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第3章 学園生活 前期

13.訪問

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その後、料理長にケーキを作って欲しいとお願いすると、すんなりと了承を得ることが出来た。

数十分で出来上がるから紅茶でも飲んで待っていて欲しい、との事だったので2人はケーキが出来上がるのを待つため、また部屋へと引き返した。


「途中で中断しちゃってごめんね……」

「全然良いよ。水被るだけで済んで良かったよ。もし火だったらと思うとゾッとするけど。」

「また次はロイ兄さんと沢山練習しておくね。」

「ローレンツ様とか絶対スパルタじゃん………。」

「ん…?ごめん聞こえなかったもっかい言って!」

「あぁ、ローレンツ様との練習って厳しくないのか……?」

「全然だよー。むしろ多過ぎるくらい休憩させてくれるし、出来なかったら何度でも丁寧に教えてくれるよ!」

「へ、へぇ…………。」


リュカは、普段のローレンツの姿からは想像出来ないような教え方に、つくづく過保護な兄なんだと改めて実感した。


そんなことを話していると扉が数回ノックされ、ケーキが運び込まれて来た。

ミルフィーユ生地のケーキにチョコレートで出来た繊細な装飾が施されている。この数十分で作られたとは思えないクオリティである。


ノエルの方に目をやると、まさにきキラキラと目を輝かせソワソワとしていた。

「ノエルって本当にお菓子好きだよね。」

「……………バレてた?」


ノエルは今までは隠し通せていたと思っていたらしく、少し照れたような表情でリュカを上目遣いに見上げた。

そんな様子にくすりと笑みが零れる。


「じゃあ、どうぞ。」

その言葉を皮切りに、ノエルはフォークを片手にケーキをもぐもぐと食べだした。




✿✿✿




「そろそろ外も暗くなりそうだし帰らなくちゃ。」

「そうだね。……ってかハンス兄様達はどこに?」

すると側仕えの侍女が、「大広間にて稽古をされております。」と答えた。


「もうノエルが帰りたいって言ってるから、ってローレンツ様に伝えて。」

「畏まりました。」


「じゃあ馬車まで送るよ。ほらこっち。」

そう言ってリュカはノエルの手を引き、馬車が止まっている玄関前に向かった。



玄関前に到着すると、そこには既にローレンツとハンスの姿があった。


「ロイ兄さぁーーん!」

「…………っノエル!」

ブンブンと手を振るノエルに対し、抱きついて欲しいのかローレンツは両手を広げ腰をかがめている。

そんなローレンツを無視して、ノエルはリュカに別れの挨拶をした。

「今日すっごく楽しかった!今度は家においでよ!」

「あ、あぁ………そう、だね。」

なんだか歯切れの悪い返事をするのは、ローレンツに加えて過保護な兄がもう1人居ることをリュカは知っているからである。

「リュカ大好き!」

「うぉ、っ………!?!?!?!?」

ノエルは思い切りリュカに抱きついた。

「またね!」

「う、うん……?」

ノエルのその行動に、リュカは至極驚いた様子だ。

そこにローレンツの鋭い視線が降り注ぐ。自分はハグをスルーされたのに何故お前だけ、と言ったところであろう。


そしてそのままノエルは、リュカにしたのと同じ様にハンスにもきゅっと抱きついた。

「ハンスさんもまた今度遊ぼうね。約束!」

「…………マジかぁ。……分かったよ、約束な。」

そう言ってハンスはノエルをひょいと抱き上げ頬にキスを落とした。


「……………ローレンツさん怖いんですけどっっつ!!!!死ぬっ!死ぬって!」

流石にハンスは許容できなかったらしく、ローレンツは容赦なくハンスの首を締めにかかっている。

「お前は絶対殺す。来世まで呪い殺す。」


「…………ノエル、早く馬車に乗り込んで。多分これ収集着かないやつ。ほら、バイバイ。」

「ん、分かった!また学園でね!……ロイ兄さんー?置いてっちゃうよ?」

「………マジで覚えとけよお前。」


また本日も一悶着あったが無事(?)に自宅へと帰ることが出来たようだ。



その後、ローレンツは滅茶苦茶拗ねたが、ノエルが抱きついたことで丸く収まったらしい。
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