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可愛い孫と一緒に
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<side賢将>
<今からお父さんの家に向かうね。絢斗>
家を出る前に連絡がほしいと伝えておいたから、絢斗が簡潔ながらもちゃんと送ってきてくれた。
もうすぐここに絢斗と直くんが来ると思ったら落ち着いていられず最後の確認をして玄関まで迎えに行った。
すぐに降ろして大学に向かう絢斗には、玄関のすぐ近くにある来客用の駐車場に車を置くように伝えておいたから、ここにいれば車が来たらすぐにわかるだろう。
「おはようございます。緑川さま。何かお手伝いいたしましょうか?」
私の姿を見てコンシェルジュの山之内くんがすぐに声をかけてくれる。さすが祐悟くんのマンションのコンシェルジュだな。
「おはよう。ありがとう。だが手伝いは必要ないよ。今から我が家に息子と孫が来るんだ。待ちきれなくて迎えに下りてきただけなんだよ」
「そうでございましたか。ご子息とお孫さまが……。それは楽しみでございますね」
「ああ。息子が仕事の間孫を預かるんだが、本当に可愛い孫でね。ただ少し人見知りがあるから、君に紹介するのはまた今度かな」
「承知いたしました」
そんな話をしているうちに、来客用駐車場に一台の車が入ってくるのが見えた。
絢斗好みの丸いフォルムの小さな車。相変わらずだな。
初めて車を買ってあげた時から、絢斗の好みは変わらない。
あの可愛い車が絢斗にはよく似合っている。
待ちきれずに駐車場まで迎えに行った。
「絢斗! 直くん!」
車の中から駆け寄っていく私の姿を見つけた直くんが可愛い笑顔を見せる。
それだけでたまらなく嬉しい。
運転席と助手席のどちらを最初に開けるべきかしばし悩んだが、絢斗がさっと自分で扉を開け出てきたから、私は助手席の扉を開けて直くんを迎えた。
「いらっしゃい。直くんが来てくれるのを楽しみにしていたよ」
「おじいちゃん、今日はよろしくお願いします」
「ああ。自分の家だと思って過ごしてくれたらいいからな。んっ? 可愛いペンギンちゃんも連れてきてくれたのか?」
「――っ、はい! おじいちゃんに見せたくて……」
「そうか、ありがとう」
嬉しそうに小さなペンギンちゃんに直くんが視線を落とすのを見て、私はそっと絢斗に視線を向けた。
「お父さん、これ直くんの着替えとか入ってるからもし必要なことになったら使って」
「ああ、ありがとう。だが、うちにももう揃えているから大丈夫だと思うよ」
「お父さん、いつの間に……」
絢斗は少し驚きながらも、私の直くんへの気持ちに安心したようだ。
「じゃあ、直くん。私行くね。夕方迎えにくるからお父さん、直くんをよろしくね」
「ああ、行っておいで」
「あやちゃん、行ってらっしゃい」
私たちに見送られて絢斗は笑顔で駐車場から出ていった。
「さて、と。じゃあ、おじいちゃんの家に行こうか」
「はい」
可愛いペンギンちゃんを抱っこした直くんの手を握り、マンションの中に入ると、山之内くんは笑顔で私たちを見つめるだけで声をかけてこなかった。
すると、直くんが
「あ、あの……こんにちは」
と山之内くんに挨拶をして頭を下げた。
ああ、なんて素直で礼儀正しい子なんだろう。
山之内くんは直くんからの挨拶に笑顔を見せていた。
「こんにちは。今日はおじいちゃんと楽しくお過ごしくださいね」
「――っ、はい!」
山之内くんからの優しい声掛けに直くんは嬉しそうに返事をしていた。
セキュリティ万全の玄関を通り、エレベーターに向かい、指紋認証でエレベーターに乗り込むと
「おじいちゃん、魔法使いみたいです」
と目をキラキラと輝かせて可愛い顔を見せてくれる。
ああ、もうこの子は本当に可愛らしい。
自宅に到着し、玄関を開けて中に入れると、
「わぁー! 広い!」
と嬉しそうな声が響いた。
靴を脱がせリビングに案内すると、やはり一番最初に目に飛び込んでくるのは大きな窓から見える美しい景色だろう。
「わぁー!! すごく高い!!」
はしゃぐ直くんを見ているだけで楽しくなる。
直くんが窓の外を見て楽しんでいる間に、私はキッチンに行き、ジュースを入れて持ってきた。
「さぁ、喉が渇いただろう。おいで」
私の声掛けにすぐにソファーにやってきて、私の隣にちょこんと座る。
本当に子どもの頃の絢斗が戻ってきたみたいだ。
