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宝の地図で借金返すって本気か!?
6話
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移動開始3日目の昼頃だった。
「お、あれじゃないか?」
リリーが指さす方を見ると俺たちの暮らすクランケットの町と同じくらいの町が見える。
「あれがアインツの町ね。ようやく辿りついたわ。」
馬車の事故のせいもあってダイブ旅程に遅れが出てしまったものの、俺たちは何とかアインツの町に3日をかけて辿り着くことが出来たのである。まずは、
「まずは宿でゆっくりしよう。後のことはそこから考えよう。」
俺の提案に皆が賛成してくれた。
ここ数日野宿続きでろくに眠れていなかったので、俺は一向に眠れていなかった。ここで眠らせてもらおう。やっと休める。
そんな願望が簡単に実現するほど現実は甘くはなかった。町の門が見えた。そこには当然門番がいるのだが、なんでだろう。衛生用マスクをしている。嫌な予感しかしない。
ガブが門番の人に近づいていく。
「あのお、旅の者なんですけれど。」
「あぁ、いらっしゃい。ここはいい町だよ。普段はね。」
是非ともその普段に来たかったものだ。マスクをしている時点で察しはつくが一応理由を聞くことにしよう。
「あの、なにか病でも流行っているんですか?」
「あぁ。今この町で感染症が流行っていてね。それは凄い感染力なんだよ。町中がやられちまってて…」
どうやら、その後の門番さんの話によると、この感染症には薬草も毒消し草も通用しなかったらしい。新種のウィルスなのだろうか。
不思議そうな顔をしている俺たちにリリーが解説を入れてくれた。
「違うんだよリーダー。薬草は体力と傷の回復に効くものだし、毒消し草は毒状態を治すことにしか使えないんだ。」
相変わらず色々詳しいリリー。俺は続けて質問してみる。
「じゃあ、ヒールは効かないのか?さすがに各町に一人くらいヒーラーがいるものだろう。それと、これは一体何なんだ?」
「ヒールは普通は効かないな。基本的にヒールの効果は人に対しては薬草と同じで、悪魔族にだけダメージになるってものだしな。さすがに私もよくは分からないが、これはインフルエンザとかそういったタイプのものな気がする。」
インフルエンザってこの世界にもあるんかい。というよりも、まだ夏だというのにインフルエンザってどうなっているんだ。それに町の人を全滅させるとはなんという感染力なのだろう。
とりあえず俺たちは門番さんにステータス帳を見せて、町に入場することを許してもらえたのだった。
とりあえず宿に入り荷物を置く俺たち。ここ数日歩いていた疲労のせいもあって、数日はこの町でゆっくりしていたかったのだが、感染症の蔓延する町に長居するわけにもいかない。すぐに準備をしなくてはならない。憂鬱だ。
「ちょっと、私治してきます。」
ガブが訳のわからないことを言い始める。こいつはリリーの話を聞いてなかったのだろうか。
「どうしたガブ。とうとう言語もろくに分からないくらいに頭がおかしくなってしまったのか。」
「違いますよ!ミツルさん失礼ですよ!私のこと馬鹿だと思ってるでしょ!」
やっと気づいたのか。俺は無言でいるとガブが続ける。
「私なら感染症を治せる気がするんです。それにゆっくりしたいじゃないですか。」
根拠の無さが凄いな。というより、前までは俺がゆっくりするためにって発言をしていたのが、最近では自分がゆっくりするためにってなってきているな。もうおまえ堕天するんじゃないのか?
ガブは意気揚々と町へと繰り出していった。俺たちはあのあほが心配だったので付いていってみる。まあ、興味本位という理由ももちろんあるのだが。
ガブが町の民家をノックすると、いかにも感染症にかかっていそうな方が中から出てきた。
「私はヒーラーのガブリエルと申します。実は私は天使なので皆さんの感染症を治せるのです。家に上がらせていただいてもいいですか?」
「怪しい宗教団体の方ですか。うちはそういうの遠慮しているので。」
まあ、そうなるわな。自分で天使って言うな。俺たちがサポートの為に駆け寄ると、家の人はもう怯えてらっしゃる。これはあかん。ただの強盗の絵面だ。
俺は慌ててステータス帳を見せて、安心させる。
「こいつの仲間のタナカミツルと申します。この子が迷惑をかけてしまったようで、申し訳ありません。ただ、感染症にかかっている皆さんの力になりたいという一心でして。ダメ元で治療だけさせて見てもらえますか?代金などは取らないので。」
そう言うと、家の中に入れてもらえた。
「それでは動かないでくださいね。」
ガブがヒールをかける。どうせ聞かないだろうとたかを括っていた俺たちは椅子でくつろいで談笑をしていた。
「終わりましたよ。どうですか。」
はいはい。効果はなかったのだろう。早く宿に…
「凄いわ!まだ少しけだるいけど、咳も鼻水も止まったわ!頭も痛くない!」
!?!?!?!?!?
