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第3章 学園生活 前期
1.入学式
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3章は1.2章の比にならないくらいの変更を加えるつもりなので、1話ずつではなく、既存の話とズレが生じないように、ある程度纏めて変更致します。今もご愛読頂いている方にはご迷惑おかけしますがよろしくお願いいたします;
_______________
春の澄んだ朝、クーレル家の広間には新しい空気が漂っていた。
ノエルは真新しい制服の襟元を整えながら鏡を見つめていた。初めて袖を通す学園の制服。胸が少しだけきゅっと締め付けられる感覚がする。期待と不安、両方がないまぜになった複雑な気持ちが渦巻いていた。
「大丈夫」と自分に言い聞かせるように深呼吸をした後、ノエルはふっと小さくため息をついた。その音が広間の静けさに溶け込むと、玄関から聞き覚えのある優しい声が聞こえてきた。
「ノエル、準備はできた?」
ルーベルトが柔らかい笑みを浮かべて立っていた。その姿を見て、少し緊張していたノエルの顔もほころぶ。
「うん、準備はばっちり!でもね、ルー兄さんも一緒に通えたら良かったのにーって……」
そう呟くと、ルーベルトの表情が一瞬だけ寂しげに曇り、次の瞬間にはいつもの穏やかな笑顔に戻っていた。
「ごめんね、ノエル?僕も心からそう思うよ。それに今日はお父様に代わって、1日当主代理を務めなきゃいけないしね。せめて今日くらい一緒に行きたかったよ。ねぇ、お父様?」
名指しで呼ばれたロイスは肩をびくりと揺らしながら、「次期当主としての資質をだな……それに父が出席せずにどうする!」とそれらしい理由を並べると、ローレンツは諦めたようで苦笑いをした。
「僕は行けないけれど、ノエル。君が楽しく過ごしてくれれば、それで十分だ。」
ノエルは頷きながらも、やはりローレンツとは一緒には行けない事実に少し口を尖らせた。
「帰ってきたら、沢山あったことお話するからね。」
「それは楽しみだ。お茶とノエルの好きなお菓子を用意して待ってるよ。」
そう言ってルーベルトはノエルの額にキスを落とすと、ロイスやルーベルトが既に乗り込んだ馬車の方へ向かい、ノエルの背中をとんと押した。そのままの体の流れに従い、ノエルは馬車へと足をかける。
振り返ると、いつものようにひらひらと手を振るルーベルトに心がじんわりと暖かくなる。緊張がふっと解けた気がする。やっぱりルー兄さんはすごい。
馬車にはすでにロイスとローレンツが乗っており、ノエルが乗り込むとロイスが優しい声で迎えた。
「緊張してるかい?」
「うん……少しだけ。」
ノエルの答えに、ロイスは微笑みながらノエルの頭を軽く撫でた。
「初めての場所は誰だって不安なものだ。きっとすぐ馴染めるよ。困ったことがあったらいつでも話しなさい。」
続けて隣に座るローレンツも口を開く。
「お父様の言う通りだ。何かあればすぐに俺たちを頼れよ。」
くしゃくしゃと頭を撫でる手の温もりと、その真っ直ぐな言葉に、ノエルの胸の中の不安が少しだけ和らいだ。
やがて学園の門が見えると、ノエルは窓から顔を出してその壮大な建物に目を輝かせた。
「わぁ……すっごく大きい!」
ローレンツはその様子を微笑ましく見ながら、ノエルの頭を軽く撫でた。
「ははっ、楽しみになってきたか?」
「うん!」
ノエルが元気よく答えると、ローレンツも満足そうに微笑んだ。馬車を降り、入学式典の集合場所へ向かう途中、ローレンツが足を止めた。
「俺は在校生側の準備があるからさ、ここからは2人で行きな。」
「……そっか、じゃあロイ兄さん、また後でね?」
おそらくノエルの耳がしょんぼりと垂れたように見えたのだろう。悶えるように顔を上に向け、耐えきれないとばかりにノエルの頭をいつものようにくしゃくしゃとかき混ぜた。
「……っぐ!絶対、終わったらすぐ迎えに行くからまってろ。」
ローレンツはそのまま振り返らずに歩き出した。
ロイ兄さん歩くのもの凄くはやはい…!もはやあれって歩いてる、のかな?
