バツ2旦那様が離婚された理由は「絶倫だから」だそうです。なお、私は「不感症だから」です。

七辻ゆゆ

文字の大きさ
上 下
14 / 36

14

しおりを挟む
「旦那様? 到着しましたよ!」
「……ああ」

 御者の声に旦那様は、とても気怠そうに応えました。それもそうでしょう。手早く行われ、手早く終えられた交合でしたが、放出のあとの旦那様はすぐに動きたくない様子でした。

「すみません、お化粧が乱れてしまって。少しだけ待ってください」
「はっ、わかりました、奥様」

 私の言葉を聞いてくれるか心配でしたが、御者はあっさり返事をよこして、それから静かになりました。

「ありがとう」

 旦那様がそう言って、私の崩れた姿勢を立て直してくれました。
 私は、そこまで疲れているわけではありませんでしたが、お腹の中がまだ熱くて、そして準備ができなかったせいか、すこし引っかかる感じがあります。
 がたん、がたん、とお腹の奥で感じた響きもまだ残っている気がします。

「……大丈夫です」
「うん。だったらいいけど」

 私は開きがちな足をなんとか閉じて、それからドレスの乱れを直しました。
 旦那様の手が、あちこちのシワを伸ばそうとしてくれています。私は微笑みました。

「ありがとうございます」
「ひどい馬車だったと思われそうだ」
「そうですね」

 ひそやかに笑い合いながら、旦那様の衣装も整えました。
 どうしても消えないシワがあるので、もしかしたら気づかれてしまうかもしれません。

「ミラレッタ、こちら側にいてくれ」
「はい」

 旦那様は私をシワのある方へ引き寄せました。私はできるだけくっついて、そこが見えないようにします。
 そうしてようやく、私達は馬車から降りました。
 御者がそしらぬ顔をしているのが、どうも気づかれているように思えてなりません。考えすぎかもしれません。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】愛する夫の務めとは

Ringo
恋愛
アンダーソン侯爵家のひとり娘レイチェルと結婚し婿入りした第二王子セドリック。 政略結婚ながら確かな愛情を育んだふたりは仲睦まじく過ごし、跡継ぎも生まれて順風満帆。 しかし突然王家から呼び出しを受けたセドリックは“伝統”の遂行を命じられ、断れば妻子の命はないと脅され受け入れることに。 その後…… 城に滞在するセドリックは妻ではない女性を何度も抱いて子種を注いでいた。 ※完結予約済み ※全6話+おまけ2話 ※ご都合主義の創作ファンタジー ※ヒーローがヒロイン以外と致す描写がございます ※ヒーローは変態です ※セカンドヒーロー、途中まで空気です

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

どうやら貴方の隣は私の場所でなくなってしまったようなので、夜逃げします

皇 翼
恋愛
侯爵令嬢という何でも買ってもらえてどんな教育でも施してもらえる恵まれた立場、王太子という立場に恥じない、童話の王子様のように顔の整った婚約者。そして自分自身は最高の教育を施され、侯爵令嬢としてどこに出されても恥ずかしくない教養を身につけていて、顔が綺麗な両親に似たのだろう容姿は綺麗な方だと思う。 完璧……そう、完璧だと思っていた。自身の婚約者が、中庭で公爵令嬢とキスをしているのを見てしまうまでは――。

朝起きたら同じ部屋にいた婚約者が見知らぬ女と抱き合いながら寝ていました。……これは一体どういうことですか!?

四季
恋愛
朝起きたら同じ部屋にいた婚約者が見知らぬ女と抱き合いながら寝ていました。

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

さよなら、英雄になった旦那様~ただ祈るだけの役立たずの妻のはずでしたが…~

遠雷
恋愛
【本編完結】戦地から戻り、聖剣を得て聖騎士として英雄になった夫エリオットから、帰還早々に妻であるフローラに突き付けられた離縁状。 戦場で傍に寄り添い、その活躍により周囲から聖女と呼ばれるようになった女性エミリーを、彼は愛してしまったのだと告げる。安全な王都に暮らし日々祈るばかりだったフローラは、居場所を失くしてしまった。 反論も無く粛々と離縁を受け入れ、フローラは王都から姿を消した。 その日を境に、エリオットの周囲では異変が起こり始める。 一方でフローラは旅路で一風変わった人々と出会い、祝福を知る。 ―――――――――――――――――――― ※2025.1.5追記 11月に本編完結した際に、完結の設定をし忘れておりまして、 今ごろなのですが完結に変更しました。すみません…! 近々後日談の更新を開始予定なので、その際にはまた解除となりますが、 本日付けで一端完結で登録させていただいております ※ファンタジー要素強め、やや群像劇寄り たくさんの感想をありがとうございます。全てに返信は出来ておりませんが、大切に読ませていただいております!

お兄様の指輪が壊れたら、溺愛が始まりまして

みこと。
恋愛
お兄様は女王陛下からいただいた指輪を、ずっと大切にしている。 きっと苦しい片恋をなさっているお兄様。 私はただ、お兄様の家に引き取られただけの存在。血の繋がってない妹。 だから、早々に屋敷を出なくては。私がお兄様の恋路を邪魔するわけにはいかないの。私の想いは、ずっと秘めて生きていく──。 なのに、ある日、お兄様の指輪が壊れて? 全7話、ご都合主義のハピエンです! 楽しんでいただけると嬉しいです! ※「小説家になろう」様にも掲載しています。

処理中です...