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友人たちとの出会い
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私は真壁冬貴。
幼い時から優秀で神童とまで言われていた私は、周囲の期待に応えるべく歴史ある儁秀高校に進んだ。この高校の偏差値は80と言われていたが、もちろんここでもトップの成績で入学すると思われていたし、自分でもその自信はあった。
けれど、蓋を開けてみれば私は次点の成績だった。
記述問題も含めてパーフェクトを叩き出した生徒がいて、そこで私と差がついた。
私たちの頃は一年次は成績順でクラスが決まり、二年からは進路によってクラス替えがあった。
私も、そのパーフェクトな彼ももちろん同じクラス。そして席も前後だった。
この学校の入試ではなかなか完璧解答など出ないのにパーフェクトな成績を出したその生徒が一体どんな生徒なのか、気になって仕方がなかった。
先に席につき、彼がくるのを待っているとようやく現れたその男に目を奪われた。
首席の彼は成瀬優一。
どこぞの国の王子のような気品と、芸能人のような甘いマスクを兼ね備えた長身の男。
これで儁秀高校の長い歴史の中でも三本の指に入るほどの賢さを持っているなんて。
天はよほど完璧な人間を作り出したかったと見える。
これで運動神経までよかったら、勝てる者は誰もいないだろうな。
「あの、おはよう」
私の隣を通り過ぎていく成瀬に、珍しく緊張して声をかけてしまったのはなぜか成瀬が威圧を放っていたからだ。
成瀬は私を一瞥すると、
「ああ、おはよう」
無表情で挨拶を返した。
イケメンの無表情がこんなにも冷血に見えるのかとその時初めて知った。
成瀬何でも完璧にこなすが感情は一切見えない。
アンドロイドという言葉がしっくりくるほど、人間的には見えなかった。
ある時、ペアで協力して仕上げるという課題が出て成瀬と組むことになった。
それは成績順だったのか、それともみんなが成瀬とのペアを拒んだのかは覚えていない。
けれど、結果としてこの課題で成瀬との時間を過ごせたことで、私は自然と成瀬の親友というポジションを得ることができた。
成瀬が私の実力を認めてくれたことで、一緒に過ごす時間が増えても威圧を感じることもなかったし、逆に一緒にいる時間が楽しかった。結局、成績は入学してから卒業するまで一度も逆転することはなかったけれど、成瀬がいたからこそ、私の高校生活は充実したものになったと思う。
当然のように私たちは桜城大学を目指し、成瀬は医学部に、そして私は法学部に入学した。
けれど規格外の成瀬はここでも本領を発揮して、医学部に通いながら独学で司法試験の勉強を始めた。
たまに私たちと同じ講義を聴講し、法学部の学生である私たちを追い抜いてあっという間に司法試験に合格した。
そんな成瀬だからこそ、医学部の教授だけでなく法学部の教授にも好かれていた。
ただ、教授相手だからといって愛想が良かったわけじゃない。
けれど、誰が相手でも成瀬らしさが変わらない、そんな態度が教授たちを惹きつけていたのかもしれない。
医学部に入った成瀬はどちらかというと法学部の方に興味があったのか、それとも私が大学で知り合った友人たちに興味があったのか、頻繁に法学部の棟で見かけた。
そんなこともあり、私は友人たちを成瀬に紹介した。
一人は高校の途中で沖縄から、儁秀高校と双璧をなす天稟高校に編入を果たした安慶名伊織。
実は桜城大学の伝説の夫夫と言われている経済学部の志良堂教授と鳴宮教授の息子的存在として一緒に生活をしていたと聞いた時は驚いた。だが、本人はそんなことを鼻にかけず桜城大学の給付型の奨学金で大学に通うような優秀なやつだ。法学部でも成績は常にトップで男女関係なく人気があるが、本人は全く気にかけるそぶりはなく告白をされても全て断っているようだ。
