14 / 39
9.
しおりを挟む
「さっきから落ち着きがないわね……あぁ、誰かと出掛けるんだったかしら?あのティアちゃんが…」
レティシアの母であるフローラは、手を目の端に宛て、おいおいと泣く真似をしている。
「大袈裟。今日は一緒に『ぷでぃんぐ』食べに行くの。ずっと楽しみにしてたんだから!」
「ははーん……、つまりデートね!」
フローラは片眉を釣りあげ、ニヤリと笑った。
「そんなんじゃないの!ニコラウスはともだち!」
「はいはい、分かったから。ほら窓の外見てご覧。お目当ての彼じゃない?」
これ以上否定し続けてもどうしようもないと判断し、レティシアは一刻も早くこの場を去ることを選択した。
レティシアは普段街に出る時、その亜麻色の髪を紺色のリボンで1つに括っているが、今日は久しぶりに友人と出かけるという事で、その髪を下ろしている。
「帰りは遅くなるから夕食は断っておいてください。では行ってきます!」
「気をつけてね。」
レティシアが家を出ると同時に、こちらに向かって来ていた馬車が丁度家の前に停車した。
「レティシア、久しぶり。」
「まだ1週間しか経ってないですよ。」
軽く挨拶を交わすと「ほら、乗って。」と、馬車の中から出てきて、その片手を差し出してた。
その手を掴み、車内へと入り腰を掛けるとあら不思議。何故か正面が空いているのに隣に座ってくるではありませんか。
「ま、前ではだめです……?」
「今日はそんな気分なんだよ。」
「ソ、ソウデスカ。」
なんだろう、物凄く、物凄く恥ずかしいっ………!
そして何故か今も尚、ニコラウスはこちらをじーっと見つめ、目線を逸らさないでいる。
「何か変……ですか?」
「いや、今日は髪を下ろしてるんだね。」
「は、はい……そうですね…?」
それがどうかしたのかと言いたげにエルナは首を傾げた。
「いや、可愛いなと思って。」
すると思いもよらない回答が返ってきたために、エルナ一瞬のフリーズを経て、顔を真っ赤に染め俯いた。
あれ、これもしかして私の知ってるニコラウスじゃないのかしら?基本的に表情が固くてクールってイメージだったけど……もしかして頭とかぶつけてたり……
「僕は正真正銘ニコラウスだし、至って正常だからね。」
「えぇっ!心読めるんですか!!!」
「そんな所だと思ったよ。」
そう言ってニコラウスは、クスクスと肩を揺らしながら笑っている。
「び、びっくりするのでそう言うのはダメです!」
軽く声を裏返らせながらながら、必死に顔の前で大きなバツをアピールした。
この後もしばらくの間、レティシアはニコラウスに弄ばれ続け、目的に到着する頃には随分とぐったりとした様子であった。
♢♢♢
普通に馬車に乗っていただけなのに、何かどっと疲れたわ。本当にこんなに疲れる移動は初めてよ……
まぁとりあえず目的の町には着いたことだし良しとしましょう。何より、今日の目的は『ぷでぃんぐ』を食べることなんだからね!そう考えたら急にワクワクしてきたわ………!
