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第3章 学園生活 前期
4.帰路にて
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一度に色んなことが起きすぎて大変だったが、リュカが無理矢理ハンスとノエルを引き剥がすことで収束した。
そして、半ば無理矢理従者がローレンツのことを馬車に押し込み、現在帰路に着いているという訳だ。
………だけど、今ロイ兄さんはとてつもなく不機嫌だ。
窓から遠くの方を見ながら肘をつき、口を固く結びんで押し黙っている。明らかに機嫌が悪いのが見て取れる。
このままだとまずいかも…………
ローレンツは1度機嫌を損ねると、なかなか治らないのだ。長引けば長引くほど不機嫌も長期化する。
つまり僕にはロイ兄さんの機嫌を直すと言うミッションが課せられたのだ。
ノエルはこれまで幾度となく不機嫌なローレンツと対峙し、彼が不機嫌な時の対処法を学んできたのだ。
その対処法を存分に発揮する機会がついにやって来たのだ。
まずはどれくらい不機嫌なのか声をかけて確かめよう。
「ロイ兄さん。」
「……………なんだ?」
早い内に返事が返って事は不機嫌度合いはそこまで高くないはず。
そう思い、ノエルはローレンツの横に移動した。
「怒ってるの……………?」
「………………怒ってない。」
「……………ロイ兄さん、あのねリュカはすっごくいい子でね、」
「………あぁ。」
「僕が1人で居たら話しかけてくれて友達になってくれたんだよ?」
「………あぁ。」
「ねぇ、聞いてる!?!?!?」
「………あぁ。」
ロイ兄さん絶対聞いてないよね………。
窓を向いたまま、うわ言のように同じ単語を何度も呟いている。
これは切り札を出すしかない。
「………そう言えば今日魔力の属性を調べたんだけど……。」
ローレンツの体がピクリと動き、頭がこちらへと向いた。
「ど、どうだったんだ?」
「えっとね、ロイ兄さんと同じ水属性だった!」
そしてニコッと笑うと、さっきまでの不機嫌顔はどこへやら、いつもノエルに見せる笑顔に変わっていた。
「…………そうか!もし分からないことがあったら俺が何でも教えてやるからな。」
「ロイ兄さんって剣術科なのに魔法使えるの?」
「まぁ、ある程度は。」
「ロイ兄さんってすっごいんだね!」
ノエルに褒められて、あからさまに上機嫌である。
それからと言うもの、ローレンツの機嫌は右肩上がりで、ノエルを自らの膝に乗せ談笑しながら家まで帰ったらしい。
そして、半ば無理矢理従者がローレンツのことを馬車に押し込み、現在帰路に着いているという訳だ。
………だけど、今ロイ兄さんはとてつもなく不機嫌だ。
窓から遠くの方を見ながら肘をつき、口を固く結びんで押し黙っている。明らかに機嫌が悪いのが見て取れる。
このままだとまずいかも…………
ローレンツは1度機嫌を損ねると、なかなか治らないのだ。長引けば長引くほど不機嫌も長期化する。
つまり僕にはロイ兄さんの機嫌を直すと言うミッションが課せられたのだ。
ノエルはこれまで幾度となく不機嫌なローレンツと対峙し、彼が不機嫌な時の対処法を学んできたのだ。
その対処法を存分に発揮する機会がついにやって来たのだ。
まずはどれくらい不機嫌なのか声をかけて確かめよう。
「ロイ兄さん。」
「……………なんだ?」
早い内に返事が返って事は不機嫌度合いはそこまで高くないはず。
そう思い、ノエルはローレンツの横に移動した。
「怒ってるの……………?」
「………………怒ってない。」
「……………ロイ兄さん、あのねリュカはすっごくいい子でね、」
「………あぁ。」
「僕が1人で居たら話しかけてくれて友達になってくれたんだよ?」
「………あぁ。」
「ねぇ、聞いてる!?!?!?」
「………あぁ。」
ロイ兄さん絶対聞いてないよね………。
窓を向いたまま、うわ言のように同じ単語を何度も呟いている。
これは切り札を出すしかない。
「………そう言えば今日魔力の属性を調べたんだけど……。」
ローレンツの体がピクリと動き、頭がこちらへと向いた。
「ど、どうだったんだ?」
「えっとね、ロイ兄さんと同じ水属性だった!」
そしてニコッと笑うと、さっきまでの不機嫌顔はどこへやら、いつもノエルに見せる笑顔に変わっていた。
「…………そうか!もし分からないことがあったら俺が何でも教えてやるからな。」
「ロイ兄さんって剣術科なのに魔法使えるの?」
「まぁ、ある程度は。」
「ロイ兄さんってすっごいんだね!」
ノエルに褒められて、あからさまに上機嫌である。
それからと言うもの、ローレンツの機嫌は右肩上がりで、ノエルを自らの膝に乗せ談笑しながら家まで帰ったらしい。
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