32 / 39
23.
しおりを挟む
「振りが遅い、次。」
カンッ___。
「そんなんで俺当たると思っているのか、次だ。」
ニコラウスは最近自分の団に入団して来た訓練生との手合わせに勤しんでいた。
その手合わせも、はや数時間、既に太陽は頂点へと達していた。
「今から休憩に入る。午後からは基礎体力の強化だ。時間通りに集まるように。」
「「「了解しました!」」」
活気のある声に続き、訓練生達は颯爽と食堂へと駆けて行った。
「うっわぁ~、鬼教官だ。」
「何だよレオン、執務は終わったのか?」
「いやーーー、ね?」
こんなのの面倒を見るカインツはつくづく大変そうだなと改めて思う。
「そんなことよりコレ、一緒にどうだ?」
そう言ってレオンハルトは、何処かから奪ってきたであろうサンドイッチが詰まったバスケットを突き出してきた。
「俺は一切責任なんて負わないからな。」
「分かってるって、いつもの場所でいいだろ?」
「俺いつも言ってるけど、普通にベンチじゃダメなんですかね。」
いつもの場所と言うのは庭に生えている木の上である。俺はいつも木の上はごめんだ、と下のベンチでレオンの執務からの脱走に付き合っている。
きっとカインツは俺と居る事を知っているから敢えて追ってこないのであろう。だが、定刻になると決まってレオンを回収しに来る所は、やはり抜かりがない。
数時間ぶっ続けで剣の相手をしていた為、いいかげんお腹も空いているので、サンドイッチを1つ手に取ると、ニコラウスは勢いよくかぶりついた。
「なぁニコラウスー、ティアちゃんとはどうなのよー!」
レオンハルトは木の上からするすると降りて、こちらに顔を覗かせると、ニコラウスに問いかけた。
「だからティアって呼ぶな。別に数日前に例のラベンダー畑に行ってきた。」
「あぁ、カインツが言ってたオススメの場所って奴か。いいねぇ、初々しいねぇニコラウスくんよ!」
そう言ってレオンハルトはニコラウスの肩をガっと掴むと、ニカッと笑った。
「レオンもそろそろ決めなきゃなんでしょ?そっちこそどうなんだよ。」
「い、いやー、俺はまだ早いかなーって……」
「もう19だろ、むしろ遅いわ。」
痛いところを突かれたと言わんばかりに、レオンハルトは頭を搔いている。
そんなくだらない会話に、お互い声を上げて笑った
手に持っていたサンドイッチを食べ切り、次に移ろうとした時、レオンハルトが零した。
「うっわ、もう見つかった。」
「あぁ……面倒臭い。」
2人の目線の先にはきゃあきゃあと騒ぐご令嬢の姿があった。
「なんか最近カインツより見つけるの早くないか?彼女らの観察眼やばくない?」
「この場所もそろそろ変えべきなんだろ。次からは違うところで頼んだ。」
「えー、俺ここ気に入ってたんだけどな。」
俺もその意見には賛成する。基本的にこの場所は人通りが少なくて静かだ。耳を澄ませば城外の川の音すら聞こえてくる程に。
少しばかり残念だと思いつつも、彼女らに絡まれる手間を考え、2人はバスケットを畳み、その場を去った。
ニコラウスはポケットから取り出した懐中時計を見た。
「俺そろそろ訓練に戻る時間なんだけど、」
「団長様も大変そうだなぁ。……じゃあ俺も付いてくよっ!」
「はぁ……、カインツに怒られても俺は責任取らないからな。」
♢♢♢
で、現在何故か訓練生はレオンハルトと木刀で打ち合っている。
「俺絶対一国の皇子と手合わせしたくない………」
ニコラウスの呟きは、剣のぶつかる音に掻き消された。
「団長!!!もう!無理!です!!!!」
先程から一切休憩をさせて貰えず、訓練生達はひぃひぃと情けのない声をあげている。
「レオン……、レオンハルト様その辺にしといてやってください。」
「じゃあニコラウス俺と1本どうだ?」
「確かに久方ぶりですね。喜んで。」
ニコラウスがそう返答すると、周りからは野太い歓声が上がった。
