気づいたら周りの皆が僕を溺愛していた

しののめ

文字の大きさ
上 下
63 / 72
第3章 学園生活 前期

13.訪問

しおりを挟む
その後、料理長にケーキを作って欲しいとお願いすると、すんなりと了承を得ることが出来た。

数十分で出来上がるから紅茶でも飲んで待っていて欲しい、との事だったので2人はケーキが出来上がるのを待つため、また部屋へと引き返した。


「途中で中断しちゃってごめんね……」

「全然良いよ。水被るだけで済んで良かったよ。もし火だったらと思うとゾッとするけど。」

「また次はロイ兄さんと沢山練習しておくね。」

「ローレンツ様とか絶対スパルタじゃん………。」

「ん…?ごめん聞こえなかったもっかい言って!」

「あぁ、ローレンツ様との練習って厳しくないのか……?」

「全然だよー。むしろ多過ぎるくらい休憩させてくれるし、出来なかったら何度でも丁寧に教えてくれるよ!」

「へ、へぇ…………。」


リュカは、普段のローレンツの姿からは想像出来ないような教え方に、つくづく過保護な兄なんだと改めて実感した。


そんなことを話していると扉が数回ノックされ、ケーキが運び込まれて来た。

ミルフィーユ生地のケーキにチョコレートで出来た繊細な装飾が施されている。この数十分で作られたとは思えないクオリティである。


ノエルの方に目をやると、まさにきキラキラと目を輝かせソワソワとしていた。

「ノエルって本当にお菓子好きだよね。」

「……………バレてた?」


ノエルは今までは隠し通せていたと思っていたらしく、少し照れたような表情でリュカを上目遣いに見上げた。

そんな様子にくすりと笑みが零れる。


「じゃあ、どうぞ。」

その言葉を皮切りに、ノエルはフォークを片手にケーキをもぐもぐと食べだした。




✿✿✿




「そろそろ外も暗くなりそうだし帰らなくちゃ。」

「そうだね。……ってかハンス兄様達はどこに?」

すると側仕えの侍女が、「大広間にて稽古をされております。」と答えた。


「もうノエルが帰りたいって言ってるから、ってローレンツ様に伝えて。」

「畏まりました。」


「じゃあ馬車まで送るよ。ほらこっち。」

そう言ってリュカはノエルの手を引き、馬車が止まっている玄関前に向かった。



玄関前に到着すると、そこには既にローレンツとハンスの姿があった。


「ロイ兄さぁーーん!」

「…………っノエル!」

ブンブンと手を振るノエルに対し、抱きついて欲しいのかローレンツは両手を広げ腰をかがめている。

そんなローレンツを無視して、ノエルはリュカに別れの挨拶をした。

「今日すっごく楽しかった!今度は家においでよ!」

「あ、あぁ………そう、だね。」

なんだか歯切れの悪い返事をするのは、ローレンツに加えて過保護な兄がもう1人居ることをリュカは知っているからである。

「リュカ大好き!」

「うぉ、っ………!?!?!?!?」

ノエルは思い切りリュカに抱きついた。

「またね!」

「う、うん……?」

ノエルのその行動に、リュカは至極驚いた様子だ。

そこにローレンツの鋭い視線が降り注ぐ。自分はハグをスルーされたのに何故お前だけ、と言ったところであろう。


そしてそのままノエルは、リュカにしたのと同じ様にハンスにもきゅっと抱きついた。

「ハンスさんもまた今度遊ぼうね。約束!」

「…………マジかぁ。……分かったよ、約束な。」

そう言ってハンスはノエルをひょいと抱き上げ頬にキスを落とした。


「……………ローレンツさん怖いんですけどっっつ!!!!死ぬっ!死ぬって!」

流石にハンスは許容できなかったらしく、ローレンツは容赦なくハンスの首を締めにかかっている。

「お前は絶対殺す。来世まで呪い殺す。」


「…………ノエル、早く馬車に乗り込んで。多分これ収集着かないやつ。ほら、バイバイ。」

「ん、分かった!また学園でね!……ロイ兄さんー?置いてっちゃうよ?」

「………マジで覚えとけよお前。」


また本日も一悶着あったが無事(?)に自宅へと帰ることが出来たようだ。



その後、ローレンツは滅茶苦茶拗ねたが、ノエルが抱きついたことで丸く収まったらしい。
しおりを挟む
感想 42

あなたにおすすめの小説

俺の義兄弟が凄いんだが

kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・ 初投稿です。感想などお待ちしています。

普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている

迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。 読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)  魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。  ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。  それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。  それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。  勘弁してほしい。  僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。

