267 / 363
突然の連絡
しおりを挟む
「あ、そうだ。週末のどっちかで村山とカールと遊ぼうって話が出ているんだけど……」
自宅に戻り、忘れないうちに話をしておこうと声をかけ始めたところで、
「昇、悪い。電話だ」
伯父さんが胸ポケットからスマホを取り出して一瞬驚きの表情を見せた。
あの表情は一体誰だろう?
その疑問は伯父さんの会話ですぐにわかった。
ー父さん。どうかしましたか? えっ? 明日? あの、迎えは……わかりました。絢斗にも伝えておきます。はい。気をつけて。
電話を切ると、伯父さんはふぅと大きなため息を吐いた。
「伯父さん、じいちゃんに何かあった?」
「いや、明日の夜にこっちに着くらしい。予想では日曜日くらいかと思っていたんだが、さらに上回ってきたから驚いたんだよ。相当、直くんに会いたいらしい」
「えっ、僕?」
「ああ。昇や絢斗が送った写真や動画を見て可愛い孫に早く会いたくなったそうだよ」
「そんな……っ。でも、嬉しいです」
少し照れた様子の直くんが抱きしめたくなるくらい可愛い。
「お義父さん、じゃあ明日はうちに泊まる?」
「そうしたいと言っていたが、予定よりも早かったから明日は自宅に戻ってもらってまた改めて泊まりに来てもらっても……」
「ううん。明日泊まってもらおうよ。部屋はあるし、直くんとものんびり過ごしてもらえるし。それに長旅から戻ってきたばかりで一人で自宅に帰るなんて寂しすぎるよ」
「絢斗……ありがとう。じゃあ、部屋の準備をしてくるよ」
「あ、伯父さん。それは俺がやっとくよ。伯父さんは夕食の支度をしてて」
俺が立ち上がると、隣にいた直くんも立ち上がった。
「僕もお手伝いします。おじいちゃんのお部屋、準備したいです」
「孫たちが準備してくれたなんて父さんが知ったら大喜びするだろうな。じゃあ、頼むよ。新しいシーツはランドリールームに置いてあるから」
「わかった。直くん、行こうか」
直くんの手をとって空き部屋になっている客間に向かった。
俺と直くんの部屋がある側だから、じいちゃん喜ぶだろうな。
<side卓>
編み物ができて大興奮の絢斗と直くんを連れ帰って、夕食の支度を始めようかと思っていたところで、昇が週末の話題を話しかけてきた途端、電話がかかってきたことに気づいた。
断りを入れて画面を見れば相手は父の名前。
この時間ならシアトルは真夜中のはずなのに何かあったのか。
慌てて電話をとると想像以上にご機嫌な父の声が聞こえた。
ー卓。今、大丈夫か?
ー父さん。どうかしましたか?
ー今日で全ての仕事を終わらせたから日本に戻るぞ。
ーえっ?
ー到着は明日の18時の予定だ。
ー明日? あの、迎えは……
ー気にしないでいい。空港から直接お前の家に向かうよ。ああ、明日は泊まらせてもらえたらありがたいが、急なことだから別の日でも構わないよ。
ーわかりました。絢斗にも伝えておきます。
ー飛行機に乗るときにまた連絡を入れるから。
ーはい。気をつけて。
まさかこんなにも帰国日を繰り上げてくるとは思わなかったな。
日曜日に到着でも相当のものだと思っていたのに。
そうさせてしまうくらい、直くんの存在が大きいのだろう。
電話を切ってすぐに声をかけてきた昇に答えるように、父が明日帰国して直くんに会いにくる旨を伝えると、直くんは頬を赤らめながらも嬉しそうにしていた。
堅物な父を怖がりはしないかと不安だったが、賢将さんともかなり打ち解けているし、直くんの中ではおじいちゃんのイメージが優しくていい人となっているのかもしれない。
絢斗に気を遣わせることだけが心配だったが、明日の泊まりについて絢斗の方から声をかけてくれた。
絢斗の優しい気持ちに甘えて、明日はうちに泊まってもらうことになった。
私の代わりに昇と直くんが客間の準備をしてくれることになり、部屋に入っていく二人を見送ってから絢斗を抱きしめた。
「絢斗。ありがとう」
「お礼なんていらないよ。だって、家族なんだから。それにきっと直くん……お義父さんとすごく仲良しになると思うよ」
「そうか?」
「うん。だって、卓さんと昇くん、お義父さんに似てるもん。だから安心して寄っていくと思う。それだけ卓さんと昇くんのことが安心する存在ってことだよ。だから、明日は家族団欒を楽しもう!」
「絢斗……」
絢斗の優しい言葉に私は嬉しくてたまらなかった。
それから絢斗の今日の報告を聞きながら夕食の支度を済ませ、食事が出来上がったところで昇と直くんがダイニングルームにやってきた。
「あれなら余裕で泊まれるよ」
「そうか、ありがとう。じゃあご飯にしよう」
みんなで食卓を囲み、食事を始めると
「そういえばさっき途中になってたんだけど、土日のどっちかで村山とカールと遊びたいんだ。いいかな?」
「それは構わないが、どこかに出かけるのか?」
「うーん、それはまだ考えてないけどとりあえず予定だけ聞かれたんだ」
「そうか。父さんが泊まるなら土曜日はバタバタするかもしれないな。日曜日にしたらどうだ?」
「そうだね。わかった。村山に話しておくよ」
せっかく日本に来ているのだからどこかに出かけるのだろうが、昇と龍弥くんだけに直くんとカールくんを任せるのは心配だな。もし出かけるなら私たちもついていくとするかな。
