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「旦那様? 到着しましたよ!」
「……ああ」
御者の声に旦那様は、とても気怠そうに応えました。それもそうでしょう。手早く行われ、手早く終えられた交合でしたが、放出のあとの旦那様はすぐに動きたくない様子でした。
「すみません、お化粧が乱れてしまって。少しだけ待ってください」
「はっ、わかりました、奥様」
私の言葉を聞いてくれるか心配でしたが、御者はあっさり返事をよこして、それから静かになりました。
「ありがとう」
旦那様がそう言って、私の崩れた姿勢を立て直してくれました。
私は、そこまで疲れているわけではありませんでしたが、お腹の中がまだ熱くて、そして準備ができなかったせいか、すこし引っかかる感じがあります。
がたん、がたん、とお腹の奥で感じた響きもまだ残っている気がします。
「……大丈夫です」
「うん。だったらいいけど」
私は開きがちな足をなんとか閉じて、それからドレスの乱れを直しました。
旦那様の手が、あちこちのシワを伸ばそうとしてくれています。私は微笑みました。
「ありがとうございます」
「ひどい馬車だったと思われそうだ」
「そうですね」
ひそやかに笑い合いながら、旦那様の衣装も整えました。
どうしても消えないシワがあるので、もしかしたら気づかれてしまうかもしれません。
「ミラレッタ、こちら側にいてくれ」
「はい」
旦那様は私をシワのある方へ引き寄せました。私はできるだけくっついて、そこが見えないようにします。
そうしてようやく、私達は馬車から降りました。
御者がそしらぬ顔をしているのが、どうも気づかれているように思えてなりません。考えすぎかもしれません。
「……ああ」
御者の声に旦那様は、とても気怠そうに応えました。それもそうでしょう。手早く行われ、手早く終えられた交合でしたが、放出のあとの旦那様はすぐに動きたくない様子でした。
「すみません、お化粧が乱れてしまって。少しだけ待ってください」
「はっ、わかりました、奥様」
私の言葉を聞いてくれるか心配でしたが、御者はあっさり返事をよこして、それから静かになりました。
「ありがとう」
旦那様がそう言って、私の崩れた姿勢を立て直してくれました。
私は、そこまで疲れているわけではありませんでしたが、お腹の中がまだ熱くて、そして準備ができなかったせいか、すこし引っかかる感じがあります。
がたん、がたん、とお腹の奥で感じた響きもまだ残っている気がします。
「……大丈夫です」
「うん。だったらいいけど」
私は開きがちな足をなんとか閉じて、それからドレスの乱れを直しました。
旦那様の手が、あちこちのシワを伸ばそうとしてくれています。私は微笑みました。
「ありがとうございます」
「ひどい馬車だったと思われそうだ」
「そうですね」
ひそやかに笑い合いながら、旦那様の衣装も整えました。
どうしても消えないシワがあるので、もしかしたら気づかれてしまうかもしれません。
「ミラレッタ、こちら側にいてくれ」
「はい」
旦那様は私をシワのある方へ引き寄せました。私はできるだけくっついて、そこが見えないようにします。
そうしてようやく、私達は馬車から降りました。
御者がそしらぬ顔をしているのが、どうも気づかれているように思えてなりません。考えすぎかもしれません。
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