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第3章 学園生活 前期

20.病床にて

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「本日はゆっくりとベッドでお休みになってくださいね。」

エマは、そう言って僕の額に乗っている濡れたタオルを新しいものに変えると、何やら忙しそうに部屋を出ていってしまった。

先程までは兄達が部屋に居たが、各々しなければいけないことがある為に、ついさっき出ていってしまったのだ。

侍女もつい先程、部屋から退出してしまい、ノエルは完全に1人きりである。忙しそうにしている侍女を引き止め話し相手にするという訳にもいかず、特にすることもなく手持ち無沙汰である。

ノエルは今日風邪を引いてしまい、学園に行くことが出来ずにベッドの中という訳である。

まぁ正直、兄達がいると永遠に話しかけ続けられるから本当は寝かせてほしかったんだけどね……

一応僕も病人だから体調はあんまり良くないんだよね……




「ノエル大丈夫か?何処が痛い?」

「いや、別に痛くは……」

「今日は俺も学園を休むよ。ずっと傍に着いて看病しててやるよ。」

「いや、学園は行って……?」

「昼の休憩時間には必ず見に来るからね、それまで少しの間はここで大人しくしていてね?」

「……………うん。」

まぁそれくらいならいっか……

「じゃあ俺も学園………」

「だからそれはダメ。」

「じゃあできるだけ急いで帰って来る…………」

ローレンツは、無いはずの尻尾を垂れ下げながらなくなく部屋を出ていった。


「じゃあ僕はしばらくノエルの隣で……」

そう言うと同時にルーベルトの肩に手が置かれた。

「お前は資料を纏めなきゃだろ。」

「お父様、あと少しだけ……………」


そう言ってロイスは、その場に留まろうとするルーベルトをずりずりと引きずって行ってしまった。



こうして部屋に完全に1人になったノエルは、することも無く瞼を再び閉じて眠りについた。




✿✿✿





…………どのくらい寝ていたんだろ。そう思い、壁にかけられている時計を見ると時は既に12時を越していた。


「おはよう、ノエル。昼食は食べれる?」

そしてベッドの横に目を遣ると、そこにはロイスに連れていかれたはずのルーベルトが居た。

「ルー兄さん、お仕事はいいの?」

「あぁ、今は昼休憩を貰ってる。それより粥があるけど食べれるかい?」

「うん、食べる!お皿取ってもらえる?」


ルーベルトは皿を手に取ったものの、ノエルに渡そうとはしない。



「ほら、ノエル口開けて。」

そしてルーベルトはスプーンに少量の粥をとり、ノエルの口へと運んだ。

そのままノエルは、運ばれてきた粥をぱくりと口に含んだ。


そして口の中の物が無くなると、すぐにまたスプーンが口へと向かってくる。



「ねぇ、ルー兄さん、僕1人で食べられるよ?」

「僕がやりたいだけだから。ほら、口開けて?」


そしてまたスプーンが口へと運ばれる。特に、早くもなく遅くもなく、丁度いいペースで運んでくれる為、そのままルーベルトの行為を甘んじで受け入れた。





「ふぅ………ご馳走様!ルー兄さんありがとうね、早くお仕事戻らないとお父様に怒られちゃうよ?」

「…………また直ぐに執務を切り上げて来るから待っててね。ほら、もう一回布団に入って。」

そう言ってルーベルトはノエルに布団をかけ直し、額に軽くキスを落とした。

「おやすみ。」


「うん、おやすみ。」



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