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第2章 少年期

3.贈り物

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今日は、なんだかものすごーく暇だ。

昨日は一日中、ルー兄さんの卒業パーティーの準備と称して、まるで着せ替え人形のように服を何度も着せ替えられたせいで、疲れ切ってしまった。

ルー兄さんのためのパーティーなんだから、僕が気合いを入れる必要なんてないのに、そう思ったけれど、それを口にしたら後で面倒なことになるのは明白だったので、黙って受け入れることにした。

「あぁ、ノエル、めっちゃ可愛い……でも、みんなに見せたくないっていう気持ちもあるな……どうしよう……」

「もう!これだけ時間をかけたんだから、僕はこれを着ていくからね!」

最終的に選ばれたのは、淡いアイボリーのシルクシャツに、胸元に小さな琥珀色のブローチが付いたエレガントなデザインのシャツで、襟元にはクリームホワイトの繊細なレースタイが結ばれている。

ボトムスは膝丈のペールグレーのパンツで、裾にはさりげなくゴールドの刺繍が施されている。上には、淡いエメラルドグリーンのベルベット素材のベストを合わせ、その縁取りには控えめな金糸の刺繍が施されている。

さらに、その上から肩にかかるショートケープがセットになっており、ケープは淡いパールホワイトで、縁には琥珀色の小さなボタンが並ぶデザイン。

ノエルのベリーブロンドのさらさらした髪は、ふわりとした質感がそのまま生かされており、光を受けてまるで柔らかい絹糸のように輝いている。その髪の色と衣装の優しいトーンが見事に調和し、琥珀色の瞳がさらに魅力的に際立って見える。


服が決まった後は、ピアノの稽古に励み、その後はテオに宛てる手紙を書いた。

ピアノの稽古では、先生に褒められた部分もあれば、難しいパッセージでつまずいてしまい、思わず小さくため息を漏らしてしまった。先生は優しく励ましてくれたけれど、ノエルの小さな手には少しだけ疲労が残った。

さらに、届いていたテオからの手紙に返事を書く時間も取った。返事を書く際には「テオよりもきれいな文字で書いてやろう!」と、琥珀色の瞳を真剣に輝かせていた。テオの達筆な文字を一生懸命読み解きながら、楽しそうに笑みを浮かべるノエルの姿は、周りの使用人たちを和ませていた。


***


昨日は一日中予定がぎっしり詰まっていたせいであっという間に過ぎていった。おかげで体も気分もクタクタだった。

今日はその反動なのか、やることがなくてぽーっと壁を眺めていた。ふと視線を移すと、壁に掛けられた時計が目に入る。短針はもうすぐ4を指し示すところだった。

「もうすぐ、ルー兄さん帰ってくるかな……?」

僕がこんなにルー兄さんの帰りを待ちわびているのには理由がある。昨日、服選びに時間がかかったお詫びに何か買ってきてくれると言っていたのだ。

何を買ってきてくれるのかは分からないけれど、ルー兄さんのセンスの良さは信じている。きっと僕が喜ぶようなものを選んでくれているはずだ。たとえば、美味しいプリンとか、ふわふわのケーキとか!

美味しい紅茶を用意しておかなきゃ!そう考えただけでお腹が鳴りそうになった。僕は生まれながらの甘党で甘いものに目がないのだ。お菓子……じゃなくて、ルー兄さん、早く帰ってこないかな。

そう思いながら、僕は窓の縁に頬杖をつき、外の景色を眺めていた。しばらくすると、遠くに見覚えのある白い馬車が見えた。

「ルー兄さんだ!」

僕は思わず声を上げると、嬉しさのあまり部屋を飛び出し、玄関へと急いで向かった。

玄関の扉が開く音がして、僕はルーベルトの胸に勢いよく飛び込んだ。

「ルー兄さん、おかえりなさい!」

そのまま彼の顔を上目遣いに覗き込むと、ルーベルトは片手で口を覆いながらかたまった。

「ねぇ、兄さん!おかえり!」

僕は返事を求めてじっと彼を見つめる。すると、ルーベルトは一瞬だけ息をついて、ようやく口を開いた。

「あぁ……ごめん、ただいまノエル。」

そう言いながら、ルーベルトは僕を軽々と右腕で抱き上げた。

「ノエルくんのお目当てはこれかな?」

ルーベルトは左手に持っていた包みを軽く掲げてみせた。

「うわぁ!」

僕は目をキラキラ輝かせながら大きく頷いた。
包みのサイズを見て、思わず胸が高鳴る。……これは、まさかホールケーキ!?

ノエルはさらにご機嫌になり、「早く早く!」とせがむようにルーベルトのジャケットの裾を引っ張った。

「ははっ、畏まりましたよ、ノエル様。」

ルーベルトは少しおどけた口調で、従者のように振る舞いながら僕を抱えたまま部屋へ向かった。

自室に戻ると、テーブルにはすでにティーセットが用意されていた。

「さすがノエル、準備万端だな。」

「えへへ……楽しみに待ってたんだ!早く、早く食べようよ!」

ルーベルトが包みを丁寧に開けると、そこには美しく飾られたホールケーキが現れた。真っ白な生クリームに、たっぷりのベリーが飾られている。

「わぁ……!」

僕は思わず息を呑んだ。そのケーキは、まるで芸術作品のように美しかった。ルーベルトはケーキを取り分けて僕に差し出した。

「1口目は君からどうぞ。」

僕は嬉しさで顔を輝かせながら、フォークを手に取った。そして一口食べた瞬間、口いっぱいに広がる甘さとベリーの酸味に感動して、思わず笑顔がこぼれた。

「すごーく美味しい!ありがとう、ルー兄さん!」

そんな僕の顔を見て、ルーベルトは満足そうに微笑んだ。

「ノエルが喜んでくれて良かったよ。」

こうして、昨日の忙しさとは打って変わった穏やかな午後が過ぎていった。僕の頭の中には、甘いケーキと、優しいルーベルトの笑顔がしっかりと刻まれていた。

「やっぱりケーキは最高だぁ~」

僕は小さな声でそう呟きながら、手に持っていた紅茶を机に置き、二切れ目のケーキに手を伸ばした。







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