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第1章 幼年期
19.約束
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ノエルはテオと一日中屋敷の中で遊びの限りを尽くした。
まずはブランコで飽きるまで遊び倒し、そのまま近くにある馬小屋でテオの馬を見せて貰った。もうテオは乗馬が出来るらしい、すごい。僕も今度乗馬をしたいと、お父様にお願いしてみようと思う。
その後は屋敷に入り、ものすごく長い廊下を歩いた。歩いた先には沢山のお菓子が用意されたテーブルがあり、お茶を楽しんだ。夜ご飯が食べられなくなるから、3つ目のクッキーを食べるのは止められちゃった。
その次は図書室へ行き、テオおすすめの絵本を読んでもらった。北の国の勇者一行が魔王を滅ぼし、現在の国に平和をもたらしたという伝説を元に作られた、ずっと昔からある本だ。
ノエルはこの本を読んで、「僕ね、大きくなったらこのゆうしゃしゃんみたいなすごい剣使うんだ!」と、目をきらきらさせて語った。
「いや、ノエルには剣むいてないんじゃ…?」
テオがそう小声でツッコミを入れた。
「僕だって剣ぐらいできるよ!見せてあげる!」
そう言ってノエルは剣を持つ真似をして手で空を切ったが、バランスを崩してよろけてしまった。
「ははっ、やっぱりノエルに剣は向いてないかも。」
テオは眉を下げながら苦笑するも、ノエルはそれが不服だったようで「そんなことないもん!」とぷんすか怒りながら、ほっぺたをぷくりと膨らませた。
「ノエルってやっぱり可愛いよね。なんか、小動物みたいな感じ。」
そう言って、テオはノエルの頭を撫でた。
頭を撫でられるのが好きなノエルは、先程のことはもう許したようで、にんまりと笑っている。そんな単純なところも可愛らしい。
すると突然、テオが零した。
「……ノエル、欲しいなぁ。」
「んー?今テオなんて?もっかい!」
「ふふっ、なんでもないよ。そんなことより、次は庭の花壇の方を探検しようか!」
「うん、する!」
そう言ってテオはノエルに手を繋ぎ2人並んで、庭へ向かって歩き出した。
***
外を歩き回って疲れたので、部屋に戻り2人はトランプゲームをすることにした。ノエルは嘘をつくのがめっぽう下手くそで、何度勝負に挑んでも負けてしまった。勝てないのがが悔しくて拗ねてしまったが、テオにクッキーで餌付けされ、すっかり機嫌は治ってしまう。
「ぼくね、クッキー大好きなの。」
「そうなんだ。それなら幾らでもノエルにあげるよ。ほら、あーんして?」
テオは自分があげたクッキーをはむはむと一生懸命に頬張るノエルを見てうっそりと笑みを浮かべた。
「ふふっ………、ノエルは本当に可愛いなぁ。」
ノエルはクッキーに一生懸命になっているので、返事をする余地は無い。手渡されたクッキーを食べ終わり十分に満足すると、暖かな陽気にあてられてぽかぽかと体が暖かくなってくる。温かさにつられ、思わず小さなあくびをした。
「ノエル、眠たいの?」
「うん、眠たい……」
「そうか、じゃあちょっとお昼寝しようか?」
***
そんな風に、ルーベルトとローレンツはイリーナと、ノエルはテオと、それぞれに遊ばれ、遊び倒し、ノエル達が屋敷へ帰る日までの数日をランドルフの屋敷で過ごした。
「ノエル、僕ノエルと離れたくないよ。」
テオはノエルを後ろからぎゅっと抱きしめ、肩口に顎を預け、耳元で囁いた。
「僕ももっとテオと遊びたい、けどもう帰らなきゃだから……」
「じゃあ絶対また会いに来て。いや、僕が会いに行く。絶対にノエルに会いに行く。」