「今のうちに休憩を取るように。どちらかが1本取ったら休憩は終わりだ。」
「「「了解しました!!!」」」
「では、レオンハルト様からどうぞ。」
ニコラウスは挑発的な目でレオンハルトに微笑みかけている。
「うっわ、団長こっわ………」
「俺あの目だけで負けるわ。」
あちらこちらから、悲鳴か歓声か分からないような声が次々に上がる。
「じゃあ行くぞニコラウス_______。」
結果は引き分け。
レオンハルトはニコラウスに打ち込み続けるも、全てを剣で流されてしまい、ニコラウスに当てることは出来なかった。
途中でカインツがレオンハルトを無理矢理連行して、勝負は終了。
レオンハルトは去り際に、「覚えてろよーー!」と言い残し、ずるずるとカインツに引っ張られて行った。
どこの悪役だよと、ニコラウスは笑みをこぼすのであった。
カンッ___。
「そんなんで俺当たると思っているのか、次だ。」
ニコラウスは最近自分の団に入団して来た訓練生との手合わせに勤しんでいた。
その手合わせも、はや数時間、既に太陽は頂点へと達していた。
「今から休憩に入る。午後からは基礎体力の強化だ。時間通りに集まるように。」
「「「了解しました!」」」
活気のある声に続き、訓練生達は颯爽と食堂へと駆けて行った。
「うっわぁ~、鬼教官だ。」
「何だよレオン、執務は終わったのか?」
「いやーーー、ね?」
こんなのの面倒を見るカインツはつくづく大変そうだなと改めて思う。
「そんなことよりコレ、一緒にどうだ?」
そう言ってレオンハルトは、何処かから奪ってきたであろうサンドイッチが詰まったバスケットを突き出してきた。
「俺は一切責任なんて負わないからな。」
「分かってるって、いつもの場所でいいだろ?」
「俺いつも言ってるけど、普通にベンチじゃダメなんですかね。」
いつもの場所と言うのは庭に生えている木の上である。俺はいつも木の上はごめんだ、と下のベンチでレオンの執務からの脱走に付き合っている。
きっとカインツは俺と居る事を知っているから敢えて追ってこないのであろう。だが、定刻になると決まってレオンを回収しに来る所は、やはり抜かりがない。
数時間ぶっ続けで剣の相手をしていた為、いいかげんお腹も空いているので、サンドイッチを1つ手に取ると、ニコラウスは勢いよくかぶりついた。
「なぁニコラウスー、ティアちゃんとはどうなのよー!」
レオンハルトは木の上からするすると降りて、こちらに顔を覗かせると、ニコラウスに問いかけた。
「だからティアって呼ぶな。別に数日前に例のラベンダー畑に行ってきた。」
「あぁ、カインツが言ってたオススメの場所って奴か。いいねぇ、初々しいねぇニコラウスくんよ!」
そう言ってレオンハルトはニコラウスの肩をガっと掴むと、ニカッと笑った。
「レオンもそろそろ決めなきゃなんでしょ?そっちこそどうなんだよ。」
「い、いやー、俺はまだ早いかなーって……」
「もう19だろ、むしろ遅いわ。」
痛いところを突かれたと言わんばかりに、レオンハルトは頭を搔いている。
そんなくだらない会話に、お互い声を上げて笑った
手に持っていたサンドイッチを食べ切り、次に移ろうとした時、レオンハルトが零した。
「うっわ、もう見つかった。」
「あぁ……面倒臭い。」
2人の目線の先にはきゃあきゃあと騒ぐご令嬢の姿があった。
「なんか最近カインツより見つけるの早くないか?彼女らの観察眼やばくない?」
「この場所もそろそろ変えべきなんだろ。次からは違うところで頼んだ。」
「えー、俺ここ気に入ってたんだけどな。」
俺もその意見には賛成する。基本的にこの場所は人通りが少なくて静かだ。耳を澄ませば城外の川の音すら聞こえてくる程に。
少しばかり残念だと思いつつも、彼女らに絡まれる手間を考え、2人はバスケットを畳み、その場を去った。
