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第2章 少年期

29.不安

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あれから約一週間後、約束通りにローレンツはノエルを散歩に連れて行った。

ノエルは街に行きたいと言い出したが、流石にローレンツもそれはダメだと首を縦に振らなかったためいつもの如く、温室を通りぐるっと屋敷を一周するコースに決定した。


ローレンツはノエルの歩幅に合わせてゆっくりと歩みを進めた。

「ロイ兄さんはお散歩好き?」

「あぁ、勿論。ノエルと一緒の散歩が1番楽しいよ。」

そう言ってローレンツはひょいとノエルを抱き上げ、頬に口付けた。

「僕もロイ兄さんとルー兄さんと一緒が1番だよー!」


緩やかに経過していく幸せな時間に自然と2人の頬も綻ぶ。


「………そろそろ昼食の時間だな。このままダイニングに行こうか?」

「うん!」

ローレンツは、ノエルを抱き抱えたままダイニングへと向かった。



✿✿✿



ダイニングに着くと、やはりロイスとルーベルトが既に着席していた。


するとルーベルトがノエルに向かい、無言で手招きをしてきた。するとノエルはローレンツから離れ、ルーベルトの膝に乗った。



何故こんな行動に出たのかと言うと、数日前のカードゲームが原因なのである。


ある日、ルーベルト、ローレンツ、ノエルの3人で暇つぶしの一環として、ババ抜きをしていた。

誰かしらが、単純にババ抜きをするだけではつまらないと言い出し、1番に上がった人が最下位に1つお願いをできる権利を得るという条件付きで行ったのだ。


その結果ルーベルトが最速で勝利し、案の定ノエルが最下位になったのだ。

そしてルーベルトは、ノエルに1週間膝の上に乗る、という謎命令を下したのだ。


何故かそれをロイスも寛容しているため、このおかしな状況が完成している。


「ねぇルー兄さんやっぱり膝やめにしない?食べにくいよ?」

「じゃあ僕が食べさてあげるから問題ないよ。」


そんな光景を毎日見せられるロイスとローレンツもたまったものでは無いだろう。


「なぁ兄さん、ご飯の時にやらなくてもいいんじゃないか?」

「敗者に口なし!1位で上がった人に対する意見は受け付けません!」

幼い子供同士のような会話に、ロイスは笑を零した。




ルーベルトとローレンツの言い合いがある程度収まったところでロイスがノエルに問いかけた。

「なぁノエル。そろそろ学園の入学式が近いが体調は大丈夫か?」

「うん!もちろんだよ!僕に毎日楽しみにしてるんだよ!」

「そうか、それならいいが。もし少しでも体調が優れない時はすぐに言うんだぞ?」

「はぁーい!」


そう言ってノエルは、目の前にあるサラダに手を付け始めた。


約1ヶ月後、ルーベルトが現在通っている学園への入学式が控えているのだ。

ノエルにとって初めて家族と離れて集団生活になる。ノエル自身は全く持って不安を抱いていない、むしろ楽しみで仕方がないが、過保護な兄達が最もノエルのことを心配している。


ノエルは、そんな兄達の心の内も露知らず、期待に胸を膨らませ、口いっぱいにサラダを頬張るのであった。
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