もう一人は高校時代を海外で過ごし、帰国子女枠で桜城大学に入学した氷室誠一。見た目は少しチャラい印象を受けるが、授業態度はかなり真面目で帰国子女試験でも歴代最高得点を叩き出したと聞いている。
成瀬は安慶名を紹介したとき、すぐに
「珍しい名前だな。出身はどこだ?」
と興味を持っていた。成瀬が人に関心を持つこと自体が珍しくて驚いたのを今でもよく覚えている。
それほど安慶名の存在は成瀬の興味を惹きつけたのだろう。
それからすぐに安慶名とは意気投合していたが、氷室のことはしばらく訝しんで見ていた気がする。
それでも氷室がかなり優秀だと知ってからは警戒も薄れたようだった。
今では自分の事務所に氷室を雇い入れるくらいだから最初の印象から思えばかなり変わったと言えるだろう。
そんなこんなで、私たちは余計な人間を入れずに四人で大学時代を謳歌し、それぞれの道に進んだ。
安慶名は大学卒業後、司法修習を経て、法学部の緑川教授のパートナーである磯山先生が代表を務める磯山法律事務所に就職。
成瀬は私たちより二年遅れて医学部を卒業、もちろん医師国家試験に合格し臨床研修を終えた。その後司法修習も受け、医師免許を持ちながら弁護士として働く道を選んだ。
氷室は司法修習後に海外に渡り、国際弁護士としての資格をとった後、安慶名より数年遅れで磯山法律事務所に就職。同時期に磯山先生のもとで勉強していた成瀬が独立するときに一緒に辞め、今は成瀬法律事務所の大事な戦力として充実した日々を過ごしているようだ。
そして、私は法学部に通ったものの法律家として進む道は考えず、卒業後は警察官僚としての道を歩み始めた。
三人とは進路は違ったが、自分には合っていたように思う。
それでも三人との縁が切れてしまったわけではない。
いや、それどころか別の道を歩んだことで関係はかなり強固なものになったような気がする。
私たちはそれぞれ忙しくても時間を見つけてはお互いに近況報告という名の飲み会を楽しんでいた。
幼い時から優秀で神童とまで言われていた私は、周囲の期待に応えるべく歴史ある儁秀高校に進んだ。この高校の偏差値は80と言われていたが、もちろんここでもトップの成績で入学すると思われていたし、自分でもその自信はあった。
けれど、蓋を開けてみれば私は次点の成績だった。
記述問題も含めてパーフェクトを叩き出した生徒がいて、そこで私と差がついた。
私たちの頃は一年次は成績順でクラスが決まり、二年からは進路によってクラス替えがあった。
私も、そのパーフェクトな彼ももちろん同じクラス。そして席も前後だった。
この学校の入試ではなかなか完璧解答など出ないのにパーフェクトな成績を出したその生徒が一体どんな生徒なのか、気になって仕方がなかった。
先に席につき、彼がくるのを待っているとようやく現れたその男に目を奪われた。
首席の彼は成瀬優一。
どこぞの国の王子のような気品と、芸能人のような甘いマスクを兼ね備えた長身の男。
これで儁秀高校の長い歴史の中でも三本の指に入るほどの賢さを持っているなんて。
天はよほど完璧な人間を作り出したかったと見える。
これで運動神経までよかったら、勝てる者は誰もいないだろうな。
「あの、おはよう」
私の隣を通り過ぎていく成瀬に、珍しく緊張して声をかけてしまったのはなぜか成瀬が威圧を放っていたからだ。
成瀬は私を一瞥すると、
「ああ、おはよう」
無表情で挨拶を返した。
イケメンの無表情がこんなにも冷血に見えるのかとその時初めて知った。
成瀬何でも完璧にこなすが感情は一切見えない。
アンドロイドという言葉がしっくりくるほど、人間的には見えなかった。
ある時、ペアで協力して仕上げるという課題が出て成瀬と組むことになった。
それは成績順だったのか、それともみんなが成瀬とのペアを拒んだのかは覚えていない。
けれど、結果としてこの課題で成瀬との時間を過ごせたことで、私は自然と成瀬の親友というポジションを得ることができた。
成瀬が私の実力を認めてくれたことで、一緒に過ごす時間が増えても威圧を感じることもなかったし、逆に一緒にいる時間が楽しかった。結局、成績は入学してから卒業するまで一度も逆転することはなかったけれど、成瀬がいたからこそ、私の高校生活は充実したものになったと思う。
当然のように私たちは桜城大学を目指し、成瀬は医学部に、そして私は法学部に入学した。
けれど規格外の成瀬はここでも本領を発揮して、医学部に通いながら独学で司法試験の勉強を始めた。
たまに私たちと同じ講義を聴講し、法学部の学生である私たちを追い抜いてあっという間に司法試験に合格した。
そんな成瀬だからこそ、医学部の教授だけでなく法学部の教授にも好かれていた。
ただ、教授相手だからといって愛想が良かったわけじゃない。
けれど、誰が相手でも成瀬らしさが変わらない、そんな態度が教授たちを惹きつけていたのかもしれない。
医学部に入った成瀬はどちらかというと法学部の方に興味があったのか、それとも私が大学で知り合った友人たちに興味があったのか、頻繁に法学部の棟で見かけた。
そんなこともあり、私は友人たちを成瀬に紹介した。
一人は高校の途中で沖縄から、儁秀高校と双璧をなす天稟高校に編入を果たした安慶名伊織。
実は桜城大学の伝説の夫夫と言われている経済学部の志良堂教授と鳴宮教授の息子的存在として一緒に生活をしていたと聞いた時は驚いた。だが、本人はそんなことを鼻にかけず桜城大学の給付型の奨学金で大学に通うような優秀なやつだ。法学部でも成績は常にトップで男女関係なく人気があるが、本人は全く気にかけるそぶりはなく告白をされても全て断っているようだ。
もう一人は高校時代を海外で過ごし、帰国子女枠で桜城大学に入学した氷室誠一。見た目は少しチャラい印象を受けるが、授業態度はかなり真面目で帰国子女試験でも歴代最高得点を叩き出したと聞いている。
成瀬は安慶名を紹介したとき、すぐに
「珍しい名前だな。出身はどこだ?」
と興味を持っていた。成瀬が人に関心を持つこと自体が珍しくて驚いたのを今でもよく覚えている。
それほど安慶名の存在は成瀬の興味を惹きつけたのだろう。
それからすぐに安慶名とは意気投合していたが、氷室のことはしばらく訝しんで見ていた気がする。
それでも氷室がかなり優秀だと知ってからは警戒も薄れたようだった。
今では自分の事務所に氷室を雇い入れるくらいだから最初の印象から思えばかなり変わったと言えるだろう。
そんなこんなで、私たちは余計な人間を入れずに四人で大学時代を謳歌し、それぞれの道に進んだ。
安慶名は大学卒業後、司法修習を経て、法学部の緑川教授のパートナーである磯山先生が代表を務める磯山法律事務所に就職。
成瀬は私たちより二年遅れて医学部を卒業、もちろん医師国家試験に合格し臨床研修を終えた。その後司法修習も受け、医師免許を持ちながら弁護士として働く道を選んだ。
氷室は司法修習後に海外に渡り、国際弁護士としての資格をとった後、安慶名より数年遅れで磯山法律事務所に就職。同時期に磯山先生のもとで勉強していた成瀬が独立するときに一緒に辞め、今は成瀬法律事務所の大事な戦力として充実した日々を過ごしているようだ。
そして、私は法学部に通ったものの法律家として進む道は考えず、卒業後は警察官僚としての道を歩み始めた。
三人とは進路は違ったが、自分には合っていたように思う。
それでも三人との縁が切れてしまったわけではない。
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