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沙都のエプロン
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<side寛>
我が家のアルバムは絢斗くんと二葉さんも好きで、我が家に来るたびによく覗いていた。
沙都と一緒にアルバムを囲みながら、蔵でおしゃべりを楽しんでいたのを思い出す。
若い頃、カメラが好きだった私は自宅に現像室を作って自分で現像もしていた。
今は携帯電話で簡単に写真が撮れるようになったが、アナログなカメラでなければ撮れない表情もある。
あの味わいも含めて好きだった。
楽しそうにアルバムを見る直くんと昇を蔵に残し、キッチンに向かった。
かなり食材を買い込んでくれていたが、何を買ってくれたのだろう。
冷蔵庫を開けると、綺麗に整頓されて入れられているのがわかる。
昇もすっかり料理好きになったようだな。
それも直くんのおかげかと思うと感慨深い。
愛しい相手ができれば自分の手料理を食べさせたいと思うものだからな。
毅も二葉さんと会うまではそこまで料理に興味は持っておらず、食べられるものを作ればいいくらいの感じだったが、付き合うようになってからみるみる成長した。
卓の場合は、昔から料理は好きだったように思う。
いつも沙都の手伝いをしていた。
絢斗くんが料理がからっきしダメだと知った時も、自分が一生美味しいものを食べさせるから大丈夫だと言い切ったくらいだ。きっと最初から卓と絢斗くんはそういう縁で結ばれていたのだろう。
「ああ、美味しそうな刺身があるな」
確か食品庫に中元でもらった焼き海苔があったはずだ。
それで手巻き寿司にでもしようか。
卓からは直くんが生ものがダメだとは聞いていなかったから、大丈夫だろう。
まぁ、そもそもこの買い物は卓たちがしたものだからな。
よし、手巻き寿司なら直くんも楽しめるに違いない。
先日の賢将さんとのお好み焼きくらい楽しそうな笑顔を見せてくれたらいい。
そんな期待をしながら、手巻き寿司の準備に取り掛かった。
鮨飯用に少し硬めのご飯を炊き、その間に具材の準備をする。
卵はあったほうが彩りも綺麗だろう。
直くん用に少し甘めの味付けにして焼き、冷ましておく。
冷凍庫を開けると、真空パックのウナギが見える。
これも買っておいてくれたか。
鰻重で食べるのもいいが、手巻き寿司の具として使うのも良さそうだ。
白くて大きな皿に大葉をのせ、その上に刺身をそれぞれ種類ごとに分けて並べる。
直くんが見るだけで楽しめるように盛り付けた。
手巻き寿司に合うような豆腐と三つ葉の吸い物を作り、あとはご飯が炊けるのを待つだけだ。
鮨酢を作っている間にちょうどご飯が炊き上がった。
ああ、これを直くんに手伝ってもらおうか。
蔵をリノベーションした時に卓と毅が蔵の中の映像が見られるようにしてくれたが、それは私たち三人だけの秘密だ。
沙都や絢斗くんたち、それに昇は声だけが聞こえてくると思っている。
今日は昇と直くんの邪魔をしたくなくて見てはいないが、きっと楽しい時間を過ごしていることだろう。
――そろそろご飯だからおいで。
二人の様子は見ずに声だけかけると、それからすぐに二人がキッチンにやってきた。
「じいちゃん、昼ごはん何?」
「手巻き寿司だよ。直くん、手伝ってくれないか?」
「――っ、はい!」
目を輝かせてチッキンに駆け寄ってくる。
「おじいちゃま。僕、何したらいいですか?」
「まずはエプロンをつけようか。沙都のだがつけてくれるか?」
「はい!」
嬉しそうな直くんに沙都がつけていたエプロンを渡す。
時折出しては綺麗に洗っていたから大丈夫だろう。
あの時の賢将さんの動画と同じように、三角巾代わりの大きなハンカチを頭に巻いてやると直くんは嬉しそうにその場でくるりと回った。
「直くん、可愛いよ!」
私が心の中で悶えるのと同じタイミングで昇から声が漏れる。
「ふふ、嬉しいです」
昇に褒められて嬉しそうな直くんは私にも笑顔で見つめた。
「おじいちゃま、どうですか?」
「ああ、とてもよく似合ってる。沙都にも見せたいよ。直くん、写真を撮ってもいいかな?」
「はい。あの、おじいちゃまとも一緒に撮りたいです」
「そうか、撮ろう撮ろう! 昇、直くんとの写真を撮ってくれ」
直くんから撮りたいと言ってくれたのが嬉しくて年甲斐もなくはしゃいでしまった。
可愛い直くんと寄り添いながら写真を撮ってもらい、お返しに昇とも写真を撮ってあげた。
「さぁ、じゃあ手伝ってもらおうかな。私が最初に直くんとするから、後で昇と二人でやるといい」
「はーい」
元気のいい返事をする直くんを微笑ましく思いながら、寿司桶に炊き上がったご飯を入れ、そこに鮨酢を回しかけた。
「直くんはその団扇でご飯を仰いでくれるかな? ご飯を冷ましたいんだ」
「わかりましたー!」
畳に膝立ちになり、私がご飯を切る横で一生懸命仰いでくれる。
その真剣な表情も全て昇が目の前で動画を撮ってくれている。
