エリート警察官僚はようやく見つけた運命の相手を甘やかしたくてたまらない!

波木真帆

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久代さんのやりたいこと

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「ごちそうさまでした」

手を合わせ、ちょこんと頭をさげる久代さんが可愛い。

「全部召し上がってくださって嬉しいですよ」

「本当に美味しかったです。こんなにたくさんの量を食べたのも久しぶりで……自分でもびっくりしてます」

「それほど神経を張り詰めていたってことですね。この家でリラックスできたのならよかったです」

食べ終わった食器を片付けながら話をしていると、

「私もお手伝いします」

と一緒に食器を運んでくれる。
食後にゆっくり休ませてあげたかったが、手伝ってくれるというのを無下にもできない。

「じゃあ、お願いします」

一緒にエプロンをつけ、キッチンに並ぶ。
食器を洗うといってもほとんどは食洗機がやってくれるので問題はない。

「これ、そのタオルで拭いてもらえますか?」

「はい」

大物を渡すと笑顔で受け取り丁寧に拭いてくれる。
久代さんが拭き終わるのと同時にこちらの片付けも全て終わらせると、

「えっ? もう終わったんですか?」

と驚かれる。その表情も可愛くてたまらない。

「久代さんが大きなものを拭いてくれたおかげですよ。さぁ、あちらで休みましょう」

「は、はい」

まだ少し驚いている久代さんを連れてリビングに戻り、ソファーに腰を下ろした。

「ここ数日大変なことが続きましたから、しばらくは何も考えずにのんびり過ごしてください」

「はい。ありがとうございます」

「とはいえ、今まで忙しくされていたのでいきなり何もしない生活は手持ち無沙汰でしょう?」

「ええ。そう、ですね……」

「何か、好きなこととか、今までやってみたかったけどできなかったこととかありますか?」

「えっ? やってみたかったけど、できなかったこと……」

久代さんは私の言葉をゆっくりと復唱しながら、気持ちをこめて小さく頷いた。

「やっぱり、勉強ですね……」

「勉強?」

「はい。学生時代は英語が好きで、海外に友人を作ったり、将来は外資系企業で働きたいと思っていました。でも家庭の事情で高校を辞めてそのまま就職することになって……今は英語とは無縁の世界で過ごしてきて……もちろん秘書という仕事も充実してましたけど、もし大学に行けていたら人生変わっていたかもと思うこともあります」

久代さんが優秀だというのは、まだ数日しか一緒にいない私でもよくわかる。
もし、久代さんが大学に行っていたとしたら……崇史さんと出会う前に私が出会うチャンスもあったかもしれないなんて少し思ってしまったが、そんなことを考えても仕方がない。

今、目の前にいる久代さんの願いを叶えてあげたい。

「それならここにいる間に英語を勉強したらいいですよ。書斎に英語の本もたくさんありますから好きに読んでください」

「いいんですか?」

「ええ。もちろんですよ、もし、久代さんが会話力を身に付けたいならここにいる間、英語で会話をしても構いませんよ」

「えっ? 英語で?」

「はい。実は大学時代、友人たちと普段の会話は英語だけと決めて話していた時期があったんです」

大学で知り合った氷室は帰国子女でふとした時に英語が出ることがあった。
私と成瀬、安慶名ももちろん英語は理解できるから問題はなかったが、ネイティブすぎる発音で話をしていると声をかけられにくいとわかり、それから一緒にいる時は英語で話すことが増えた。
まぁ、それは主に学外での話。英語の理解者が多い桜城大学では、他のドイツ語やフランス語といった言語も交えながら話をしていたのを思い出す。
今でも彼らと会う時は時折、日本語が話せないふりをして声かけから逃れる時もある。だから英語での会話には今でも問題はない。

「真壁さんってすごいんですね……警察の方ってみんな英語が話せるんですか?」

「うーん、全員というわけではないですが、今は外国人の犯罪も増えていますから話せるに越したことはないですね」

「そうですよね。あの、じゃあ私、英語を頑張ってみます! この年になってこうして挑戦できる時間があるって貴重ですもんね」

久代さんの言葉に、ふと気づいて尋ねてみた。

「あ、あの……そういえば伺っていなかったんですが、久代さんって、今おいくつですか?」

「私、来月で34歳になるので、今は33歳です」

「えっ?? 33歳??」

てっきり20代だとばかり思っていた。自分より一回りは下かもしれないと思っていたから年齢を知るのをスルーしていたな。もうすぐ34ということは悠真さんとほとんど変わらないじゃないか。
これはびっくりだ。どちらかというと悠真さんより真琴くんの方が近いと思っていたな……。

あの時、高校生だと間違えて成瀬を犯罪者扱いしてしまったが、もしあの時に久代さんと出会っていたら私もそう思われたかもしれない。
今更だが、成瀬にはしっかり謝っておこう。なんとなくそういう気分にさせられた。
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