ドラゴンテイマー

黒猫優

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第ニ章ドラゴンの里

〜未来のために〜

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ハルトは、私が泣き止んだのを見計らって話を続けた。

「キリア、よく聞け」

「何…?」

「この夢は…バクって言う魔物の見せている夢だ。
覚えてるか?授業で習ったろ?」

「確か…心地良い夢を見せて夢に引きずり込んで、体から離れた魂を食らう魔物……だったよね…あれ?じゃあ何で…」

「ハルトは? いや…何でハルト以外いないの?」

「わからない…俺が死んだのと関係があるのかとも考えたが憶測の域を出なかった…
だが確かなのは、俺はバクの一部であるということ。」
そしてこう続けた。
 「ここまで長く話しているが、もしかしたら俺と話している事自体がキリアにとって良くないことなのかもしれない。」

   ああ、そういうことか…

「ねえ…ハルト…こんな話知ってる?」

それはこの世界の成り立ちの神話

『世界が始まるずっと前、ドラゴンや鳥、動物たちと共に神は暮らしていた

 だがある時、神は気まぐれにご自身を模した3種を作り上げた。

一種目は陸に住む【人間】
二種目は海に住む【魚人マーマン
そして、三種目は魔に巣食う【魔族】

だがその三種は、醜く争いを始めた

 それぞれが住みよい場所を奪い合い、挙句の果てには殺し合いまでに発展した。

それではいけないと、一番劣勢だった人族を陸と決め
 魚人マーマンにエラを付け、海でしか生きられないようにした
 一番非道な行いをした魔族は魂だけの存在となった。』

「それでも、争いを辞めなかったから…生まれ変わる様になったんだって…死んだら他の種に」

「ねえ……ハルトはさ…バクそのものなんじゃないの?」 

「そっかー…そんな神話信じてなんか無かったんだけどな……」

 そう言って頭をかく彼の姿は幼かった時を連想させて…

「…」

「じゃあ、帰らなくちゃな…
ずっとここにいればいるほどキリアは帰りづらくなっちまう」

「…そうね…」

「大好き…きっとまた会えるって信じてるから…」

ギュッと抱きつくとそっと唇をハルトの頬に当てた

「ちょ……お前な」

「あっ、もちろん家族としてだからね」

「そんなことわかってる」

お互いの最後の照れ隠し、それはとても微笑ましいものであり切ないものだった。

「生きろよ、キリア。人生たのしめよ!」

「うん!」

そして、世界が夢が崩れていった。
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