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誘いの電話
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甘々な時間を過ごしていると、突然私のスマホが振動を告げた。メッセージではなく着信のようだ。
テーブルに置いていたからその振動音は要さんにも聞こえてしまい、スルーすることなどできなかった。
仕事用のスマホではなかったから、今から仕事に駆り出されることではなさそうだ。
とりあえず誰からの連絡が確かめておこう。
氷室たちなら悪いが、後で連絡したらいいだろう。
「ちょっと失礼しますね」
要さんに断りを入れてスマホを確認すると、画面表示には周平さんの名前。
流石にスルーはできないな。
ーもしもし、冬貴です。
ー寛いでいる時間に悪いな
ーいえ、何かありましたか?
ー敬介が久代くんと呑みたいと言って聞かなくてな、美味しいマンゴーワインもあるから少しだけ呑まないか?
ーえっ? 浅香さんが要さんと?
私の言葉にソファーに座っていた要さんがすぐに反応し、こちらを見ているのがわかる。
驚きのあまりつい声を上げてしまって失敗したな。
流石にこれは勝手に断れない。
ーあの、要さんに聞いてみますね。しばらくお待ちください。
周平さんに一旦断りを入れて、要さんに確認したが、案の定というか当然とでもいうべきか、要さんの反応は大喜びだった。
「敬介さんとまたおしゃべりしたいと思っていたんです! 誘っていただけて嬉しいです!」
こんなにも喜んでいる要さんの気持ちを無下にはできないな。
明日も休みだし、ここから数時間くらいどうってことはない。
ーもしもし、周平さん。
ーははっ。大喜びなのがこちらまで聞こえていたよ。
ーええ、浅香さんにお誘いを受けたのが嬉しかったようです。
ーこちらで敬介も喜んでいるよ。じゃあ、特別ルームを借りておくから三十分後に。ああ、手ぶらでいいからな。飲み物も食べ物も全部用意してあるから。
ーわかりました。ありがとうございます。
二人の時間が減ってしまうのは少し寂しいところだが、浅香さんがそんなにも要さんを気に入ってくれたのなら、いい友人ができたと喜ぶべきだろう。
それに二人の時間はこれから先たっぷりとある。なんせ私たちは一生を共にする相手なのだから。
電話を切ると、要さんが私に駆け寄ってきた。
「三十分後に特別ルームで呑む事になりましたから準備しましょうか」
「はい。私、こうやって夜にお友だちと約束して出かけるのは初めてです」
そうか、だから誘われてあんなに喜んだんだな。
「それじゃあ着替えましょうか」
一日休んでいたからまだ要さんはパジャマのまま。
せっかくだから今日は先日周平さんにいただいた服にしよう。
要さんとのリンクコーデ服。
私の服を見て、要さんはそれに気づくだろうか。それも楽しみだな。
一緒にクローゼットに向かい、要さんの服を選んで渡す。
その横で私もリンクコーデ服に着替えた。
着替えながらちらっと要さんの着替えに目をやってしまう。
私がつけた花びらがまだ綺麗に咲いているのが見えて思わずにやけてしまう。
あの花びらを見るだけで、要さんが私のものだと思えて嬉しくなる。
「冬貴さん……どうですか?」
「要さん、素敵です! とてもよく似合いますよ」
「冬貴さんも……あれ?」
んっ? 気づいたか?
「どうかしましたか?」
「なんだか、私の服と印象が似ている気がして……」
「さすがですね。これは周平さんからいただいたんです。要さんのその服とのリンクコーデ服なんですよ」
「リンクコーデ?」
「全くお揃いではなく、同じ素材や配色など部分的に合わせてさりげなくお揃いに見せる服だそうです。これなら外を歩いても気にならないでしょう?」
「二人で、外で……」
そうポツリと呟くと要さんの顔がみるみるうちに赤くなってくる。
「冬貴さんと一緒に歩くのっていいですね」
「要さん……」
恥ずかしいと言われなくてよかった。
早く全てを終わらせて、要さんと堂々と外に出られるようになりたい。
私はそんな気持ちでいっぱいになっていた。
あっという間に待ち合わせの時間になり、二人で特別ルームに向かった。
使用の許可をコンシェルジュに伝えているため、すでに部屋には私たちの指紋が鍵に設定されている。
扉に指を当てるとすぐにカチャリとロックが解除される音が聞こえた。
「さぁ、入りましょうか」
「は、はい」
少し緊張している様子の要さんの手を取って中に入ると、甘い匂いが漂ってくる。
「こんばんは」
「おお、来たか」
「要くん、待ってたよ! こっち、きて!」
周平さんの隣にいた浅香さんが要さんの元に駆け寄ってきたと思ったら、要さんの手を取ってさっさと連れて行ってしまう。
私はポツンとその場に残されたまま立ち尽くすしかなかった。
「冬貴、こっちに座れ」
「はい」
要さんの様子が気になりつつも、私は周平さんが座るソファーの向かいに腰を下ろした。
テーブルに置いていたからその振動音は要さんにも聞こえてしまい、スルーすることなどできなかった。
仕事用のスマホではなかったから、今から仕事に駆り出されることではなさそうだ。
とりあえず誰からの連絡が確かめておこう。
氷室たちなら悪いが、後で連絡したらいいだろう。
「ちょっと失礼しますね」
要さんに断りを入れてスマホを確認すると、画面表示には周平さんの名前。
流石にスルーはできないな。
ーもしもし、冬貴です。
ー寛いでいる時間に悪いな
ーいえ、何かありましたか?