ローレンツから向けられる不器用な愛情に、クスッと笑みがこぼれた。
***
やがて集合場所に到着すると、ロイスがノエルの肩に手を置いて優しく言った。
「私も式の間は後方で見守っているから。」
「うん……ありがとう、お父様。」
ノエルが小さく手を振ると、ロイスは名残惜しそうに少し立ち止まり、それから微笑んで去っていった。
一人きりになり、広い空間を見回すと、ノエルの胸の中にまた少し不安がよぎる。
どうしよう、さっきまではお父様とロイ兄さんが居たけど、1人になった瞬間急に緊張してきたかも……
そのとき、後ろから明るい声が聞こえた。
「ねぇねぇ、君。みんなあっちに集まってるよ?」
振り返ると、同じくらいの背丈の少年が親しげな笑顔を向けていた。
「えっと……そっか!教えてくれてありがとう!」
ノエルは慌てて答え、少年に近づく。
「僕の名前はリュカ・ディーゴリー。君は?」
「の、ノエル・クーレルです!よろしく。」
「ノエル!僕も今から行くところだったし一緒に行こっか?」
「う、うん!行く!」
その軽快なやりとりに、不安が少しずつ薄れていくのを感じた。ノエルは差し出されたリュカの手を取り、確かな期待とともに新しい1歩を踏み出した。
***
学園のホールは、ノエルの想像以上に広く、そして荘厳だった。高い天井には美しい装飾が施され、壁には歴代の校長や功績を残した生徒たちの肖像画が飾られており、どの顔も誇らしげだ。ノエルはその荘厳さに思わず息を呑んだ。
「ここが学園のメインホール……ものすごい大きいね。」
隣に立つリュカも同じように辺りを見回しながら感嘆の声を漏らしている。案内係に指示された通り、ズラっと並んだ座席に、2人は隣同士腰掛けた。流石王宮付属というだけあって、椅子の座り心地は極上のものだ。
「リュカ、凄くふかふかだね。」
「ははっ、確かに。ずっと座ってたら寝ちゃいそうかも。」
そんなこんなで2人が談笑をしていると、ジーっと言う大きな音と共に、正面に降りていた緞帳が開けていく。その壇上には、顎にたっぷりと髭をたくわえた、いかにも!という姿の学園長が立ち、ゆっくりと語り始めた。
「諸君、ようこそ私たちの学園へ。ここは知識と友情を育む場であると同時に、未来の礎を築くための場所でもあります。皆さん一人ひとりが、それぞれの目標に向かって力を尽くすことを期待しています。」
学園長の言葉が静かにホールに響き渡り、会場全体が一瞬の静寂に包まれた。重厚な雰囲気に飲まれそうになる中、ノエルはふと上方の席に目を向ける。そこにはロイスが控えめに腕を組みながら、優しい眼差しでこちらを見守っていた。その姿を見た瞬間、緊張していたノエルの心がほぐれる。
ふふっ、今目が合った。お父様、ちゃんと僕のこと見てくれてる。当たり前だけど、なんだかくすぐったいな。
ノエルの胸にじんわりと暖かさが広がる中、学園長の挨拶が終わり、壇上に各分野の教師たちが整然と並び始める。その一人ひとりが自己紹介を始めると、再びホールに少しざわめきが戻った。
「ノエル、あの先生怖そうじゃない?」
リュカが小声で囁き、ノエルも思わず「うんうん」と頷いた。だが、そのやりとりが可笑しかったのか、リュカは声を潜めて笑い出した。
式が終わり、ノエルとリュカは指定された教室へ移動する。配られた紙にはそれぞれがこれからを過ごす教室の場所が記されていた。ノエルはそれを見て、少しだけ緊張を覚える。
「えっと、次はさっき配られた紙に従って教室に向かってくださいって言ってたよね?」
「そうだね。僕たちもいこうか?」
リュカの明るい声にノエルも微笑み「うん!」と返しながら、式典の会場を後にした。