「そんなに嬉しかったの?」
レティシアの思考は思い切り顔に出ていたらしく、自然と口の端が上がっていたらしい。
「ずっと楽しみにしてたんだもの、仕方ないじゃない?」
そしてレティシアはスカートを翻し、ニコリと笑った。
実際にこの町に入ってみて、噂に聞いていたより遥かに綺麗な街並みや、船着き場に停まっている沢山の船を見ると、やはり好奇心を擽られる。
船着き場の船からは異国から来たんだろうと思われる人や物が沢山行き交っているようだ。
「ねぇニコラウス、私もう待ちきれないのだけど…案内してもらってもいいかしら!」
「うん、そう言うと思ったよ。この道を右に曲がったところにあるよ。では行こうか?」
そう言ってニコラウスはレティシアの前に手を差し出して来た。
しばらくレティシアはその手をとるのを躊躇していたが、ニコラウスには全く引く気がないようなので、仕方なくレティシアはその手をとることにした。
そしてレティシアはそのままニコラウスに手を引かれ、目的の店へと歩みを進めた。
レティシアの母であるフローラは、手を目の端に宛て、おいおいと泣く真似をしている。
「大袈裟。今日は一緒に『ぷでぃんぐ』食べに行くの。ずっと楽しみにしてたんだから!」
「ははーん……、つまりデートね!」
フローラは片眉を釣りあげ、ニヤリと笑った。
「そんなんじゃないの!ニコラウスはともだち!」
「はいはい、分かったから。ほら窓の外見てご覧。お目当ての彼じゃない?」
これ以上否定し続けてもどうしようもないと判断し、レティシアは一刻も早くこの場を去ることを選択した。
レティシアは普段街に出る時、その亜麻色の髪を紺色のリボンで1つに括っているが、今日は久しぶりに友人と出かけるという事で、その髪を下ろしている。
「帰りは遅くなるから夕食は断っておいてください。では行ってきます!」
「気をつけてね。」
レティシアが家を出ると同時に、こちらに向かって来ていた馬車が丁度家の前に停車した。
「レティシア、久しぶり。」
「まだ1週間しか経ってないですよ。」
軽く挨拶を交わすと「ほら、乗って。」と、馬車の中から出てきて、その片手を差し出してた。
その手を掴み、車内へと入り腰を掛けるとあら不思議。何故か正面が空いているのに隣に座ってくるではありませんか。
「ま、前ではだめです……?」
「今日はそんな気分なんだよ。」
「ソ、ソウデスカ。」
なんだろう、物凄く、物凄く恥ずかしいっ………!
そして何故か今も尚、ニコラウスはこちらをじーっと見つめ、目線を逸らさないでいる。
「何か変……ですか?」
「いや、今日は髪を下ろしてるんだね。」
「は、はい……そうですね…?」
それがどうかしたのかと言いたげにエルナは首を傾げた。
「いや、可愛いなと思って。」
すると思いもよらない回答が返ってきたために、エルナ一瞬のフリーズを経て、顔を真っ赤に染め俯いた。
あれ、これもしかして私の知ってるニコラウスじゃないのかしら?基本的に表情が固くてクールってイメージだったけど……もしかして頭とかぶつけてたり……
「僕は正真正銘ニコラウスだし、至って正常だからね。」
「えぇっ!心読めるんですか!!!」
「そんな所だと思ったよ。」
そう言ってニコラウスは、クスクスと肩を揺らしながら笑っている。
「び、びっくりするのでそう言うのはダメです!」
軽く声を裏返らせながらながら、必死に顔の前で大きなバツをアピールした。
この後もしばらくの間、レティシアはニコラウスに弄ばれ続け、目的に到着する頃には随分とぐったりとした様子であった。
♢♢♢
普通に馬車に乗っていただけなのに、何かどっと疲れたわ。本当にこんなに疲れる移動は初めてよ……
まぁとりあえず目的の町には着いたことだし良しとしましょう。何より、今日の目的は『ぷでぃんぐ』を食べることなんだからね!そう考えたら急にワクワクしてきたわ………!
「そんなに嬉しかったの?」
レティシアの思考は思い切り顔に出ていたらしく、自然と口の端が上がっていたらしい。
「ずっと楽しみにしてたんだもの、仕方ないじゃない?」
そしてレティシアはスカートを翻し、ニコリと笑った。
実際にこの町に入ってみて、噂に聞いていたより遥かに綺麗な街並みや、船着き場に停まっている沢山の船を見ると、やはり好奇心を擽られる。
船着き場の船からは異国から来たんだろうと思われる人や物が沢山行き交っているようだ。
「ねぇニコラウス、私もう待ちきれないのだけど…案内してもらってもいいかしら!」
「うん、そう言うと思ったよ。この道を右に曲がったところにあるよ。では行こうか?」
そう言ってニコラウスはレティシアの前に手を差し出して来た。
しばらくレティシアはその手をとるのを躊躇していたが、ニコラウスには全く引く気がないようなので、仕方なくレティシアはその手をとることにした。
そしてレティシアはそのままニコラウスに手を引かれ、目的の店へと歩みを進めた。
0
お気に入りに追加
84
あなたにおすすめの小説
【完結】初夜の晩からすれ違う夫婦は、ある雨の晩に心を交わす
春風由実
恋愛
公爵令嬢のリーナは、半年前に侯爵であるアーネストの元に嫁いできた。
所謂、政略結婚で、結婚式の後の義務的な初夜を終えてからは、二人は同じ邸内にありながらも顔も合わせない日々を過ごしていたのだが──
ある雨の晩に、それが一変する。
※六話で完結します。一万字に足りない短いお話。ざまぁとかありません。ただただ愛し合う夫婦の話となります。
※「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載中です。

王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る
家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。
しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。
仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。
そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。

【完結】傷物令嬢は近衛騎士団長に同情されて……溺愛されすぎです。
朝日みらい
恋愛
王太子殿下との婚約から洩れてしまった伯爵令嬢のセーリーヌ。
宮廷の大広間で突然現れた賊に襲われた彼女は、殿下をかばって大けがを負ってしまう。
彼女に同情した近衛騎士団長のアドニス侯爵は熱心にお見舞いをしてくれるのだが、その熱意がセーリーヌの折れそうな心まで癒していく。
加えて、セーリーヌを振ったはずの王太子殿下が、親密な二人に絡んできて、ややこしい展開になり……。
果たして、セーリーヌとアドニス侯爵の関係はどうなるのでしょう?