「ほんと?すっごく嬉しい!僕もね、またテオに会いに来る!テオも会いに来て。」
ノエルはテオの腕の中でくるりと回り、テオのお腹に抱きつくと、上を見上げ、にへらと笑った。
「勿論。もう少し大きくなって、絶対にノエルを迎えに行く。」
「迎え?迎えにに来なくても僕が行くよ!うん、でもむかえに来てくれるのも嬉しい!」
「ノエル、その時がきたらずーっと一緒だから、覚悟しておいてね。」
「ずっと一緒!僕もうれしい!」
ノエルはこの先もずっとテオ遊べる約束を取り付けたことに歓喜し、きゃっきゃと楽しげな声をあげている。
「ふふっ………、本当にノエル大好き。もっと早くノエルに会いたかったよ。」
テオは穏やかに微笑みながらノエルをじっと見つめていた。ノエルはその視線の意味に気づかないまま、ただ嬉しそうにはしゃぎ続けている。
そして、ついにノエル達はランドルフ達の元を発つ時間がやって来た。
「じゃあな、兄さん。」
「あぁ、そっちも元気でな。」
皆が皆、それぞれに軽く挨拶を交わすと馬車に乗り込んだ。全員が乗り込むと、ゆっくりと馬車の車輪が滑り出す。ノエルは進み出した馬車の窓から顔を出し、「テオばいばーい!」と、彼らの姿が見えなくなるまでぶんぶんと思い切り手を振り続けた。
ノエルは元気一杯に手を振っている一方、向かいに座るルーベルトとローレンツは、こちらに来た数日前より明らかに元気が削がれて、目元に疲れが滲んでいた。
「僕はしばらくはこっちに来なくて大丈夫かな……」
「俺も賛成、あと10年は勘弁したいね。」
「にーに?」
ノエルが2人に話しかけると、ルーベルトとローレンツによって2人の間にぽすんと座りこまされ、両側からぎゅーっと抱きしめられた。2人曰く「イリーナに付き合ったことによる極度の疲労とノエル充電不足」と言ったが、ノエルは頭に疑問符を浮かべ、大人しく抱きしめられるのを受け入れるだけだった。
まずはブランコで飽きるまで遊び倒し、そのまま近くにある馬小屋でテオの馬を見せて貰った。もうテオは乗馬が出来るらしい、すごい。僕も今度乗馬をしたいと、お父様にお願いしてみようと思う。
その後は屋敷に入り、ものすごく長い廊下を歩いた。歩いた先には沢山のお菓子が用意されたテーブルがあり、お茶を楽しんだ。夜ご飯が食べられなくなるから、3つ目のクッキーを食べるのは止められちゃった。
その次は図書室へ行き、テオおすすめの絵本を読んでもらった。北の国の勇者一行が魔王を滅ぼし、現在の国に平和をもたらしたという伝説を元に作られた、ずっと昔からある本だ。
ノエルはこの本を読んで、「僕ね、大きくなったらこのゆうしゃしゃんみたいなすごい剣使うんだ!」と、目をきらきらさせて語った。
「いや、ノエルには剣むいてないんじゃ…?」
テオがそう小声でツッコミを入れた。
「僕だって剣ぐらいできるよ!見せてあげる!」
そう言ってノエルは剣を持つ真似をして手で空を切ったが、バランスを崩してよろけてしまった。
「ははっ、やっぱりノエルに剣は向いてないかも。」
テオは眉を下げながら苦笑するも、ノエルはそれが不服だったようで「そんなことないもん!」とぷんすか怒りながら、ほっぺたをぷくりと膨らませた。
「ノエルってやっぱり可愛いよね。なんか、小動物みたいな感じ。」
そう言って、テオはノエルの頭を撫でた。
頭を撫でられるのが好きなノエルは、先程のことはもう許したようで、にんまりと笑っている。そんな単純なところも可愛らしい。
すると突然、テオが零した。
「……ノエル、欲しいなぁ。」
「んー?今テオなんて?もっかい!」
「ふふっ、なんでもないよ。そんなことより、次は庭の花壇の方を探検しようか!」
