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父のプライド

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<side卓>

ホットプレートを持ち帰って、倉橋くんがくれた食材で早速ステーキを楽しんだ。
想像以上のおいしさと使いやすさに喜んでいると絢斗が今度はこれで餃子を焼きたいと言い出した。

中谷くんも娘さんと楽しんでいると言っていたし、この火力なら美味しい餃子が焼けるだろう。
直くんも喜びそうだし、近いうちにしようかというと、

「あ、それなら皐月も呼ぼうよ」

と言い出した。

おそらく今日久しぶりに会って喋ったことで、直くんに会いたいという鳴宮くんの熱が高まったのだろう。
志良堂に餃子を作ってもらって、ついでに直くんが気になっている真琴くんの話をしたらいいという話の流れに太刀打ちできるはずもなく私は志良堂に連絡することになった。

いや、別に志良堂に連絡することが嫌なわけではない。
餃子は志良堂の得意料理の一つだし、絢斗もそれを知っているからこその発言だ。
それにずっと鳴宮くんに直くんを会わせたいと言っていたからちょうどいい。

それはわかっている。
だが……何となく気が進まないのは、志良堂が賢将さんとよく似たタイプで直くんのような子から好かれやすいからだろう。

でもここで会わせるのを回避したとしてもいずれは必ず会うことになるんだ
それなら今、しっかりと私の実の息子になった直くんだと見せつけておくほうかいいか。

自分にそう言い聞かせて、食事の後で後片付けを昇に任せて、早速志良堂に連絡した。

ー磯山。久しぶりだな。

ーああ、今大丈夫か?

ーかまわないよ。今日は緑川くんが久しぶりに大学に来ていたから皐月が喜んでいたよ。

ー絢斗もだよ。教授会より鳴宮くんと会う方がメインだったみたいだ。

ーそれでどうした? 電話なんて珍しいな。

ーああ。近いうちに志良堂と鳴宮くんを我が家に招待したいと思って連絡したんだよ。

ーそれこそ珍しいな。どうした?

私は今日の出来事を全て話し、直くんのために絢斗が鳴宮くんたちを呼んで餃子パーティーをしたがっていると告げた。

ー私の可愛い息子を志良堂に見せてやるよ。羨ましがるくらい、可愛い息子だからな。

ーははっ。磯山のそんなところが見られるならぜひ行きたいものだな。だが、それならうちに来ないか?

ー志良堂の家に?

ーああ。ちょうど来週末に伊織が悠真くんを連れてくるんだ。真琴くんたちも来てうちで一緒に食事をする予定になっていたから、その日を餃子パーティーにしたらいい。

ーそれは楽しそうだな。ただ、直くんがあまりの人の多さに緊張しなければいいが……。

ーそれは大丈夫だろう。皐月もいるし、悠真くんも人への接し方は慣れているし、直くんは真琴くんにも会いたいと言っていたんだろう?

ーそう、だな。じゃあ、その方向で頼むよ。

ーああ、皐月と伊織たちにも話しておくよ。当日はそのホットプレートを持ってきてくれ。うちにもあるが、そのほうが一度にたくさん焼けるだろう?

ーわかった。

あっという間に話がまとまり電話を切った。

志良堂だけじゃなく、安慶名くんと成瀬くんもいるのか……。
あんな若い子たちに流石に嫉妬はしないが、直くんには私がかっこいいと思われたいものだ。
それが父親としてのプライドというものなのかもしれない。


部屋を出てリビングに向かうと、絢斗が直くんと楽しそうにスマホを見ていた。
昇はちょうど片付けが終わったようでキッチンから出てくるところだった。

「あ、伯父さん。電話終わったの?」

「ああ」

「卓さん、どうだった?」

私たちの会話に気づいた絢斗が声をかけてきた。

「ああ。ちょうど来週末に安慶名くんたちが志良堂の家に集まるみたいで、家に招待されたよ。あっちで餃子パーティーをしようと言っていた」

「わぁー! 悠真くんたちもいるんだ!」

「ああ、直くんが気になっていた真琴くんも来るそうだよ」

その言葉に直くんは嬉しそうに目を輝かせていた。
よっぽどあの天使が気に入ったようだな。もしかしたら何か思い出でもあったのか? いや、まさかな。

「じゃあ、来週末は楽しみだね」

「はい。週末の度に楽しい予定が入るから嬉しいです」

「うん。そうだね。その前に、一花ちゃんの家に行く予定もあるし!」

「はい! 僕……お土産渡すの楽しみです」

「きっとみんな喜んでくれるよ」

木曜日だったな。
その日は仕事を早く終わらせて征哉くんの家に迎えに行かないと!

中谷くんにも伝えてあるからきっとスケジュールも整えてくれていることだろう。

そうして、あっという間に絢斗と直くんが征哉くんの家に向かう日がやってきた。
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