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「はぁ………………。」

レティシアは肘をつきながら、窓際で項垂れていた。
 
あぁ、雨だ。暇だ。

先程楽しみにしていた小説は読み終えてしまったし、あまり刺繍は得意ではない。だからと言ってお腹がすいている訳でもない。

本当にどうしたものか………。


レティシアはまた大きなため息をひとつついた。


コンコンコン____。


「どうぞ~。」

「お嬢様。ニコラウス様よりお手紙でございます。」

ニコラウスという言葉に反応し、レティシアは急に背筋をぴんと伸ばした。

「あらあら、また『ニコラウス様』ですか?」

侍女のユリアが、口を右手でかくしながらニヤニヤとこちらを見ている。

「もう分かったからあっちいってて!もう!!」

レティシアは立ち上がり窓際から離れたと思うと、ユリアの背中を無理やり押し、今来た扉から押し出した。

ユリアを追い出したのを確認すると、引き出しからペーパーナイフを取りだし、急いで先程届いた手紙を開封し、中身に目を通した。


ぱー、てぃー………?公のパーティーなんて私何年出てないのかしら……最後に出たのが私の成人祝いの親族だけで行ったものだから…ちゃんとしたパーティなんて10数年行ってないわ…………。

でも、ニコラウスが誘ってくれてるし……うぅぅ…

1人で悩んでいても絶対結論でないわねコレは。と、いうことで登場してもらいましょう。

「ユリア、ちょっと来てもらってもいいかしら?」

「ハイハイ、今度は何ですか?」

ユリアはものすごく面倒くさそうな顔をして、渋々部屋に入ってきた。一応侯爵令嬢なんだけど私、大丈夫かしら???

まぁそんなことは置いておいて問題はコレよ。

「ねぇユリア、ニコラウスにパーティーに誘われたのだけど、どう思う?でも私…………「行きましょう!!!行くしかないですよ!お嬢様が行かなければ他の女性に取られてしまいますよ!!!!」

ユリアはレティシアの言葉を途中で遮り、食い気味にこちらに身を乗り出してきた。

「で、でも………」

「いや、行けますって!大丈夫です!」

「そ、そう……?」

「いぇす!!!!!」

「そ、……そうね。とても緊張するけれど………。ニコラウスに参加する旨を伝えなくちゃね……。」


「やっ……………たぁあああああ!!皆さん!朗報ですよ!お嬢様が、お嬢様がぁぁあああ!!」

レティシアが肯定の意を見せると同時にユリアは部屋を飛び出し、大声を出しながら廊下を駆けていった。

ニコラウスが他の方とパーティーに、と思うと何だか少し妬けてしまうのは、久しぶりに出来た友人だからなのかしら………

そんなことを考えながら、飛び出して行った侍女の背中を目で追った。

 
その数分後には、服飾屋、宝石店の方が立て続けにやって来て目が回るほど何度も何度も試着と脱衣を繰り返させられた。

最終的には執務をしていた筈の父と母、兄までレティシアの自室にやってきてドレスを選ぶ羽目になった。



まだ私お返事の手紙、書いてないんですけど………


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