ー敬介が久代くんと呑みたいと言って聞かなくてな、美味しいマンゴーワインもあるから少しだけ呑まないか?
ーえっ? 浅香さんが要さんと?
私の言葉にソファーに座っていた要さんがすぐに反応し、こちらを見ているのがわかる。
驚きのあまりつい声を上げてしまって失敗したな。
流石にこれは勝手に断れない。
ーあの、要さんに聞いてみますね。しばらくお待ちください。
周平さんに一旦断りを入れて、要さんに確認したが、案の定というか当然とでもいうべきか、要さんの反応は大喜びだった。
「敬介さんとまたおしゃべりしたいと思っていたんです! 誘っていただけて嬉しいです!」
こんなにも喜んでいる要さんの気持ちを無下にはできないな。
明日も休みだし、ここから数時間くらいどうってことはない。
ーもしもし、周平さん。
ーははっ。大喜びなのがこちらまで聞こえていたよ。
ーええ、浅香さんにお誘いを受けたのが嬉しかったようです。
ーこちらで敬介も喜んでいるよ。じゃあ、特別ルームを借りておくから三十分後に。ああ、手ぶらでいいからな。飲み物も食べ物も全部用意してあるから。
ーわかりました。ありがとうございます。
二人の時間が減ってしまうのは少し寂しいところだが、浅香さんがそんなにも要さんを気に入ってくれたのなら、いい友人ができたと喜ぶべきだろう。
それに二人の時間はこれから先たっぷりとある。なんせ私たちは一生を共にする相手なのだから。
電話を切ると、要さんが私に駆け寄ってきた。
「三十分後に特別ルームで呑む事になりましたから準備しましょうか」
「はい。私、こうやって夜にお友だちと約束して出かけるのは初めてです」
そうか、だから誘われてあんなに喜んだんだな。
「それじゃあ着替えましょうか」
一日休んでいたからまだ要さんはパジャマのまま。
せっかくだから今日は先日周平さんにいただいた服にしよう。
要さんとのリンクコーデ服。
私の服を見て、要さんはそれに気づくだろうか。それも楽しみだな。
一緒にクローゼットに向かい、要さんの服を選んで渡す。
その横で私もリンクコーデ服に着替えた。
着替えながらちらっと要さんの着替えに目をやってしまう。
私がつけた花びらがまだ綺麗に咲いているのが見えて思わずにやけてしまう。
あの花びらを見るだけで、要さんが私のものだと思えて嬉しくなる。
「冬貴さん……どうですか?」
「要さん、素敵です! とてもよく似合いますよ」
「冬貴さんも……あれ?」
んっ? 気づいたか?
「どうかしましたか?」
「なんだか、私の服と印象が似ている気がして……」
「さすがですね。これは周平さんからいただいたんです。要さんのその服とのリンクコーデ服なんですよ」
「リンクコーデ?」
「全くお揃いではなく、同じ素材や配色など部分的に合わせてさりげなくお揃いに見せる服だそうです。これなら外を歩いても気にならないでしょう?」
「二人で、外で……」
そうポツリと呟くと要さんの顔がみるみるうちに赤くなってくる。
「冬貴さんと一緒に歩くのっていいですね」
「要さん……」
恥ずかしいと言われなくてよかった。
早く全てを終わらせて、要さんと堂々と外に出られるようになりたい。
私はそんな気持ちでいっぱいになっていた。
あっという間に待ち合わせの時間になり、二人で特別ルームに向かった。
使用の許可をコンシェルジュに伝えているため、すでに部屋には私たちの指紋が鍵に設定されている。
扉に指を当てるとすぐにカチャリとロックが解除される音が聞こえた。
「さぁ、入りましょうか」
「は、はい」
少し緊張している様子の要さんの手を取って中に入ると、甘い匂いが漂ってくる。
「こんばんは」
「おお、来たか」
「要くん、待ってたよ! こっち、きて!」
周平さんの隣にいた浅香さんが要さんの元に駆け寄ってきたと思ったら、要さんの手を取ってさっさと連れて行ってしまう。
私はポツンとその場に残されたまま立ち尽くすしかなかった。
「冬貴、こっちに座れ」
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