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「おはよう、ミラレッタ。昨夜は素敵だった」
「……だんなさま」
「体は大丈夫だろうか?」
「はい。その……問題ありません」
子爵はにこりと笑います。爽やかな朝日のせいもあってか、初対面での堂々とした印象が、一気に幼いものになりました。
眩しくてついつい、私は目を細めてしまいます。
「では湯浴みの準備をさせておく。それと朝食を持ってくるから、ここで一緒に食べよう」
「……はい」
なんということでしょうか、私はぼうっとしていて、挨拶さえお返しできませんでした。
けれど旦那様は嬉しそうに私の頭を撫でて、急いで部屋を出ていったのです。
私はようやく起き上がり、昨夜を思い返しました。
びっくりするくらい良いことばかりの記憶でした。前夫との間にあった義務感がなくても、少しも問題がなかったのです。体はどこも傷まないし、疲労は心地よいものでした。愛している、愛しているという言葉が、今も体に熱を生みます。
「どうして……」
私は思わずにいられませんでした。
「二度も、離婚を……?」
離婚理由はどちらも絶倫ですから、二人の女性は同じようなことを問題にしたのでしょう。こうして旦那様と朝を迎えるまでは、きっと夜の営みが何かひどいものなのだろうと思ったのです。
なのに、私には全くわかりませんでした。
理由は他にあるのでしょうか?
あんな、あんな……いえ、私はさほど夜のことに詳しくはありません。でも、前夫との営みとは比べ物にならないほどの……。
愛を囁かれて、丁寧に触れられて、どのような女性があれに不満を持つというのでしょうか。
それを加味しても離婚したいほどの、まだ見えていない酷いことが、あるのでしょうか?
「……だんなさま」
「体は大丈夫だろうか?」
「はい。その……問題ありません」
子爵はにこりと笑います。爽やかな朝日のせいもあってか、初対面での堂々とした印象が、一気に幼いものになりました。
眩しくてついつい、私は目を細めてしまいます。
「では湯浴みの準備をさせておく。それと朝食を持ってくるから、ここで一緒に食べよう」
「……はい」
なんということでしょうか、私はぼうっとしていて、挨拶さえお返しできませんでした。
けれど旦那様は嬉しそうに私の頭を撫でて、急いで部屋を出ていったのです。
私はようやく起き上がり、昨夜を思い返しました。
びっくりするくらい良いことばかりの記憶でした。前夫との間にあった義務感がなくても、少しも問題がなかったのです。体はどこも傷まないし、疲労は心地よいものでした。愛している、愛しているという言葉が、今も体に熱を生みます。
「どうして……」
私は思わずにいられませんでした。
「二度も、離婚を……?」
離婚理由はどちらも絶倫ですから、二人の女性は同じようなことを問題にしたのでしょう。こうして旦那様と朝を迎えるまでは、きっと夜の営みが何かひどいものなのだろうと思ったのです。
なのに、私には全くわかりませんでした。
理由は他にあるのでしょうか?
あんな、あんな……いえ、私はさほど夜のことに詳しくはありません。でも、前夫との営みとは比べ物にならないほどの……。
愛を囁かれて、丁寧に触れられて、どのような女性があれに不満を持つというのでしょうか。
それを加味しても離婚したいほどの、まだ見えていない酷いことが、あるのでしょうか?
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