転生して悪役になったので、愛されたくないと願っていたら愛された話

あぎ
BL
転生した男子、三上ゆうじは、親に愛されたことがない子だった 親は妹のゆうかばかり愛してた。 理由はゆうかの病気にあった。 出来損ないのゆうきと、笑顔の絶えない可愛いゆうき。どちらを愛するかなんて分かりきっていた そんな中、親のとある発言を聞いてしまい、目の前が真っ暗に。 もう愛なんて知らない、愛されたくない そう願って、目を覚ますと_ 異世界で悪役令息に転生していた 1章完結 2章完結(サブタイかえました) 3章連載

悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)

なんでも諦めてきた俺だけどヤンデレな彼が貴族の男娼になるなんて黙っていられない

迷路を跳ぶ狐
BL
 自己中な無表情と言われて、恋人と別れたクレッジは冒険者としてぼんやりした毎日を送っていた。  恋愛なんて辛いこと、もうしたくなかった。大体のことはなんでも諦めてのんびりした毎日を送っていたのに、また好きな人ができてしまう。  しかし、告白しようと思っていた大事な日に、知り合いの貴族から、その人が男娼になることを聞いたクレッジは、そんなの黙って見ていられないと止めに急ぐが、好きな人はなんだか様子がおかしくて……。

兄たちが弟を可愛がりすぎです

クロユキ
BL
俺が風邪で寝ていた目が覚めたら異世界!? メイド、王子って、俺も王子!? おっと、俺の自己紹介忘れてた!俺の、名前は坂田春人高校二年、別世界にウィル王子の身体に入っていたんだ!兄王子に振り回されて、俺大丈夫か?! 涙脆く可愛い系に弱い春人の兄王子達に振り回され護衛騎士に迫って慌てていっもハラハラドキドキたまにはバカな事を言ったりとしている主人公春人の話を楽しんでくれたら嬉しいです。 1日の話しが長い物語です。 誤字脱字には気をつけてはいますが、余り気にしないよ~と言う方がいましたら嬉しいです。

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

その男、有能につき……

大和撫子
BL
 俺はその日最高に落ち込んでいた。このまま死んで異世界に転生。チート能力を手に入れて最高にリア充な人生を……なんてことが現実に起こる筈もなく。奇しくもその日は俺の二十歳の誕生日だった。初めて飲む酒はヤケ酒で。簡単に酒に呑まれちまった俺はフラフラと渋谷の繁華街を彷徨い歩いた。ふと気づいたら、全く知らない路地(?)に立っていたんだ。そうだな、辺りの建物や雰囲気でいったら……ビクトリア調時代風? て、まさかなぁ。俺、さっきいつもの道を歩いていた筈だよな? どこだよ、ここ。酔いつぶれて寝ちまったのか? 「君、どうかしたのかい?」  その時、背後にフルートみたいに澄んだ柔らかい声が響いた。突然、そう話しかけてくる声に振り向いた。そこにいたのは……。  黄金の髪、真珠の肌、ピンクサファイアの唇、そして光の加減によって深紅からロイヤルブルーに変化する瞳を持った、まるで全身が宝石で出来ているような超絶美形男子だった。えーと、確か電気の光と太陽光で色が変わって見える宝石、あったような……。後で聞いたら、そんな風に光によって赤から青に変化する宝石は『ベキリーブルーガーネット』と言うらしい。何でも、翠から赤に変化するアレキサンドライトよりも非常に希少な代物だそうだ。  彼は|Radius《ラディウス》~ラテン語で「光源」の意味を持つ、|Eternal《エターナル》王家の次男らしい。何だか分からない内に彼に気に入られた俺は、エターナル王家第二王子の専属侍従として仕える事になっちまったんだ! しかもゆくゆくは執事になって欲しいんだとか。  だけど彼は第二王子。専属についている秘書を始め護衛役や美容師、マッサージ師などなど。数多く王子と密に接する男たちは沢山いる。そんな訳で、まずは見習いから、と彼らの指導のもと、仕事を覚えていく訳だけど……。皆、王子の寵愛を独占しようと日々蹴落としあって熾烈な争いは日常茶飯事だった。そんな中、得体の知れない俺が王子直々で専属侍従にする、なんていうもんだから、そいつらから様々な嫌がらせを受けたりするようになっちまって。それは日増しにエスカレートしていく。  大丈夫か? こんな「ムササビの五能」な俺……果たしてこのまま皇子の寵愛を受け続ける事が出来るんだろうか?  更には、第一王子も登場。まるで第二王子に対抗するかのように俺を引き抜こうとしてみたり、波乱の予感しかしない。どうなる? 俺?!

処理中です...