ニコラウスはポケットから取り出した懐中時計を見た。
「俺そろそろ訓練に戻る時間なんだけど、」
「団長様も大変そうだなぁ。……じゃあ俺も付いてくよっ!」
「はぁ……、カインツに怒られても俺は責任取らないからな。」
♢♢♢
で、現在何故か訓練生はレオンハルトと木刀で打ち合っている。
「俺絶対一国の皇子と手合わせしたくない………」
ニコラウスの呟きは、剣のぶつかる音に掻き消された。
「団長!!!もう!無理!です!!!!」
先程から一切休憩をさせて貰えず、訓練生達はひぃひぃと情けのない声をあげている。
「レオン……、レオンハルト様その辺にしといてやってください。」
「じゃあニコラウス俺と1本どうだ?」
「確かに久方ぶりですね。喜んで。」
ニコラウスがそう返答すると、周りからは野太い歓声が上がった。
「今のうちに休憩を取るように。どちらかが1本取ったら休憩は終わりだ。」
「「「了解しました!!!」」」
「では、レオンハルト様からどうぞ。」
ニコラウスは挑発的な目でレオンハルトに微笑みかけている。
「うっわ、団長こっわ………」
「俺あの目だけで負けるわ。」
あちらこちらから、悲鳴か歓声か分からないような声が次々に上がる。
「じゃあ行くぞニコラウス_______。」
結果は引き分け。
レオンハルトはニコラウスに打ち込み続けるも、全てを剣で流されてしまい、ニコラウスに当てることは出来なかった。
途中でカインツがレオンハルトを無理矢理連行して、勝負は終了。
レオンハルトは去り際に、「覚えてろよーー!」と言い残し、ずるずるとカインツに引っ張られて行った。
どこの悪役だよと、ニコラウスは笑みをこぼすのであった。
0
お気に入りに追加
84
あなたにおすすめの小説

蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。


親切なミザリー
みるみる
恋愛
第一王子アポロの婚約者ミザリーは、「親切なミザリー」としてまわりから慕われていました。
ところが、子爵家令嬢のアリスと偶然出会ってしまったアポロはアリスを好きになってしまい、ミザリーを蔑ろにするようになりました。アポロだけでなく、アポロのまわりの友人達もアリスを慕うようになりました。
ミザリーはアリスに嫉妬し、様々な嫌がらせをアリスにする様になりました。
こうしてミザリーは、いつしか親切なミザリーから悪女ミザリーへと変貌したのでした。
‥ですが、ミザリーの突然の死後、何故か再びミザリーの評価は上がり、「親切なミザリー」として人々に慕われるようになり、ミザリーが死後海に投げ落とされたという崖の上には沢山の花が、毎日絶やされる事なく人々により捧げられ続けるのでした。
※不定期更新です。

王弟殿下の番様は溺れるほどの愛をそそがれ幸せに…
ましろ
恋愛
見つけた!愛しい私の番。ようやく手に入れることができた私の宝玉。これからは私のすべてで愛し、護り、共に生きよう。
王弟であるコンラート公爵が番を見つけた。
それは片田舎の貴族とは名ばかりの貧乏男爵の娘だった。物語のような幸運を得た少女に人々は賞賛に沸き立っていた。
貧しかった少女は番に愛されそして……え?

麗しのラシェール
真弓りの
恋愛
「僕の麗しのラシェール、君は今日も綺麗だ」
わたくしの旦那様は今日も愛の言葉を投げかける。でも、その言葉は美しい姉に捧げられるものだと知っているの。
ねえ、わたくし、貴方の子供を授かったの。……喜んで、くれる?
これは、誤解が元ですれ違った夫婦のお話です。
…………………………………………………………………………………………
短いお話ですが、珍しく冒頭鬱展開ですので、読む方はお気をつけて。
僕は君を思うと吐き気がする
月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる