ひとりぼっちになった僕は新しい家族に愛と幸せを教えてもらいました

波木真帆

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昇の進路とクリスマスの話

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「それで、報告したいことはなんだ?」

「実は、昇の進路なんです」

「昇の進路? 桜城大学の法学部に行くんだろう?」

父も賢将さんもそれしかないとでも言いたげな表情で私を見ている。
なんせ昇自身が小学生の頃から言っていたことだし、つい先日二人に会った時もそう言っていたのだからそう思うのも無理はない。

「本人もそのつもりだったんですが、昨日志良堂の家に行ったときに安慶名くんと成瀬くんと話をして、医学部に入学することを決めました」

「医学部? だが、今からでは……」

共通テストを来月に控えた今では変更が効かない。
それがわかっているからこその驚きだろう。

「はい。今年度の受験は諦めて、一年浪人して再来年医学部を受験するようです」

「どうしてそんなことに……」

「もしかして、直くんのためかな?」

信じられないと言った表情を見せる父の隣で、賢将さんは冷静な声で問いかけてきた。

「はい、その通りです。昇は、直くんだけの主治医になるつもりで医学部に入り、医師になる道を選びました。だから、弁護士の道を諦めたわけではなく、成瀬くんのように医学部に通いながら、独学で司法試験をうけるつもりのようです」

「なるほど。確かに医師へのトラウマがある直くんなら、私の後任を探すのは難しいな。だが昇なら心を許せる。直くんの健康を保つためにも昇が主治医となるのは直くんにとって最高の人選と言えるだろう。ただ、ダブルライセンスは優秀だから取得できるというものでもない。昇にとってはかなり困難な道になるだろうが、それをわかった上でその道に進むことを決めたんだな?」

「ええ。はっきりと言ってましたよ。どれだけ遠回りになっても直くんを一生守りたいから頑張るんだ、と」

「それなら大丈夫でしょう。ねぇ、寛さん」

父はまだ難しい表情をしていたが、昇の言葉を聞いて納得したようだった。

「これが相談じゃなく、報告だったからもう決定事項なのだな」

「はい。毅たちにはクリスマスで帰国した時に自分から話すと言っていました」

「そうか。毅は昇が合格できなかったらフランスに強制的に連れて行くと言っていたが、昇が真剣に伝えれば一年の浪人は認めるだろう」

流石に医学部に不合格だった場合は、昇の頑張りが足りなかったとしてフランスに連れて行かれるのを止められそうにないが、あの昇にその心配はない。

「司法試験も私と卓が教えてやれば問題はないだろう。医学部の方は賢将さんに任せることになりそうだが」

「ええ。私も可愛い孫たちのためなら手を尽くしますよ」

ここには医師と弁護士のエキスパートが揃っているのだから昇も安心だろう。
そう考えたら、本当に独学でダブルライセンスを取得した成瀬くんや貴船くんたちは血の滲むような努力をしたのだろう。
まぁ成瀬くんの場合は少し違うかもしれないが。
私の教え子の中でもダントツ優秀だと言っていい逸材だったからな。

「これで卓の話は終わりか?」

「はい。改名の手続きは明日には出せるように準備します」

「何かあればなんでも声をかけてくれ。協力は惜しまないよ」

「わかりました。それじゃあ邪魔にならないうちに帰ります」

冷めてしまったコーヒーを飲み干し、さっさと帰ろうと思ったところで賢将さんが口を開いた。

「せっかくだからクリスマスの話をしておきたいんだが、いいかな?」

「はい。この家でパーティーをする話ですよね?」

「そうだ。直くんには初めてのクリスマスパーティーになるだろうから、思いっきり思い出に残るものにしてあげたいと思っていたんんだが、観月くんと先日会った時に昨年のクリスマスのことを聞いたんだよ」

「ああ、フランスのロレーヌ家で行われたパーティーの話ですね」

絢斗が理央くんからお土産のカップをもらった時にクリスマスのことを聞いたら、橇に乗ったサンタクロースに直接プレゼントをもらったんだと言って興奮していたのが可愛かったと言っていたな。

「ロレーヌ家レベルのことはできないかもしれないが、サンタクロースからのプレゼントくらいはしてあげたいと思っている。ただ、サンタクロースを誰にするかなんだが、いい人を知らないか?」

そうか。身内なら聡い直くんのことだ、いないことにすぐ気づくかもしれない。

だが無関係の人に頼むのも申し訳ない。
誰か……

ああっ!! そうだ!

「本人が了承してくれるかどうかですが、心当たりが一人います。ちょっとその人に声をかけてみますよ」

「そうか、頼むよ。クリスマスプレゼントについても色々と相談したいから、これからたまに集まろう」

「わかりました」

私は父と賢将さんにお礼を言って実家を出た。
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