自宅に戻り、忘れないうちに話をしておこうと声をかけ始めたところで、
「昇、悪い。電話だ」
伯父さんが胸ポケットからスマホを取り出して一瞬驚きの表情を見せた。
あの表情は一体誰だろう?
その疑問は伯父さんの会話ですぐにわかった。
ー父さん。どうかしましたか? えっ? 明日? あの、迎えは……わかりました。絢斗にも伝えておきます。はい。気をつけて。
電話を切ると、伯父さんはふぅと大きなため息を吐いた。
「伯父さん、じいちゃんに何かあった?」
「いや、明日の夜にこっちに着くらしい。予想では日曜日くらいかと思っていたんだが、さらに上回ってきたから驚いたんだよ。相当、直くんに会いたいらしい」
「えっ、僕?」
「ああ。昇や絢斗が送った写真や動画を見て可愛い孫に早く会いたくなったそうだよ」
「そんな……っ。でも、嬉しいです」
少し照れた様子の直くんが抱きしめたくなるくらい可愛い。
「お義父さん、じゃあ明日はうちに泊まる?」
「そうしたいと言っていたが、予定よりも早かったから明日は自宅に戻ってもらってまた改めて泊まりに来てもらっても……」
「ううん。明日泊まってもらおうよ。部屋はあるし、直くんとものんびり過ごしてもらえるし。それに長旅から戻ってきたばかりで一人で自宅に帰るなんて寂しすぎるよ」
「絢斗……ありがとう。じゃあ、部屋の準備をしてくるよ」
「あ、伯父さん。それは俺がやっとくよ。伯父さんは夕食の支度をしてて」
俺が立ち上がると、隣にいた直くんも立ち上がった。
「僕もお手伝いします。おじいちゃんのお部屋、準備したいです」
「孫たちが準備してくれたなんて父さんが知ったら大喜びするだろうな。じゃあ、頼むよ。新しいシーツはランドリールームに置いてあるから」
「わかった。直くん、行こうか」
直くんの手をとって空き部屋になっている客間に向かった。
俺と直くんの部屋がある側だから、じいちゃん喜ぶだろうな。
<side卓>
編み物ができて大興奮の絢斗と直くんを連れ帰って、夕食の支度を始めようかと思っていたところで、昇が週末の話題を話しかけてきた途端、電話がかかってきたことに気づいた。
断りを入れて画面を見れば相手は父の名前。
この時間ならシアトルは真夜中のはずなのに何かあったのか。
慌てて電話をとると想像以上にご機嫌な父の声が聞こえた。
ー卓。今、大丈夫か?
ー父さん。どうかしましたか?
ー今日で全ての仕事を終わらせたから日本に戻るぞ。
ーえっ?
ー到着は明日の18時の予定だ。
ー明日? あの、迎えは……
ー気にしないでいい。空港から直接お前の家に向かうよ。ああ、明日は泊まらせてもらえたらありがたいが、急なことだから別の日でも構わないよ。
ーわかりました。絢斗にも伝えておきます。
ー飛行機に乗るときにまた連絡を入れるから。
ーはい。気をつけて。
まさかこんなにも帰国日を繰り上げてくるとは思わなかったな。
日曜日に到着でも相当のものだと思っていたのに。
そうさせてしまうくらい、直くんの存在が大きいのだろう。
電話を切ってすぐに声をかけてきた昇に答えるように、父が明日帰国して直くんに会いにくる旨を伝えると、直くんは頬を赤らめながらも嬉しそうにしていた。
堅物な父を怖がりはしないかと不安だったが、賢将さんともかなり打ち解けているし、直くんの中ではおじいちゃんのイメージが優しくていい人となっているのかもしれない。
絢斗に気を遣わせることだけが心配だったが、明日の泊まりについて絢斗の方から声をかけてくれた。
絢斗の優しい気持ちに甘えて、明日はうちに泊まってもらうことになった。
私の代わりに昇と直くんが客間の準備をしてくれることになり、部屋に入っていく二人を見送ってから絢斗を抱きしめた。
「絢斗。ありがとう」
「お礼なんていらないよ。だって、家族なんだから。それにきっと直くん……お義父さんとすごく仲良しになると思うよ」
「そうか?」
「うん。だって、卓さんと昇くん、お義父さんに似てるもん。だから安心して寄っていくと思う。それだけ卓さんと昇くんのことが安心する存在ってことだよ。だから、明日は家族団欒を楽しもう!」
「絢斗……」
絢斗の優しい言葉に私は嬉しくてたまらなかった。
それから絢斗の今日の報告を聞きながら夕食の支度を済ませ、食事が出来上がったところで昇と直くんがダイニングルームにやってきた。
「あれなら余裕で泊まれるよ」
「そうか、ありがとう。じゃあご飯にしよう」
みんなで食卓を囲み、食事を始めると
「そういえばさっき途中になってたんだけど、土日のどっちかで村山とカールと遊びたいんだ。いいかな?」
「それは構わないが、どこかに出かけるのか?」
「うーん、それはまだ考えてないけどとりあえず予定だけ聞かれたんだ」
「そうか。父さんが泊まるなら土曜日はバタバタするかもしれないな。日曜日にしたらどうだ?」
「そうだね。わかった。村山に話しておくよ」
せっかく日本に来ているのだからどこかに出かけるのだろうが、昇と龍弥くんだけに直くんとカールくんを任せるのは心配だな。もし出かけるなら私たちもついていくとするかな。
1,247
お気に入りに追加
2,262
あなたにおすすめの小説
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。

