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「レティシア、お手をどうぞ。」
ニコラウスは馬車を降りた後に右手を差し出した。
突然のその行動に少し躊躇いながらもレティシアはその手を取り、ゆっくりと馬車から降りた。
結局来てしまった………
直前に「やっぱり辞めておこうかしら。」と葛藤があったが、最後までユリアとの押し問答があった末に、結局は彼女に押し切られ、行くことになった。
こんな所に来るのは何年ぶりかしら?物凄く緊張するわ……。今まで引きこもってた私が突然現れたら皆さんどう思われるのかしら……。
まぁ、きっと私の存在なんて忘れ去られているから大丈夫か。
「そんなに不安そうな顔をすること無いさ。貴女はとても綺麗だ。俯いてしまっては勿体無い。」
ニコラウスはレティシアの頬に手を添えると、その顔を正面へ向き直らせた。
ニコラウスは先程添えた手を、レティシアの頬から離し、左手をきゅっと握りなおした。
そうよね、ここまで来てるんだから覚悟を決めないと。ここに来ると決めたのは私だもの。ここで行くのを辞めてしまったらニコラウスは他の……
胸の奥に小さな痛みを覚えたが、今のレティシアにはそんなことを気に止めている余裕はないようだ。
もう一切の不安が無いと言えば嘘になるが、今もじんわりと温もりを感じさせてくれる右手のお陰だろうか、先程までよりは幾らか気持ちが楽だ。
「ありがとう、ニコラウス。行きましょうか。」
レティシアの返答を聞くとニコラウスは軽く微笑み、会場へと続く道を歩き始めた。
♢♢♢
うーーー!やっぱり帰ろっかなっ!!!!
そんなことを道中ずっと考えていたが、とうとう会場への最後の扉の目の前まで来てしまった。
「はぁ……………………。」
「大丈夫。自分に自信を持って。」
そう言ってニコラウスはレティシアの左手を取ると、その甲に唇を落とした。
するとニコラウスはこちらに視線を向け微笑んだ。
??!?!?!?!??
え、さっきから薄々感じてたけど何、こういう場だとテンション変わるんですか?なんか破壊力凄くないです????
貴方のその顔でその行動されたら私キャパオーバーですけど!?!心臓飛び出そう無理ぃ!!!
勿論褒めてくれるのは勿論嬉しいんだけれど、悩んでるのそこじゃ無いんですねこれが!褒められて素直に嬉しいですてんけ・ど・も!!
ニコラウスは緊張を解こうとしたようだが、逆効果であったようで、レティシアはその場で立ち固まってしまった。
「今日は色々な地方から人が集まっているはずだから、もしかしたらプディングがあるかも……」
そんなレティシアの心中を察したのか、ニコラウスは顎に右手を宛てながら、悪巧みをするようにレティシアの方を見遣った。
「ふふふ、それは素敵ね。」
レティシアも、そんなニコラウスの気遣いに気付いたのか口元を綻ばせた。
そんな様子にニコラウスも安堵したのか、扉に向き直った。
「では、お手をどうぞ、レティシア嬢。」
ニコラウスが扉のそばに居た兵士に目配せすると、ゆっくりとその扉が開かれた。
ニコラウスは馬車を降りた後に右手を差し出した。
突然のその行動に少し躊躇いながらもレティシアはその手を取り、ゆっくりと馬車から降りた。
結局来てしまった………
直前に「やっぱり辞めておこうかしら。」と葛藤があったが、最後までユリアとの押し問答があった末に、結局は彼女に押し切られ、行くことになった。
こんな所に来るのは何年ぶりかしら?物凄く緊張するわ……。今まで引きこもってた私が突然現れたら皆さんどう思われるのかしら……。
まぁ、きっと私の存在なんて忘れ去られているから大丈夫か。
「そんなに不安そうな顔をすること無いさ。貴女はとても綺麗だ。俯いてしまっては勿体無い。」
ニコラウスはレティシアの頬に手を添えると、その顔を正面へ向き直らせた。
ニコラウスは先程添えた手を、レティシアの頬から離し、左手をきゅっと握りなおした。
そうよね、ここまで来てるんだから覚悟を決めないと。ここに来ると決めたのは私だもの。ここで行くのを辞めてしまったらニコラウスは他の……
胸の奥に小さな痛みを覚えたが、今のレティシアにはそんなことを気に止めている余裕はないようだ。
もう一切の不安が無いと言えば嘘になるが、今もじんわりと温もりを感じさせてくれる右手のお陰だろうか、先程までよりは幾らか気持ちが楽だ。
「ありがとう、ニコラウス。行きましょうか。」
レティシアの返答を聞くとニコラウスは軽く微笑み、会場へと続く道を歩き始めた。
♢♢♢
うーーー!やっぱり帰ろっかなっ!!!!
そんなことを道中ずっと考えていたが、とうとう会場への最後の扉の目の前まで来てしまった。
「はぁ……………………。」
「大丈夫。自分に自信を持って。」
そう言ってニコラウスはレティシアの左手を取ると、その甲に唇を落とした。
するとニコラウスはこちらに視線を向け微笑んだ。
??!?!?!?!??
え、さっきから薄々感じてたけど何、こういう場だとテンション変わるんですか?なんか破壊力凄くないです????
貴方のその顔でその行動されたら私キャパオーバーですけど!?!心臓飛び出そう無理ぃ!!!
勿論褒めてくれるのは勿論嬉しいんだけれど、悩んでるのそこじゃ無いんですねこれが!褒められて素直に嬉しいですてんけ・ど・も!!
ニコラウスは緊張を解こうとしたようだが、逆効果であったようで、レティシアはその場で立ち固まってしまった。
「今日は色々な地方から人が集まっているはずだから、もしかしたらプディングがあるかも……」
そんなレティシアの心中を察したのか、ニコラウスは顎に右手を宛てながら、悪巧みをするようにレティシアの方を見遣った。
「ふふふ、それは素敵ね。」
レティシアも、そんなニコラウスの気遣いに気付いたのか口元を綻ばせた。
そんな様子にニコラウスも安堵したのか、扉に向き直った。
「では、お手をどうぞ、レティシア嬢。」
ニコラウスが扉のそばに居た兵士に目配せすると、ゆっくりとその扉が開かれた。
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