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ホットプレートを買おう
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<side卓>
裁判所での仕事の休憩時間にスマホを確認すると、賢将さんからメッセージと画像、そして動画まで送られてきていた。
さっとワイヤレスイヤホンを装着し、メッセージと画像を確認してから動画を見ようかと思ったが、画像だけで私の心は鷲掴みにされてしまった。
可愛い三角巾とエプロンを身につけ、saraさんからプレゼントされた小さなペンギンと一緒に笑顔を見せる直くんの姿。自分もその場にいたかったという嫉妬もありつつも、この姿を見ることができる感謝の気持ちでいっぱいだ。
その写真で昼に何かを作ったんだろうなということは想像できた。それがこの動画だろう。
どんな可愛い姿が映っているのだろうと少しドキドキしながら再生すると、そこには賢将さんと一緒に熱々のホットプレートを前にお好み焼きを作る直くんの姿があった。
火傷をさせたくない、危険なことはさせたくないと思っていたが、賢将さんに助けられながら熱々のホットプレートでお好み焼きを作る直くんがとても楽しそうに見えて、こういう経験も大事だと気づいた。
一緒に住み始めたばかりの頃、手伝いたいという絢斗に手伝ってもらったがその危なっかしい姿を見ていたから、直くんに対してもつい過保護になってしまう癖がついてしまったようだ。
もちろん危険なことは絶対にさせないが、一緒に料理を作るのは楽しんでもいいのかもしれない。
すぐに賢将さんに返信を送り、
「中谷くん。君は家で娘さんと、ホットプレートでお好み焼きを作ったりするかい?」
今日は助手としてついてきてくれていた中谷くんに声をかけてみた。
「えっ? お好み焼き、ですか? ええ。たまにしますよ。うちの子も目の前で焼けるのが楽しいみたいで、お好み焼きだけじゃなくて、焼肉や餃子を焼いたり……あとは、クリスマスにはチーズフォンデュもしましたね。パンケーキなんかも楽しいですよ」
「それは楽しそうだな……」
「先生、急にホットプレートなんてどうかしました?」
「いや、直くんが賢将さんとホットプレートでお好み焼きを焼いて食べたみたいなんだ。それが楽しい様子だったから我が家でもホットプレートを買おうかと思ってね」
「ああ、そういうことですか。それならうちで使っているホットプレートをお勧めしますよ」
中谷くんは上着の内ポケットからスマホを取り出すとささっと操作をして、画面を見せてくれた。
「これです」
「あ、これ……」
「先生、ご存知ですか?」
「いや、賢将さんが使っているものと同じものだよ」
「ああ、そうなんですね。これ、すごく使いやすいのでお勧めですよ。プロ仕様の鉄板なので、そのままステーキも目の前で美味しく焼けますし、付属のプレートをつけたらたこ焼きや可愛い形のパンケーキも焼けるんですよ、ほら」
可愛いクマのパンケーキが出てきて思わず笑ってしまう。
「なるほど、これなら直くんだけじゃなく絢斗も喜びそうだな」
「しかもこれ、あの倉橋さんが開発したものなんです」
「えっ? ああ、そういうことか……」
なるほど。それなら賢将さんがそのホットプレートを使っていたのは納得だ。きっと今住んでいる家に常備されていたのだろう。なんせ、賢将さんが住んでいる家は元々その倉橋くんの持ち物なのだからな。
「それならすぐに購入するとしよう。これはどこに売っているのかな?」
「一般販売はされてないので、このサイトから購入することになりますね。多分三日以内には届くかと……」
「そうか……ならすぐに注文するとしよう」
紹介制だというそのサイトのURLを教えてもらい、必要事項を記入して購入ボタンを押した。
これで週末には家族で楽しめるな。
なんて思っていると、数分後スマホが上着の内ポケットの中で振動を伝えた。
画面を見てみると、さっき話に出たばかりの倉橋くんの名前があった。
私は急いで休憩室を出て電話ルームに向かった。
電話ボックスのようなその個室は外の音を全て遮断し、中の声も漏らさない。
ーもしもし、倉橋くん。
ー磯山先生、ご無沙汰しています。お元気ですか?
ーああ。おかげさまで元気にしているよ。先日は私の可愛い息子の件で君と父上にはお世話になったね。ありがとう。
ーいえ、私は何も。ただ、彼らが出てきた後は任せてください。一生先生たちご家族には近づかせないようにしますから。
ーははっ。心強いよ。それで、いきなり連絡なんてどうしたんだ?
ー先生、今ホットプレートを注文されたでしょう?
ーああ。そうだよ。うちの事務員の中谷くんにおすすめされてね。
ー実は今、試作品が手元にあるのでそれを使って感想を教えていただきたくてご連絡したんです。
ーえっ? 試作品?
ーはい。既存のホットプレートをバージョンアップさせているので、使っていただけたらありがたいんです。お代は要りませんのでどうですか?
ー試作品を使わせてもらうのは構わないが、代金は取ってもらわないと困るぞ。
そこだけは譲れない。
ーわかりました。お代は注文された値段でそのままいただきます。今日受け取りに来られますか?
