上 下
240 / 287

可愛い孫と一緒に

しおりを挟む
<side賢将>

<今からお父さんの家に向かうね。絢斗>

家を出る前に連絡がほしいと伝えておいたから、絢斗が簡潔ながらもちゃんと送ってきてくれた。

もうすぐここに絢斗と直くんが来ると思ったら落ち着いていられず最後の確認をして玄関まで迎えに行った。

すぐに降ろして大学に向かう絢斗には、玄関のすぐ近くにある来客用の駐車場に車を置くように伝えておいたから、ここにいれば車が来たらすぐにわかるだろう。

「おはようございます。緑川さま。何かお手伝いいたしましょうか?」

私の姿を見てコンシェルジュの山之内やまのうちくんがすぐに声をかけてくれる。さすが祐悟くんのマンションのコンシェルジュだな。

「おはよう。ありがとう。だが手伝いは必要ないよ。今から我が家に息子と孫が来るんだ。待ちきれなくて迎えに下りてきただけなんだよ」

「そうでございましたか。ご子息とお孫さまが……。それは楽しみでございますね」

「ああ。息子が仕事の間孫を預かるんだが、本当に可愛い孫でね。ただ少し人見知りがあるから、君に紹介するのはまた今度かな」

「承知いたしました」

そんな話をしているうちに、来客用駐車場に一台の車が入ってくるのが見えた。
絢斗好みの丸いフォルムの小さな車。相変わらずだな。
初めて車を買ってあげた時から、絢斗の好みは変わらない。
あの可愛い車が絢斗にはよく似合っている。