【完結】勤労令嬢、街へ行く〜令嬢なのに下働きさせられていた私を養女にしてくれた侯爵様が溺愛してくれるので、国いちばんのレディを目指します〜
鈴木 桜
恋愛
貧乏男爵の妾の子である8歳のジリアンは、使用人ゼロの家で勤労の日々を送っていた。
誰よりも早く起きて畑を耕し、家族の食事を準備し、屋敷を隅々まで掃除し……。
幸いジリアンは【魔法】が使えたので、一人でも仕事をこなすことができていた。
ある夏の日、彼女の運命を大きく変える出来事が起こる。
一人の客人をもてなしたのだ。
その客人は戦争の英雄クリフォード・マクリーン侯爵の使いであり、ジリアンが【魔法の天才】であることに気づくのだった。
【魔法】が『武器』ではなく『生活』のために使われるようになる時代の転換期に、ジリアンは戦争の英雄の養女として迎えられることになる。
彼女は「働かせてください」と訴え続けた。そうしなければ、追い出されると思ったから。
そんな彼女に、周囲の大人たちは目一杯の愛情を注ぎ続けた。
そして、ジリアンは少しずつ子供らしさを取り戻していく。
やがてジリアンは17歳に成長し、新しく設立された王立魔法学院に入学することに。
ところが、マクリーン侯爵は渋い顔で、
「男子生徒と目を合わせるな。微笑みかけるな」と言うのだった。
学院には幼馴染の謎の少年アレンや、かつてジリアンをこき使っていた腹違いの姉もいて──。
☆第2部完結しました☆
悪役令嬢のビフォーアフター
すけさん
恋愛
婚約者に断罪され修道院に行く途中に山賊に襲われた悪役令嬢だが、何故か死ぬことはなく、気がつくと断罪から3年前の自分に逆行していた。
腹黒ヒロインと戦う逆行の転生悪役令嬢カナ!
とりあえずダイエットしなきゃ!
そんな中、
あれ?婚約者も何か昔と態度が違う気がするんだけど・・・
そんな私に新たに出会いが!!
婚約者さん何気に嫉妬してない?
子持ちの私は、夫に駆け落ちされました
月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。
【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす
まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。
彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。
しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。
彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。
他掌編七作品収録。
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します
「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」
某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。
【収録作品】
①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」
②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」
③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」
④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」
⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」
⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」
⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」
⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」

【完結】転生地味悪役令嬢は婚約者と男好きヒロイン諸共無視しまくる。
なーさ
恋愛
アイドルオタクの地味女子 水上羽月はある日推しが轢かれそうになるのを助けて死んでしまう。そのことを不憫に思った女神が「あなた、可哀想だから転生!」「え?」なんの因果か異世界に転生してしまう!転生したのは地味な公爵令嬢レフカ・エミリーだった。目が覚めると私の周りを大人が囲っていた。婚約者の第一王子も男好きヒロインも無視します!今世はうーん小説にでも生きようかな〜と思ったらあれ?あの人は前世の推しでは!?地味令嬢のエミリーが知らず知らずのうちに戦ったり溺愛されたりするお話。
本当に駄文です。そんなものでも読んでお気に入り登録していただけたら嬉しいです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる