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あれから数日が経った今、俺はノイラート侯爵家に訪れていた。

例の婚約に関しての話を提示したのにも関わらず、もの凄く歓迎されているように思える。

「貴方がいつもティアに手紙を送ってくれていたニコラウス様なのね~!!」

「そ、そうですが……?」

「もう最近のティアったらずーっと暗い顔しててね、最近またルークと懇意にしている様だったし、彼ならと思っていたんだけど違ったみたいね。」

するとノイラート婦人は、ニコラウスの手を取り、上下に思い切りブンブンと振った。

「本当にいい男を捕まえたわね!私嬉しいわ!!」

「あ、ありがとうございます。」

流石レティシアの母だと言ったところだろうか。完全に彼女の血を受け継いでいることを、ひしひしと感じさせられる。

と言うかまさかこんなに簡単に話が進むとは思ってもみなかったので、正直呆気にとられている。

「ノイラート婦人、すみませんが侯爵は居られますか?侯爵の方にも挨拶をと思っているのですが…」

「あぁ、良いのよ。どうせあの人と話すと長くなるし。それより、ティアを迎えに行ってあげたら?」

ノイラート婦人は、何か横目にニヤニヤもこちらを伺っている。

ノイラート婦人が言うには、「薬草を摘みに行ってるわ。」との事なので、きっと例の森だろう。

あそこに行くのも、一体どのくらいぶりだろうか。


ニコラウスは「ありがとうございます。」と、一言言うとソファーから腰を浮かせ、部屋を後にした。



今からレティシアに会えると、そう思うだけで心が踊る。こんな感覚に陥るのは初めてで、何ともむず痒い。

ニコラウスは、そんな事を考えながら廊下を歩いていると、声をかけられた。
 

「ニコラウス様、この度はお嬢様をありがとうございました。」

「貴方は………?」

「レティシアお嬢様付きの侍女でございます。」

「あぁ、そうか。貴方が、」

そんな彼女にニコラウスは「ありがとう。」と、頭を下げると、その侍女も理解したように深々と礼を返した。


(なんとか繋げて自分。)


♢♢♢



本当にここに来るのもいつぶりだろう。

倒れた俺を介抱してくれたあの日から、俺達の物語は始まった。

本当に鈍臭くて、でも何事にも一生懸命。凄く明るくて、褒めるとすぐ照れる。

そして、本当に鈍臭い。


彼女の元へ向かう道中、何度も何度も彼女との会話や彼女の仕草を思い出しては、その愛しさを幾重にも思い知る。



そんな中で、彼女の背を見つけた。


初めにこの場所出会った時と変わらない彼女を。


しばらくその背を彼女の後ろから眺めていると、鼻歌を歌い、スキップをしていたレティシアは、何故かスキップのリズムを崩したようで、自らの足に躓きその体を傾けようとしていた。

「本当にどうしようもないな。」


そう言ってニコラウスはレティシアの元へ駆け寄り、その体を抱きとめた。


絶対にもう、離したりしない。誰にも渡さない。


そう心の中で決心し、ニコラウスは口元を綻ばせた。






「迎えに来たよ、レティシア_______。」
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