ああ、可愛い孫とこんなことができるとはな……。
私は最高に幸せだ。
我が家のアルバムは絢斗くんと二葉さんも好きで、我が家に来るたびによく覗いていた。
沙都と一緒にアルバムを囲みながら、蔵でおしゃべりを楽しんでいたのを思い出す。
若い頃、カメラが好きだった私は自宅に現像室を作って自分で現像もしていた。
今は携帯電話で簡単に写真が撮れるようになったが、アナログなカメラでなければ撮れない表情もある。
あの味わいも含めて好きだった。
楽しそうにアルバムを見る直くんと昇を蔵に残し、キッチンに向かった。
かなり食材を買い込んでくれていたが、何を買ってくれたのだろう。
冷蔵庫を開けると、綺麗に整頓されて入れられているのがわかる。
昇もすっかり料理好きになったようだな。
それも直くんのおかげかと思うと感慨深い。
愛しい相手ができれば自分の手料理を食べさせたいと思うものだからな。
毅も二葉さんと会うまではそこまで料理に興味は持っておらず、食べられるものを作ればいいくらいの感じだったが、付き合うようになってからみるみる成長した。
卓の場合は、昔から料理は好きだったように思う。
いつも沙都の手伝いをしていた。
絢斗くんが料理がからっきしダメだと知った時も、自分が一生美味しいものを食べさせるから大丈夫だと言い切ったくらいだ。きっと最初から卓と絢斗くんはそういう縁で結ばれていたのだろう。
「ああ、美味しそうな刺身があるな」
確か食品庫に中元でもらった焼き海苔があったはずだ。
それで手巻き寿司にでもしようか。
卓からは直くんが生ものがダメだとは聞いていなかったから、大丈夫だろう。
まぁ、そもそもこの買い物は卓たちがしたものだからな。
よし、手巻き寿司なら直くんも楽しめるに違いない。
先日の賢将さんとのお好み焼きくらい楽しそうな笑顔を見せてくれたらいい。
そんな期待をしながら、手巻き寿司の準備に取り掛かった。
鮨飯用に少し硬めのご飯を炊き、その間に具材の準備をする。
卵はあったほうが彩りも綺麗だろう。
直くん用に少し甘めの味付けにして焼き、冷ましておく。
冷凍庫を開けると、真空パックのウナギが見える。
これも買っておいてくれたか。
鰻重で食べるのもいいが、手巻き寿司の具として使うのも良さそうだ。
白くて大きな皿に大葉をのせ、その上に刺身をそれぞれ種類ごとに分けて並べる。
直くんが見るだけで楽しめるように盛り付けた。
手巻き寿司に合うような豆腐と三つ葉の吸い物を作り、あとはご飯が炊けるのを待つだけだ。
鮨酢を作っている間にちょうどご飯が炊き上がった。
ああ、これを直くんに手伝ってもらおうか。
蔵をリノベーションした時に卓と毅が蔵の中の映像が見られるようにしてくれたが、それは私たち三人だけの秘密だ。
沙都や絢斗くんたち、それに昇は声だけが聞こえてくると思っている。
今日は昇と直くんの邪魔をしたくなくて見てはいないが、きっと楽しい時間を過ごしていることだろう。
――そろそろご飯だからおいで。
二人の様子は見ずに声だけかけると、それからすぐに二人がキッチンにやってきた。
「じいちゃん、昼ごはん何?」
「手巻き寿司だよ。直くん、手伝ってくれないか?」
「――っ、はい!」
目を輝かせてチッキンに駆け寄ってくる。
「おじいちゃま。僕、何したらいいですか?」
「まずはエプロンをつけようか。沙都のだがつけてくれるか?」
「はい!」
嬉しそうな直くんに沙都がつけていたエプロンを渡す。
時折出しては綺麗に洗っていたから大丈夫だろう。
あの時の賢将さんの動画と同じように、三角巾代わりの大きなハンカチを頭に巻いてやると直くんは嬉しそうにその場でくるりと回った。
「直くん、可愛いよ!」
私が心の中で悶えるのと同じタイミングで昇から声が漏れる。
「ふふ、嬉しいです」
昇に褒められて嬉しそうな直くんは私にも笑顔で見つめた。
「おじいちゃま、どうですか?」
「ああ、とてもよく似合ってる。沙都にも見せたいよ。直くん、写真を撮ってもいいかな?」
「はい。あの、おじいちゃまとも一緒に撮りたいです」
「そうか、撮ろう撮ろう! 昇、直くんとの写真を撮ってくれ」
直くんから撮りたいと言ってくれたのが嬉しくて年甲斐もなくはしゃいでしまった。
可愛い直くんと寄り添いながら写真を撮ってもらい、お返しに昇とも写真を撮ってあげた。
「さぁ、じゃあ手伝ってもらおうかな。私が最初に直くんとするから、後で昇と二人でやるといい」
「はーい」
元気のいい返事をする直くんを微笑ましく思いながら、寿司桶に炊き上がったご飯を入れ、そこに鮨酢を回しかけた。
「直くんはその団扇でご飯を仰いでくれるかな? ご飯を冷ましたいんだ」
「わかりましたー!」
畳に膝立ちになり、私がご飯を切る横で一生懸命仰いでくれる。
その真剣な表情も全て昇が目の前で動画を撮ってくれている。
ああ、可愛い孫とこんなことができるとはな……。
私は最高に幸せだ。
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