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「お待たせしてすみません」
「いや、その、大丈夫だろうか。すまないあんな……場所で」
「いえ……」

 旦那様が恥ずかしげに声を低めるので、私も恥ずかしくなります。でも喜ぶべきなのでしょう。そう、新婚夫婦なのですから。
 でも旦那様のそういう、大変に絶倫なところが、以前の奥様にとっては問題だったのでしょうか?

 拒否すると機嫌を悪くするというような……今まで一度も嫌ではなかったので、わかりません。
 ただ旦那様はいつも私を丁寧に愛してくれるので、そういうことはないのではないか、と思うのです。……一度拒否してみるべきでしょうか。

「次からはもう少し……冷静になろうと思う」
「いえ、ほんとうに、お気になさらず……」

 旦那様がうつむいて反省していらっしゃいます。私はうずうずと、その頭を撫でてあげたくなりました。少し調子に乗っているのかもしれません。
 でも、旦那様があまりに可愛らしいせいです。
 ……とても拒絶などできそうにありません。

「……うん、とりあえず、食事にしよう。すまない、少しくらい夜会で食べられると思ったんだが」
「美味しそうです」
「そうか。ならよかった。嫌いなものがあったら教えてほしい」
「はい」

 これは毎回、食事のたびに聞かれている気がします。旦那様の優しさにくすぐったい気分になりながら、私はナイフとフォークを持ちました。
 一口食べると空腹を意識します。
 食べないままでは眠れなかったかもしれません。こんな時間まで食事を用意してくださった料理長に感謝します。

 子爵邸にはメイドの数が少ないのですが、料理人や執事、庭師まで、男性の使用人はきちんと揃っています。女主人がいなかったので、メイドが居着かなかったのでしょうか。
 ユンナが大変な様子ですから、落ち着いたら何人か募集したいところです。屋敷の管理は夫人、つまり私の仕事です。

「……今夜も、君を訪ってよいだろうか?」
「……っ」

 旦那様の言葉に少し驚いて、顔を上げました。

「もっときちんと、奥まで君に触れたい」
「は……はい……」

 馬車での交わりでは足りなかった、ということです。きっと断っても良いのでしょう。子作りのためと考えるなら、今日はもう種を頂いているのですから。
 でも、やっぱり断れませんでした。
 求めてくる旦那様が可愛くて、そして、求められて嬉しいのです。
 それから……あれより奥ってどこでしょう?
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