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春の澄んだ朝、クーレル家の広間には新しい空気が漂っていた。
ノエルは真新しい制服の襟元を整えながら鏡を見つめていた。初めて袖を通す学園の制服。胸が少しだけきゅっと締め付けられる感覚がする。期待と不安、両方がないまぜになった複雑な気持ちが渦巻いていた。
「大丈夫」と自分に言い聞かせるように深呼吸をした後、ノエルはふっと小さくため息をついた。その音が広間の静けさに溶け込むと、玄関から聞き覚えのある優しい声が聞こえてきた。
「ノエル、準備はできた?」
ルーベルトが柔らかい笑みを浮かべて立っていた。その姿を見て、少し緊張していたノエルの顔もほころぶ。
「うん、準備はばっちり!でもね、ルー兄さんも一緒に通えたら良かったのにーって……」
そう呟くと、ルーベルトの表情が一瞬だけ寂しげに曇り、次の瞬間にはいつもの穏やかな笑顔に戻っていた。
「ごめんね、ノエル?僕も心からそう思うよ。それに今日はお父様に代わって、1日当主代理を務めなきゃいけないしね。せめて今日くらい一緒に行きたかったよ。ねぇ、お父様?」
名指しで呼ばれたロイスは肩をびくりと揺らしながら、「次期当主としての資質をだな……それに父が出席せずにどうする!」とそれらしい理由を並べると、ローレンツは諦めたようで苦笑いをした。
「僕は行けないけれど、ノエル。君が楽しく過ごしてくれれば、それで十分だ。」
ノエルは頷きながらも、やはりローレンツとは一緒には行けない事実に少し口を尖らせた。
「帰ってきたら、沢山あったことお話するからね。」
「それは楽しみだ。お茶とノエルの好きなお菓子を用意して待ってるよ。」
そう言ってルーベルトはノエルの額にキスを落とすと、ロイスやルーベルトが既に乗り込んだ馬車の方へ向かい、ノエルの背中をとんと押した。そのままの体の流れに従い、ノエルは馬車へと足をかける。
振り返ると、いつものようにひらひらと手を振るルーベルトに心がじんわりと暖かくなる。緊張がふっと解けた気がする。やっぱりルー兄さんはすごい。
馬車にはすでにロイスとローレンツが乗っており、ノエルが乗り込むとロイスが優しい声で迎えた。
「緊張してるかい?」
「うん……少しだけ。」
ノエルの答えに、ロイスは微笑みながらノエルの頭を軽く撫でた。
「初めての場所は誰だって不安なものだ。きっとすぐ馴染めるよ。困ったことがあったらいつでも話しなさい。」
続けて隣に座るローレンツも口を開く。
「お父様の言う通りだ。何かあればすぐに俺たちを頼れよ。」
くしゃくしゃと頭を撫でる手の温もりと、その真っ直ぐな言葉に、ノエルの胸の中の不安が少しだけ和らいだ。
やがて学園の門が見えると、ノエルは窓から顔を出してその壮大な建物に目を輝かせた。
「わぁ……すっごく大きい!」
ローレンツはその様子を微笑ましく見ながら、ノエルの頭を軽く撫でた。
「ははっ、楽しみになってきたか?」
「うん!」
ノエルが元気よく答えると、ローレンツも満足そうに微笑んだ。馬車を降り、入学式典の集合場所へ向かう途中、ローレンツが足を止めた。
「俺は在校生側の準備があるからさ、ここからは2人で行きな。」
「……そっか、じゃあロイ兄さん、また後でね?」
おそらくノエルの耳がしょんぼりと垂れたように見えたのだろう。悶えるように顔を上に向け、耐えきれないとばかりにノエルの頭をいつものようにくしゃくしゃとかき混ぜた。
「……っぐ!絶対、終わったらすぐ迎えに行くからまってろ。」
ローレンツはそのまま振り返らずに歩き出した。
ロイ兄さん歩くのもの凄くはやはい…!もはやあれって歩いてる、のかな?