待ちきれずに駐車場まで迎えに行った。

「絢斗! 直くん!」

車の中から駆け寄っていく私の姿を見つけた直くんが可愛い笑顔を見せる。

それだけでたまらなく嬉しい。

運転席と助手席のどちらを最初に開けるべきかしばし悩んだが、絢斗がさっと自分で扉を開け出てきたから、私は助手席の扉を開けて直くんを迎えた。

「いらっしゃい。直くんが来てくれるのを楽しみにしていたよ」

「おじいちゃん、今日はよろしくお願いします」

「ああ。自分の家だと思って過ごしてくれたらいいからな。んっ? 可愛いペンギンちゃんも連れてきてくれたのか?」

「――っ、はい! おじいちゃんに見せたくて……」

「そうか、ありがとう」

嬉しそうに小さなペンギンちゃんに直くんが視線を落とすのを見て、私はそっと絢斗に視線を向けた。

「お父さん、これ直くんの着替えとか入ってるからもし必要なことになったら使って」

「ああ、ありがとう。だが、うちにももう揃えているから大丈夫だと思うよ」

「お父さん、いつの間に……」

絢斗は少し驚きながらも、私の直くんへの気持ちに安心したようだ。

「じゃあ、直くん。私行くね。夕方迎えにくるからお父さん、直くんをよろしくね」

「ああ、行っておいで」

「あやちゃん、行ってらっしゃい」

私たちに見送られて絢斗は笑顔で駐車場から出ていった。

「さて、と。じゃあ、おじいちゃんの家に行こうか」

「はい」

可愛いペンギンちゃんを抱っこした直くんの手を握り、マンションの中に入ると、山之内くんは笑顔で私たちを見つめるだけで声をかけてこなかった。

すると、直くんが

「あ、あの……こんにちは」

と山之内くんに挨拶をして頭を下げた。

ああ、なんて素直で礼儀正しい子なんだろう。

山之内くんは直くんからの挨拶に笑顔を見せていた。

「こんにちは。今日はおじいちゃんと楽しくお過ごしくださいね」

「――っ、はい!」

山之内くんからの優しい声掛けに直くんは嬉しそうに返事をしていた。

セキュリティ万全の玄関を通り、エレベーターに向かい、指紋認証でエレベーターに乗り込むと

「おじいちゃん、魔法使いみたいです」

と目をキラキラと輝かせて可愛い顔を見せてくれる。

ああ、もうこの子は本当に可愛らしい。

自宅に到着し、玄関を開けて中に入れると、

「わぁー! 広い!」

と嬉しそうな声が響いた。

靴を脱がせリビングに案内すると、やはり一番最初に目に飛び込んでくるのは大きな窓から見える美しい景色だろう。

「わぁー!! すごく高い!!」

はしゃぐ直くんを見ているだけで楽しくなる。

直くんが窓の外を見て楽しんでいる間に、私はキッチンに行き、ジュースを入れて持ってきた。

「さぁ、喉が渇いただろう。おいで」

私の声掛けにすぐにソファーにやってきて、私の隣にちょこんと座る。
本当に子どもの頃の絢斗が戻ってきたみたいだ。

用意しておいたリンゴジュースを飲ませると、美味しそうに一気に飲み切った。
そんなところも絢斗にそっくりだな。

「さて、もうそろそろお昼だが、直くん。一緒に作らないか?」

「えっ? 僕が、おじいちゃんと一緒に? いいんですか?」

「ああ。アフリカでも子どもたちとよく一緒に作っていたものだよ。もう下準備はしてあるから一緒に作ろう!」

「はい! 僕、頑張ります!!」

本当に素直で可愛い直くんとの昼食作り。楽しくなりそうだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

もふもふ相棒と異世界で新生活!! 神の愛し子? そんなことは知りません!!

ありぽん
ファンタジー
[第3回次世代ファンタジーカップエントリー] 特別賞受賞 書籍化決定!! 応援くださった皆様、ありがとうございます!! 望月奏(中学1年生)は、ある日車に撥ねられそうになっていた子犬を庇い、命を落としてしまう。 そして気づけば奏の前には白く輝く玉がふわふわと浮いていて。光り輝く玉は何と神様。 神様によれば、今回奏が死んだのは、神様のせいだったらしく。 そこで奏は神様のお詫びとして、新しい世界で生きることに。 これは自分では規格外ではないと思っている奏が、規格外の力でもふもふ相棒と、 たくさんのもふもふ達と楽しく幸せに暮らす物語。

春を拒む【完結】

璃々丸
BL
 日本有数の財閥三男でΩの北條院環(ほうじょういん たまき)の目の前には見るからに可憐で儚げなΩの女子大生、桜雛子(さくら ひなこ)が座っていた。 「ケイト君を解放してあげてください!」  大きなおめめをうるうるさせながらそう訴えかけてきた。  ケイト君────諏訪恵都(すわ けいと)は環の婚約者であるαだった。  環とはひとまわり歳の差がある。この女はそんな環の負い目を突いてきたつもりだろうが、『こちとらお前等より人生経験それなりに積んどんねん────!』  そう簡単に譲って堪るか、と大人げない反撃を開始するのであった。  オメガバな設定ですが設定は緩めで独自設定があります、ご注意。 不定期更新になります。   

俺の親友がモテ過ぎて困る

くるむ
BL
☆完結済みです☆ 番外編として短い話を追加しました。 男子校なのに、当たり前のように毎日誰かに「好きだ」とか「付き合ってくれ」とか言われている俺の親友、結城陽翔(ゆうきはるひ) 中学の時も全く同じ状況で、女子からも男子からも追い掛け回されていたらしい。 一時は断るのも面倒くさくて、誰とも付き合っていなければそのままOKしていたらしいのだけど、それはそれでまた面倒くさくて仕方がなかったのだそうだ(ソリャソウダロ) ……と言う訳で、何を考えたのか陽翔の奴、俺に恋人のフリをしてくれと言う。 て、お前何考えてんの? 何しようとしてんの? ……てなわけで、俺は今日もこいつに振り回されています……。 美形策士×純情平凡♪

そばかす糸目はのんびりしたい

楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。 母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。 ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。 ユージンは、のんびりするのが好きだった。 いつでも、のんびりしたいと思っている。 でも何故か忙しい。 ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。 いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。 果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。 懐かれ体質が好きな方向けです。今のところ主人公は、のんびり重視の恋愛未満です。 全17話、約6万文字。

そばにいてほしい。

15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。 そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。 ──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。 幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け 安心してください、ハピエンです。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

生まれ変わりは嫌われ者

青ムギ
BL
無数の矢が俺の体に突き刺さる。 「ケイラ…っ!!」 王子(グレン)の悲痛な声に胸が痛む。口から大量の血が噴きその場に倒れ込む。意識が朦朧とする中、王子に最後の別れを告げる。 「グレン……。愛してる。」 「あぁ。俺も愛してるケイラ。」 壊れ物を大切に包み込むような動作のキス。 ━━━━━━━━━━━━━━━ あの時のグレン王子はとても優しく、名前を持たなかった俺にかっこいい名前をつけてくれた。いっぱい話しをしてくれた。一緒に寝たりもした。 なのにー、 運命というのは時に残酷なものだ。 俺は王子を……グレンを愛しているのに、貴方は俺を嫌い他の人を見ている。 一途に慕い続けてきたこの気持ちは諦めきれない。 ★表紙のイラストは、Picrew様の[見上げる男子]ぐんま様からお借りしました。ありがとうございます!

処理中です...