ひとりぼっちになった僕は新しい家族に愛と幸せを教えてもらいました

波木真帆

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大きな壁

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<side昇>

店を出て駐車場に向かうことになったが、さっきまで俺と一緒に直くんの手を繋いでくれていたじいちゃんたちが俺たちの後ろを歩いている。そっと伯父さんに視線を向けると俺をみて頷いてくれたからきっと二人の時間を作ってくれたということなんだろう。

可愛い私服に着替えた直くんと二人で歩ける幸せを噛み締めながら、俺は直くんをピッタリと寄り添わせて歩き始めた。

「直くん、俺から離れないようにね」

「はい。絶対離れません」

俺と腕を絡めて、可愛らしく見上げてくる直くんがたまらなく可愛い。

そんな直くんだけを見つめていたいが、周りから夥しい視線を感じる。
これは全て天使のように可愛い直くんへの視線だ。

可愛い直くんに見惚れるのは仕方がないことだから見逃してもいいが、ニヤついた目で直くんを舐め回すようにみられるのはどうにも許し難い。奴らの頭の中で直くんがどんなことをさせられているのか考えたくもない。
俺にできるのは、奴らの視界に直くんが入らないように割って入り、決して触れさせたりしないように守ることだ。

四方八方にアンテナを張り巡らせながら、可愛い直くんとの散歩デートを楽しんでいた。

すると、直くんの右斜め前方に怪しげな動きをしているガタイのいい男の姿が目に入った。
そいつがおかしなことをしないか意識して見ていると、そいつは突然自分の前を歩いていた男の陰に隠れたと思ったら、直くん目掛けて飛び出してきた。

こいつ、今流行りのぶつかり親父か?

こんな勢いで直くんにぶつかったら直くんの骨が折れるのは間違いない。

俺はそいつが直くんにぶつかる直前に直くんの腕を引いて俺の胸元に抱き寄せた。
直くんが驚きの声を上げるのと同時に、そいつが勢いあまって地面に大きな音を立てて倒れ込んだ。

「ぐぁーーっ! 腕が折れたーー!!」

ガタイのいい男が地面でジタバタと足をばたつかせて大袈裟に騒ぎ出したことに直くんが身体を震わせる。

「の、昇さん……っ」

「大丈夫だよ、俺がついているから」

安心させようと声をかけるが直くんは震えながら俺に抱きついたままだ。
どうしようと思っていると、さっと俺の背後から

「昇、直くんを抱き抱えるんだ」

と大おじさんの声がして、その声に従うように急いで直くんを抱きかかえた。

「こっちだ」

大おじさんの的確な指示に従って、俺たちは絢斗さんと共にその場を離れた。
駐車場に到着すると、村山たち家族の姿も見える。

腕の中で直くんはまだ震えている。

「もう大丈夫だよ」

俺の言葉にそっと顔を上げると、直くんはキョロキョロと辺りを見回して不安げな表情を向けた。

「パパと、おじいちゃまがいないです……」

「大丈夫、すぐに来るよ」

「でも……」

「じゃあ、俺見てくるから直くんは車に乗って待ってて」

直くんと離れ難いが、伯父さんとじいちゃんの安全を早く知らせて安心させてやりたい。

「大おじさん。絢斗さん、直くんをお願いします」

俺はそれだけ言ってさっきの場所に向かって駆け出した。
向かいながら、すれ違う人たちの声が聞こえてくる。

『さっきのめっちゃかっこよかったね』
『あれ、やっぱり撮影じゃない?』
『やっぱ、そうだよね? 腕捻ってから地面に張り倒すまでめちゃくちゃ綺麗だったもんね』
『そうそう! あのイケオジ俳優誰かなー?』
『見惚れて写真撮るの忘れたー!』
『いや、でもあれは目に焼き付けて正解だって! 本当、かっこよかったよね』
『あっちの弁護士役っぽい人もかっこよくなかった?』
『わかる! 冷静でクールなイケメン弁護士!! あんなの実在するわけないよね!』
『やっぱ、俳優かぁー、かっこいい……』

これって、じいちゃんと伯父さんのことだよな?
なんかの撮影と思われるような、そんな大立ち回りしたのか?

ちょっとドキドキしながらさっきの場所に戻ると、警察官の姿が見える。

「じいちゃん! 伯父さん!」

とんでもないことになったんだと思って慌てて駆け寄ると、

「昇、直くんはどうした?」

と第一声で尋ねられた。

「あ、えっと大おじさんたちと車で待ってるよ。直くんがじいちゃんたちの姿が見えないって不安がってたから様子を見に来たんだ」

「そうか、それならよかった。私たちは大丈夫だ。あの男はもう警察に連れて行かれたからな。今は彼らに説明をしていたところだ」

「そう、なんだ……警察はじいちゃんが呼んだの?」

「いや、賢将さんが連絡してくれたようだよ。近くにいたみたいですぐに駆けつけてくれたんだが、さっきの男、若い子を狙った当たり屋で少し前にも金を脅し取っていたようだ」

「やっぱり! 直くんに狙いを定めてぶつかってきた気がしたんだ」

「お前が直くんを守ったからよかったよ。さっきぶつかられた子は尻餅ついた拍子に手首を骨折したそうだ」

「えっ!」

驚いたがあの勢いなら有りうる。直くんをちゃんと守れてよかった。

「お前のお手柄だぞ。よくやった!」

「じいちゃん……」

じいちゃんにこんなふうに褒められるのはいつぶりだろう。
でも嬉しい。

じいちゃんと話をしていると、警察官と話を終えた伯父さんが笑顔で俺の元にやってきた。

「昇、よくやったな」

「そんな褒められると照れるよ。それより、まだ時間かかる感じ?」

「いや、必要なことは全て話をしておいたから今はもう大丈夫だ。何かあればまた後日協力することになるかな」

「そうなんだ、よかった。直くんが伯父さんとじいちゃんを心配しているから安心させてやって」

「ああ、あの子は本当に優しい子だな」

俺たちは警察官に見送られながら直くんの待つ駐車場に向かった。

ふと後ろを見ると警察官が二人ともじいちゃんたちに深々とお辞儀をしているのが見える。
そういえば、じいちゃんも伯父さんも刑事、民事ともに無敗記録保持者だって言ってたっけ。
第一線を退いているじいちゃんはともかく、現役の伯父さんを警察官が知らないわけないな。
そんな二人が目の前に現れたら恐縮してしまうのも無理はないのかもしれない。

改めてじいちゃんと伯父さんの凄さを目の当たりにしてしまった。

俺はこの大きな壁をいつか越えられるだろうか?
まだまだ先は長いな。
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