ローレンツから向けられる不器用な愛情に、クスッと笑みがこぼれた。
***
やがて集合場所に到着すると、ロイスがノエルの肩に手を置いて優しく言った。
「私も式の間は後方で見守っているから。」
「うん……ありがとう、お父様。」
ノエルが小さく手を振ると、ロイスは名残惜しそうに少し立ち止まり、それから微笑んで去っていった。
一人きりになり、広い空間を見回すと、ノエルの胸の中にまた少し不安がよぎる。
どうしよう、さっきまではお父様とロイ兄さんが居たけど、1人になった瞬間急に緊張してきたかも……
そのとき、後ろから明るい声が聞こえた。
「ねぇねぇ、君。みんなあっちに集まってるよ?」
振り返ると、同じくらいの背丈の少年が親しげな笑顔を向けていた。
「えっと……そっか!教えてくれてありがとう!」
ノエルは慌てて答え、少年に近づく。
「僕の名前はリュカ・ディーゴリー。君は?」
「の、ノエル・クーレルです!よろしく。」
「ノエル!僕も今から行くところだったし一緒に行こっか?」
「う、うん!行く!」
その軽快なやりとりに、不安が少しずつ薄れていくのを感じた。ノエルは差し出されたリュカの手を取り、確かな期待とともに新しい1歩を踏み出した。
***
学園のホールは、ノエルの想像以上に広く、そして荘厳だった。高い天井には美しい装飾が施され、壁には歴代の校長や功績を残した生徒たちの肖像画が飾られており、どの顔も誇らしげだ。ノエルはその荘厳さに思わず息を呑んだ。
「ここが学園のメインホール……ものすごい大きいね。」
隣に立つリュカも同じように辺りを見回しながら感嘆の声を漏らしている。案内係に指示された通り、ズラっと並んだ座席に、2人は隣同士腰掛けた。流石王宮付属というだけあって、椅子の座り心地は極上のものだ。
「リュカ、凄くふかふかだね。」
「ははっ、確かに。ずっと座ってたら寝ちゃいそうかも。」
そんなこんなで2人が談笑をしていると、ジーっと言う大きな音と共に、正面に降りていた緞帳が開けていく。その壇上には、顎にたっぷりと髭をたくわえた、いかにも!という姿の学園長が立ち、ゆっくりと語り始めた。
「諸君、ようこそ私たちの学園へ。ここは知識と友情を育む場であると同時に、未来の礎を築くための場所でもあります。皆さん一人ひとりが、それぞれの目標に向かって力を尽くすことを期待しています。」
学園長の言葉が静かにホールに響き渡り、会場全体が一瞬の静寂に包まれた。重厚な雰囲気に飲まれそうになる中、ノエルはふと上方の席に目を向ける。そこにはロイスが控えめに腕を組みながら、優しい眼差しでこちらを見守っていた。その姿を見た瞬間、緊張していたノエルの心がほぐれる。
ふふっ、今目が合った。お父様、ちゃんと僕のこと見てくれてる。当たり前だけど、なんだかくすぐったいな。
ノエルの胸にじんわりと暖かさが広がる中、学園長の挨拶が終わり、壇上に各分野の教師たちが整然と並び始める。その一人ひとりが自己紹介を始めると、再びホールに少しざわめきが戻った。
「ノエル、あの先生怖そうじゃない?」
リュカが小声で囁き、ノエルも思わず「うんうん」と頷いた。だが、そのやりとりが可笑しかったのか、リュカは声を潜めて笑い出した。
式が終わり、ノエルとリュカは指定された教室へ移動する。配られた紙にはそれぞれがこれからを過ごす教室の場所が記されていた。ノエルはそれを見て、少しだけ緊張を覚える。
「えっと、次はさっき配られた紙に従って教室に向かってくださいって言ってたよね?」
「そうだね。僕たちもいこうか?」
リュカの明るい声にノエルも微笑み「うん!」と返しながら、式典の会場を後にした。
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