「うん、する!」
そう言ってテオはノエルに手を繋ぎ2人並んで、庭へ向かって歩き出した。
***
外を歩き回って疲れたので、部屋に戻り2人はトランプゲームをすることにした。ノエルは嘘をつくのがめっぽう下手くそで、何度勝負に挑んでも負けてしまった。勝てないのがが悔しくて拗ねてしまったが、テオにクッキーで餌付けされ、すっかり機嫌は治ってしまう。
「ぼくね、クッキー大好きなの。」
「そうなんだ。それなら幾らでもノエルにあげるよ。ほら、あーんして?」
テオは自分があげたクッキーをはむはむと一生懸命に頬張るノエルを見てうっそりと笑みを浮かべた。
「ふふっ………、ノエルは本当に可愛いなぁ。」
ノエルはクッキーに一生懸命になっているので、返事をする余地は無い。手渡されたクッキーを食べ終わり十分に満足すると、暖かな陽気にあてられてぽかぽかと体が暖かくなってくる。温かさにつられ、思わず小さなあくびをした。
「ノエル、眠たいの?」
「うん、眠たい……」
「そうか、じゃあちょっとお昼寝しようか?」
***
そんな風に、ルーベルトとローレンツはイリーナと、ノエルはテオと、それぞれに遊ばれ、遊び倒し、ノエル達が屋敷へ帰る日までの数日をランドルフの屋敷で過ごした。
「ノエル、僕ノエルと離れたくないよ。」
テオはノエルを後ろからぎゅっと抱きしめ、肩口に顎を預け、耳元で囁いた。
「僕ももっとテオと遊びたい、けどもう帰らなきゃだから……」
「じゃあ絶対また会いに来て。いや、僕が会いに行く。絶対にノエルに会いに行く。」
「ほんと?すっごく嬉しい!僕もね、またテオに会いに来る!テオも会いに来て。」
ノエルはテオの腕の中でくるりと回り、テオのお腹に抱きつくと、上を見上げ、にへらと笑った。
「勿論。もう少し大きくなって、絶対にノエルを迎えに行く。」
「迎え?迎えにに来なくても僕が行くよ!うん、でもむかえに来てくれるのも嬉しい!」
「ノエル、その時がきたらずーっと一緒だから、覚悟しておいてね。」
「ずっと一緒!僕もうれしい!」
ノエルはこの先もずっとテオ遊べる約束を取り付けたことに歓喜し、きゃっきゃと楽しげな声をあげている。
「ふふっ………、本当にノエル大好き。もっと早くノエルに会いたかったよ。」
テオは穏やかに微笑みながらノエルをじっと見つめていた。ノエルはその視線の意味に気づかないまま、ただ嬉しそうにはしゃぎ続けている。
そして、ついにノエル達はランドルフ達の元を発つ時間がやって来た。
「じゃあな、兄さん。」
「あぁ、そっちも元気でな。」
皆が皆、それぞれに軽く挨拶を交わすと馬車に乗り込んだ。全員が乗り込むと、ゆっくりと馬車の車輪が滑り出す。ノエルは進み出した馬車の窓から顔を出し、「テオばいばーい!」と、彼らの姿が見えなくなるまでぶんぶんと思い切り手を振り続けた。
ノエルは元気一杯に手を振っている一方、向かいに座るルーベルトとローレンツは、こちらに来た数日前より明らかに元気が削がれて、目元に疲れが滲んでいた。
「僕はしばらくはこっちに来なくて大丈夫かな……」
「俺も賛成、あと10年は勘弁したいね。」
「にーに?」
ノエルが2人に話しかけると、ルーベルトとローレンツによって2人の間にぽすんと座りこまされ、両側からぎゅーっと抱きしめられた。2人曰く「イリーナに付き合ったことによる極度の疲労とノエル充電不足」と言ったが、ノエルは頭に疑問符を浮かべ、大人しく抱きしめられるのを受け入れるだけだった。
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