春を拒む【完結】
璃々丸
BL
日本有数の財閥三男でΩの北條院環(ほうじょういん たまき)の目の前には見るからに可憐で儚げなΩの女子大生、桜雛子(さくら ひなこ)が座っていた。
「ケイト君を解放してあげてください!」
大きなおめめをうるうるさせながらそう訴えかけてきた。
ケイト君────諏訪恵都(すわ けいと)は環の婚約者であるαだった。
環とはひとまわり歳の差がある。この女はそんな環の負い目を突いてきたつもりだろうが、『こちとらお前等より人生経験それなりに積んどんねん────!』
そう簡単に譲って堪るか、と大人げない反撃を開始するのであった。
オメガバな設定ですが設定は緩めで独自設定があります、ご注意。
不定期更新になります。

我が家に子犬がやって来た!
もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。
アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。
だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。
この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。
※全102話で完結済。
★『小説家になろう』でも読めます★


病弱を演じていた性悪な姉は、仮病が原因で大変なことになってしまうようです
柚木ゆず
ファンタジー
優秀で性格の良い妹と比較されるのが嫌で、比較をされなくなる上に心配をしてもらえるようになるから。大嫌いな妹を、召し使いのように扱き使えるから。一日中ゴロゴロできて、なんでも好きな物を買ってもらえるから。
ファデアリア男爵家の長女ジュリアはそんな理由で仮病を使い、可哀想な令嬢を演じて理想的な毎日を過ごしていました。
ですが、そんな幸せな日常は――。これまで彼女が吐いてきた嘘によって、一変してしまうことになるのでした。

俺の親友がモテ過ぎて困る
くるむ
BL
☆完結済みです☆
番外編として短い話を追加しました。
男子校なのに、当たり前のように毎日誰かに「好きだ」とか「付き合ってくれ」とか言われている俺の親友、結城陽翔(ゆうきはるひ)
中学の時も全く同じ状況で、女子からも男子からも追い掛け回されていたらしい。
一時は断るのも面倒くさくて、誰とも付き合っていなければそのままOKしていたらしいのだけど、それはそれでまた面倒くさくて仕方がなかったのだそうだ(ソリャソウダロ)
……と言う訳で、何を考えたのか陽翔の奴、俺に恋人のフリをしてくれと言う。
て、お前何考えてんの?
何しようとしてんの?
……てなわけで、俺は今日もこいつに振り回されています……。
美形策士×純情平凡♪

【完結】テルの異世界転換紀?!転がり落ちたら世界が変わっていた。
カヨワイさつき
BL
小学生の頃両親が蒸発、その後親戚中をたらいまわしにされ住むところも失った田辺輝(たなべ てる)は毎日切り詰めた生活をしていた。複数のバイトしていたある日、コスプレ?した男と出会った。
異世界ファンタジー、そしてちょっぴりすれ違いの恋愛。
ドワーフ族に助けられ家族として過ごす"テル"。本当の両親は……。
そして、コスプレと思っていた男性は……。

婚約破棄 ~家名を名乗らなかっただけ
青の雀
恋愛
シルヴィアは、隣国での留学を終え5年ぶりに生まれ故郷の祖国へ帰ってきた。
今夜、王宮で開かれる自身の婚約披露パーティに出席するためである。
婚約者とは、一度も会っていない親同士が決めた婚約である。
その婚約者と会うなり「家名を名乗らない平民女とは、婚約破棄だ。」と言い渡されてしまう。
実は、シルヴィアは王女殿下であったのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる