりました。どこでしょう?
 どこから女性がやってくるんでしょう!
 ルーさんは立派な人なのできっと女性もきれいな人なんでしょう。ああ、隅に置けません!

「……どうした?」
 きょろきょろしているとルーさんが不審そうに見てきました。いけない、いけない。
 人の秘密を暴こうなんて。

「いえいえ。じゃ、私は仕事に戻ります」
「あ、待て、そんなに忙しいのか?」

 あれ、引き止められてしまいました。
 まだ彼女さんは来ないってことでしょうか?

「そんなことはないですよ。自由すぎるくらい自由にさせてもらっていますから、仕事は自分で探してる感じです。でも、私とここにいて大丈夫なんですか?」

 女性が来るんでしょう? そうなんでしょう?
 わくわくとしながら聞くと、ルーさんは困ったような顔で言いました。

「俺も暇……なわけではないんだが、忙しいときほどなぜか君と話したくなるんだ」
「あー、こっそり息抜きってことですね。なんだ、逢引しにきたのかと思っちゃいました」
「あっ! 逢引……ではない! そういうのではない!」
「ふふっ、大丈夫ですよ。ちょっとどきどきしちゃいましたけど!」

 変装したのは逢引のためじゃなくて、仕事をサボるためですね。
 真面目そうに見えていましたが、ルーさん、なかなかのワルです。

「そ……そうか、あー、服といえば、リアンナ姫の衣装は増えたのか?」
「あっ、そう、そうなんですよ! オレーリア様最高、オレーリア様天使! と言っておられました!」

 オレーリア様はなかなかお会いすることさえ難しいお方です。せめてこうして宣伝して、オレーリア様の素晴らしさを広めましょう。
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