ーああ。もちろん。
ーそれじゃあ『テリフィックオフィス』の事務所でお待ちしてますね。いつ来て下さっても構いませんから。
ーありがとう。それじゃあ、後で。
電話を切った私の心は弾んでいた。
なんといっても今日持ち帰ることができるんだ。早速何か食材を買って帰るとしようか。
絢斗と直くんの喜ぶ顔が楽しみだ。
裁判所での仕事の休憩時間にスマホを確認すると、賢将さんからメッセージと画像、そして動画まで送られてきていた。
さっとワイヤレスイヤホンを装着し、メッセージと画像を確認してから動画を見ようかと思ったが、画像だけで私の心は鷲掴みにされてしまった。
可愛い三角巾とエプロンを身につけ、saraさんからプレゼントされた小さなペンギンと一緒に笑顔を見せる直くんの姿。自分もその場にいたかったという嫉妬もありつつも、この姿を見ることができる感謝の気持ちでいっぱいだ。
その写真で昼に何かを作ったんだろうなということは想像できた。それがこの動画だろう。
どんな可愛い姿が映っているのだろうと少しドキドキしながら再生すると、そこには賢将さんと一緒に熱々のホットプレートを前にお好み焼きを作る直くんの姿があった。
火傷をさせたくない、危険なことはさせたくないと思っていたが、賢将さんに助けられながら熱々のホットプレートでお好み焼きを作る直くんがとても楽しそうに見えて、こういう経験も大事だと気づいた。
一緒に住み始めたばかりの頃、手伝いたいという絢斗に手伝ってもらったがその危なっかしい姿を見ていたから、直くんに対してもつい過保護になってしまう癖がついてしまったようだ。
もちろん危険なことは絶対にさせないが、一緒に料理を作るのは楽しんでもいいのかもしれない。
すぐに賢将さんに返信を送り、
「中谷くん。君は家で娘さんと、ホットプレートでお好み焼きを作ったりするかい?」
今日は助手としてついてきてくれていた中谷くんに声をかけてみた。
「えっ? お好み焼き、ですか? ええ。たまにしますよ。うちの子も目の前で焼けるのが楽しいみたいで、お好み焼きだけじゃなくて、焼肉や餃子を焼いたり……あとは、クリスマスにはチーズフォンデュもしましたね。パンケーキなんかも楽しいですよ」
「それは楽しそうだな……」
「先生、急にホットプレートなんてどうかしました?」
「いや、直くんが賢将さんとホットプレートでお好み焼きを焼いて食べたみたいなんだ。それが楽しい様子だったから我が家でもホットプレートを買おうかと思ってね」
「ああ、そういうことですか。それならうちで使っているホットプレートをお勧めしますよ」
中谷くんは上着の内ポケットからスマホを取り出すとささっと操作をして、画面を見せてくれた。
「これです」
「あ、これ……」
「先生、ご存知ですか?」
「いや、賢将さんが使っているものと同じものだよ」
「ああ、そうなんですね。これ、すごく使いやすいのでお勧めですよ。プロ仕様の鉄板なので、そのままステーキも目の前で美味しく焼けますし、付属のプレートをつけたらたこ焼きや可愛い形のパンケーキも焼けるんですよ、ほら」
可愛いクマのパンケーキが出てきて思わず笑ってしまう。
「なるほど、これなら直くんだけじゃなく絢斗も喜びそうだな」
「しかもこれ、あの倉橋さんが開発したものなんです」
「えっ? ああ、そういうことか……」
なるほど。それなら賢将さんがそのホットプレートを使っていたのは納得だ。きっと今住んでいる家に常備されていたのだろう。なんせ、賢将さんが住んでいる家は元々その倉橋くんの持ち物なのだからな。
「それならすぐに購入するとしよう。これはどこに売っているのかな?」
「一般販売はされてないので、このサイトから購入することになりますね。多分三日以内には届くかと……」
「そうか……ならすぐに注文するとしよう」
紹介制だというそのサイトのURLを教えてもらい、必要事項を記入して購入ボタンを押した。
これで週末には家族で楽しめるな。
なんて思っていると、数分後スマホが上着の内ポケットの中で振動を伝えた。
画面を見てみると、さっき話に出たばかりの倉橋くんの名前があった。
私は急いで休憩室を出て電話ルームに向かった。
電話ボックスのようなその個室は外の音を全て遮断し、中の声も漏らさない。
ーもしもし、倉橋くん。
ー磯山先生、ご無沙汰しています。お元気ですか?
ーああ。おかげさまで元気にしているよ。先日は私の可愛い息子の件で君と父上にはお世話になったね。ありがとう。
ーいえ、私は何も。ただ、彼らが出てきた後は任せてください。一生先生たちご家族には近づかせないようにしますから。
ーははっ。心強いよ。それで、いきなり連絡なんてどうしたんだ?
ー先生、今ホットプレートを注文されたでしょう?
ーああ。そうだよ。うちの事務員の中谷くんにおすすめされてね。
ー実は今、試作品が手元にあるのでそれを使って感想を教えていただきたくてご連絡したんです。
ーえっ? 試作品?
ーはい。既存のホットプレートをバージョンアップさせているので、使っていただけたらありがたいんです。お代は要りませんのでどうですか?
ー試作品を使わせてもらうのは構わないが、代金は取ってもらわないと困るぞ。
そこだけは譲れない。
ーわかりました。お代は注文された値段でそのままいただきます。今日受け取りに来られますか?
ーああ。もちろん。
ーそれじゃあ『テリフィックオフィス』の事務所でお待ちしてますね。いつ来て下さっても構いませんから。
ーありがとう。それじゃあ、後で。
電話を切った私の心は弾んでいた。
なんといっても今日持ち帰ることができるんだ。早速何か食材を買って帰るとしようか。
絢斗と直くんの喜ぶ顔が楽しみだ。
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