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23.

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「振りが遅い、次。」


カンッ___。


「そんなんで俺当たると思っているのか、次だ。」

ニコラウスは最近自分の団に入団して来た訓練生との手合わせに勤しんでいた。

その手合わせも、はや数時間、既に太陽は頂点へと達していた。


「今から休憩に入る。午後からは基礎体力の強化だ。時間通りに集まるように。」
 

「「「了解しました!」」」

活気のある声に続き、訓練生達は颯爽と食堂へと駆けて行った。


「うっわぁ~、鬼教官だ。」

「何だよレオン、執務は終わったのか?」

「いやーーー、ね?」

こんなのの面倒を見るカインツはつくづく大変そうだなと改めて思う。

「そんなことよりコレ、一緒にどうだ?」


そう言ってレオンハルトは、何処かから奪ってきたであろうサンドイッチが詰まったバスケットを突き出してきた。

「俺は一切責任なんて負わないからな。」

「分かってるって、いつもの場所でいいだろ?」

「俺いつも言ってるけど、普通にベンチじゃダメなんですかね。」


いつもの場所と言うのは庭に生えている木の上である。俺はいつも木の上はごめんだ、と下のベンチでレオンの執務からの脱走に付き合っている。

きっとカインツは俺と居る事を知っているから敢えて追ってこないのであろう。だが、定刻になると決まってレオンを回収しに来る所は、やはり抜かりがない。


数時間ぶっ続けで剣の相手をしていた為、いいかげんお腹も空いているので、サンドイッチを1つ手に取ると、ニコラウスは勢いよくかぶりついた。

「なぁニコラウスー、ティアちゃんとはどうなのよー!」

レオンハルトは木の上からするすると降りて、こちらに顔を覗かせると、ニコラウスに問いかけた。

「だからティアって呼ぶな。別に数日前に例のラベンダー畑に行ってきた。」

「あぁ、カインツが言ってたオススメの場所って奴か。いいねぇ、初々しいねぇニコラウスくんよ!」

そう言ってレオンハルトはニコラウスの肩をガっと掴むと、ニカッと笑った。


「レオンもそろそろ決めなきゃなんでしょ?そっちこそどうなんだよ。」

「い、いやー、俺はまだ早いかなーって……」

「もう19だろ、むしろ遅いわ。」


痛いところを突かれたと言わんばかりに、レオンハルトは頭を搔いている。

そんなくだらない会話に、お互い声を上げて笑った


手に持っていたサンドイッチを食べ切り、次に移ろうとした時、レオンハルトが零した。

「うっわ、もう見つかった。」


「あぁ……面倒臭い。」


2人の目線の先にはきゃあきゃあと騒ぐご令嬢の姿があった。

「なんか最近カインツより見つけるの早くないか?彼女らの観察眼やばくない?」

「この場所もそろそろ変えべきなんだろ。次からは違うところで頼んだ。」

「えー、俺ここ気に入ってたんだけどな。」

俺もその意見には賛成する。基本的にこの場所は人通りが少なくて静かだ。耳を澄ませば城外の川の音すら聞こえてくる程に。  


少しばかり残念だと思いつつも、彼女らに絡まれる手間を考え、2人はバスケットを畳み、その場を去った。


ニコラウスはポケットから取り出した懐中時計を見た。

「俺そろそろ訓練に戻る時間なんだけど、」

「団長様も大変そうだなぁ。……じゃあ俺も付いてくよっ!」

「はぁ……、カインツに怒られても俺は責任取らないからな。」


♢♢♢




で、現在何故か訓練生はレオンハルトと木刀で打ち合っている。


「俺絶対一国の皇子と手合わせしたくない………」

ニコラウスの呟きは、剣のぶつかる音に掻き消された。


「団長!!!もう!無理!です!!!!」

先程から一切休憩をさせて貰えず、訓練生達はひぃひぃと情けのない声をあげている。

「レオン……、レオンハルト様その辺にしといてやってください。」

「じゃあニコラウス俺と1本どうだ?」

「確かに久方ぶりですね。喜んで。」

ニコラウスがそう返答すると、周りからは野太い歓声が上がった。

「今のうちに休憩を取るように。どちらかが1本取ったら休憩は終わりだ。」


「「「了解しました!!!」」」


「では、レオンハルト様からどうぞ。」

ニコラウスは挑発的な目でレオンハルトに微笑みかけている。

「うっわ、団長こっわ………」

「俺あの目だけで負けるわ。」

あちらこちらから、悲鳴か歓声か分からないような声が次々に上がる。


「じゃあ行くぞニコラウス_______。」





結果は引き分け。

レオンハルトはニコラウスに打ち込み続けるも、全てを剣で流されてしまい、ニコラウスに当てることは出来なかった。

途中でカインツがレオンハルトを無理矢理連行して、勝負は終了。


レオンハルトは去り際に、「覚えてろよーー!」と言い残し、ずるずるとカインツに引っ張られて行った。

どこの悪役だよと、ニコラウスは笑みをこぼすのであった。

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