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第1章 幼年期

12.準備

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「わぁ……お庭で小鳥さんが鳴いてる。」

春も終わり頃で、あたたかな太陽の光が眩しく、とても天気の良い日だった。


コンコンコン。


「ノエル、おはよう。僕だよ。」

ノエルはその声を聞き、布団を降りておぼつかない足取りで扉へと向かった。


ノエルは扉をそっと半分だけ開けた。

「る、るーにぃにまだはやいよぉ…。僕まだおきたばっかりだよ?」

ノエルは恥ずかしそうにもじもじと体をくねらせ、頬を赤らめると、両手で顔を覆う。

「うわぁ………寝起きノエル最高じゃんか……」

まだ眠気と戦っている最中なノエルは、目をしぱしぱとゆっくり瞬かせ、目を擦っている。頭のてっぺんにぴょんと立った寝癖を一撫でしてみるが、再度ぴょこりと飛び出してくる。

「るーにぃに、なんていったの?」

そう言ってノエルはこてんと首を傾けた。

「…っぐ!!………あぁ、ノエルが凄く可愛いって話。それよりノエル、早く来すぎてごめんね?ノエルに会えるのが楽しみで仕方なかったんだよ。まだ時間もあるし、僕がノエルの準備手伝ってあげるね。」

ノエルは嬉しそうに口元を緩め、「やったぁ」と、嬉しそうに零した。

あぁ、朝からこんなノエルが見られて僕は幸せ者だな、と心底思った。前々から知ってはいたが、ノエルは朝がとてつもなく弱い。

まずは洗顔。ぬるま湯でていねいにノエルの顔を洗い流す。そしてもちもちすべすべの肌を柔らかいタオルで拭いてやる。

そうすると、タオルから顔が出る度に「ぷはぁ」とか、「うぅ…」とか可愛い声を出されるのですごく困る。

そんな可愛いノエル柔らかいの頬にちゅっとキスを落とした。するとまた、にまっと口元を緩ませて僕に笑いかけてくる。

そしてぴょこんと跳ねた髪を整えてやる。櫛で、ノエルのサラサラなベリーブロンドの髪を梳く。ここで初めての発見なのだが、ノエルは耳が弱いらしい。

「る、るぅにぃ…に、僕、お耳こしょぐったいの…っふふっ……っやめてぇ、……っふ、ふふっ、ぁはは!」

正直言って、可愛いのオーバーキルだ。
僕は手に持っていた櫛をその場にぼとりと落とし、しゃがみこんだ。

末っ子が、かっ、可愛すぎる!!!!!!!!!

「ノエルごめんな、ちょっと僕急用を思い出しちゃって……あとはエマに頼むけどいいかな?」

「おしゃんぽは…?」

「あぁ、それなら後で迎えに来るから心配しないで。15、いや、30分後にまた迎えに来るからちゃんと準備しておいてくれるかい?」

「うん、分かったぁ。絶対きてね?」

そう言ってルーベルトはエマにノエルの準備を頼み、自分の部屋へ颯爽と去っていった。

その後ルーベルトはノエルのあまりの可愛さに、自室でのたうち回り、悶え苦しんだ。が、あのルーベルトがノエルとの約束に遅れる訳も無く、無事に約束の時間には間に合うように精神統一し、心を落ち着けた。


本日の教訓、可愛いも浴びすぎは良くない。
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