俺はもちろんだが、とにかくリリーが驚いていた。
「馬鹿な!そんなわけない!感染症はヒールで治らないから世界中で問題になっているというのに。」
ガブが天使だからという理由でこれは説明がつくのだろうか。というか、もしそうなのだとしたら天界の力を簡単に民間の方に使ってしまって怒られないのだろうか。
「とりあえず、感染症はほぼ治癒していますので、今は病み上がりの状態ですので安静にしていてください。」
「かしこまりました!ありがとうございます!天使様!」
女性は膝間づきガブを讃えている。
あかん、怪しいカルト教団の誕生みたいになってしまっている。これは収集のつかないことになりそうだ。もう嫌だ。宿にいればよかった。そう後悔している俺であった。
「お、あれじゃないか?」
リリーが指さす方を見ると俺たちの暮らすクランケットの町と同じくらいの町が見える。
「あれがアインツの町ね。ようやく辿りついたわ。」
馬車の事故のせいもあってダイブ旅程に遅れが出てしまったものの、俺たちは何とかアインツの町に3日をかけて辿り着くことが出来たのである。まずは、
「まずは宿でゆっくりしよう。後のことはそこから考えよう。」
俺の提案に皆が賛成してくれた。
ここ数日野宿続きでろくに眠れていなかったので、俺は一向に眠れていなかった。ここで眠らせてもらおう。やっと休める。
そんな願望が簡単に実現するほど現実は甘くはなかった。町の門が見えた。そこには当然門番がいるのだが、なんでだろう。衛生用マスクをしている。嫌な予感しかしない。
ガブが門番の人に近づいていく。
「あのお、旅の者なんですけれど。」
「あぁ、いらっしゃい。ここはいい町だよ。普段はね。」
是非ともその普段に来たかったものだ。マスクをしている時点で察しはつくが一応理由を聞くことにしよう。
「あの、なにか病でも流行っているんですか?」
「あぁ。今この町で感染症が流行っていてね。それは凄い感染力なんだよ。町中がやられちまってて…」
どうやら、その後の門番さんの話によると、この感染症には薬草も毒消し草も通用しなかったらしい。新種のウィルスなのだろうか。
不思議そうな顔をしている俺たちにリリーが解説を入れてくれた。
「違うんだよリーダー。薬草は体力と傷の回復に効くものだし、毒消し草は毒状態を治すことにしか使えないんだ。」
相変わらず色々詳しいリリー。俺は続けて質問してみる。
「じゃあ、ヒールは効かないのか?さすがに各町に一人くらいヒーラーがいるものだろう。それと、これは一体何なんだ?」
「ヒールは普通は効かないな。基本的にヒールの効果は人に対しては薬草と同じで、悪魔族にだけダメージになるってものだしな。さすがに私もよくは分からないが、これはインフルエンザとかそういったタイプのものな気がする。」
インフルエンザってこの世界にもあるんかい。というよりも、まだ夏だというのにインフルエンザってどうなっているんだ。それに町の人を全滅させるとはなんという感染力なのだろう。
とりあえず俺たちは門番さんにステータス帳を見せて、町に入場することを許してもらえたのだった。
とりあえず宿に入り荷物を置く俺たち。ここ数日歩いていた疲労のせいもあって、数日はこの町でゆっくりしていたかったのだが、感染症の蔓延する町に長居するわけにもいかない。すぐに準備をしなくてはならない。憂鬱だ。
「ちょっと、私治してきます。」
ガブが訳のわからないことを言い始める。こいつはリリーの話を聞いてなかったのだろうか。
「どうしたガブ。とうとう言語もろくに分からないくらいに頭がおかしくなってしまったのか。」
「違いますよ!ミツルさん失礼ですよ!私のこと馬鹿だと思ってるでしょ!」
やっと気づいたのか。俺は無言でいるとガブが続ける。
「私なら感染症を治せる気がするんです。それにゆっくりしたいじゃないですか。」
根拠の無さが凄いな。というより、前までは俺がゆっくりするためにって発言をしていたのが、最近では自分がゆっくりするためにってなってきているな。もうおまえ堕天するんじゃないのか?
ガブは意気揚々と町へと繰り出していった。俺たちはあのあほが心配だったので付いていってみる。まあ、興味本位という理由ももちろんあるのだが。
ガブが町の民家をノックすると、いかにも感染症にかかっていそうな方が中から出てきた。
「私はヒーラーのガブリエルと申します。実は私は天使なので皆さんの感染症を治せるのです。家に上がらせていただいてもいいですか?」
「怪しい宗教団体の方ですか。うちはそういうの遠慮しているので。」
まあ、そうなるわな。自分で天使って言うな。俺たちがサポートの為に駆け寄ると、家の人はもう怯えてらっしゃる。これはあかん。ただの強盗の絵面だ。
俺は慌ててステータス帳を見せて、安心させる。
「こいつの仲間のタナカミツルと申します。この子が迷惑をかけてしまったようで、申し訳ありません。ただ、感染症にかかっている皆さんの力になりたいという一心でして。ダメ元で治療だけさせて見てもらえますか?代金などは取らないので。」
そう言うと、家の中に入れてもらえた。
「それでは動かないでくださいね。」
ガブがヒールをかける。どうせ聞かないだろうとたかを括っていた俺たちは椅子でくつろいで談笑をしていた。
「終わりましたよ。どうですか。」
はいはい。効果はなかったのだろう。早く宿に…
「凄いわ!まだ少しけだるいけど、咳も鼻水も止まったわ!頭も痛くない!」
!?!?!?!?!?
俺はもちろんだが、とにかくリリーが驚いていた。
「馬鹿な!そんなわけない!感染症はヒールで治らないから世界中で問題になっているというのに。」
ガブが天使だからという理由でこれは説明がつくのだろうか。というか、もしそうなのだとしたら天界の力を簡単に民間の方に使ってしまって怒られないのだろうか。
「とりあえず、感染症はほぼ治癒していますので、今は病み上がりの状態ですので安静にしていてください。」
「かしこまりました!ありがとうございます!天使様!」
女性は膝間づきガブを讃えている。
あかん、怪しいカルト教団の誕生みたいになってしまっている。これは収集のつかないことになりそうだ。もう嫌だ。宿にいればよかった。そう後悔している俺であった。
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