用意しておいたリンゴジュースを飲ませると、美味しそうに一気に飲み切った。
そんなところも絢斗にそっくりだな。
「さて、もうそろそろお昼だが、直くん。一緒に作らないか?」
「えっ? 僕が、おじいちゃんと一緒に? いいんですか?」
「ああ。アフリカでも子どもたちとよく一緒に作っていたものだよ。もう下準備はしてあるから一緒に作ろう!」
「はい! 僕、頑張ります!!」
本当に素直で可愛い直くんとの昼食作り。楽しくなりそうだ。
<今からお父さんの家に向かうね。絢斗>
家を出る前に連絡がほしいと伝えておいたから、絢斗が簡潔ながらもちゃんと送ってきてくれた。
もうすぐここに絢斗と直くんが来ると思ったら落ち着いていられず最後の確認をして玄関まで迎えに行った。
すぐに降ろして大学に向かう絢斗には、玄関のすぐ近くにある来客用の駐車場に車を置くように伝えておいたから、ここにいれば車が来たらすぐにわかるだろう。
「おはようございます。緑川さま。何かお手伝いいたしましょうか?」
私の姿を見てコンシェルジュの山之内くんがすぐに声をかけてくれる。さすが祐悟くんのマンションのコンシェルジュだな。
「おはよう。ありがとう。だが手伝いは必要ないよ。今から我が家に息子と孫が来るんだ。待ちきれなくて迎えに下りてきただけなんだよ」
「そうでございましたか。ご子息とお孫さまが……。それは楽しみでございますね」
「ああ。息子が仕事の間孫を預かるんだが、本当に可愛い孫でね。ただ少し人見知りがあるから、君に紹介するのはまた今度かな」
「承知いたしました」
そんな話をしているうちに、来客用駐車場に一台の車が入ってくるのが見えた。
絢斗好みの丸いフォルムの小さな車。相変わらずだな。
初めて車を買ってあげた時から、絢斗の好みは変わらない。
あの可愛い車が絢斗にはよく似合っている。
待ちきれずに駐車場まで迎えに行った。
「絢斗! 直くん!」
車の中から駆け寄っていく私の姿を見つけた直くんが可愛い笑顔を見せる。
それだけでたまらなく嬉しい。
運転席と助手席のどちらを最初に開けるべきかしばし悩んだが、絢斗がさっと自分で扉を開け出てきたから、私は助手席の扉を開けて直くんを迎えた。
「いらっしゃい。直くんが来てくれるのを楽しみにしていたよ」
「おじいちゃん、今日はよろしくお願いします」
「ああ。自分の家だと思って過ごしてくれたらいいからな。んっ? 可愛いペンギンちゃんも連れてきてくれたのか?」
「――っ、はい! おじいちゃんに見せたくて……」
「そうか、ありがとう」
嬉しそうに小さなペンギンちゃんに直くんが視線を落とすのを見て、私はそっと絢斗に視線を向けた。
「お父さん、これ直くんの着替えとか入ってるからもし必要なことになったら使って」
「ああ、ありがとう。だが、うちにももう揃えているから大丈夫だと思うよ」
「お父さん、いつの間に……」
絢斗は少し驚きながらも、私の直くんへの気持ちに安心したようだ。
「じゃあ、直くん。私行くね。夕方迎えにくるからお父さん、直くんをよろしくね」
「ああ、行っておいで」
「あやちゃん、行ってらっしゃい」
私たちに見送られて絢斗は笑顔で駐車場から出ていった。
「さて、と。じゃあ、おじいちゃんの家に行こうか」
「はい」
可愛いペンギンちゃんを抱っこした直くんの手を握り、マンションの中に入ると、山之内くんは笑顔で私たちを見つめるだけで声をかけてこなかった。
すると、直くんが
「あ、あの……こんにちは」
と山之内くんに挨拶をして頭を下げた。
ああ、なんて素直で礼儀正しい子なんだろう。
山之内くんは直くんからの挨拶に笑顔を見せていた。
「こんにちは。今日はおじいちゃんと楽しくお過ごしくださいね」
「――っ、はい!」
山之内くんからの優しい声掛けに直くんは嬉しそうに返事をしていた。
セキュリティ万全の玄関を通り、エレベーターに向かい、指紋認証でエレベーターに乗り込むと
「おじいちゃん、魔法使いみたいです」
と目をキラキラと輝かせて可愛い顔を見せてくれる。
ああ、もうこの子は本当に可愛らしい。
自宅に到着し、玄関を開けて中に入れると、
「わぁー! 広い!」
と嬉しそうな声が響いた。
靴を脱がせリビングに案内すると、やはり一番最初に目に飛び込んでくるのは大きな窓から見える美しい景色だろう。
「わぁー!! すごく高い!!」
はしゃぐ直くんを見ているだけで楽しくなる。
直くんが窓の外を見て楽しんでいる間に、私はキッチンに行き、ジュースを入れて持ってきた。
「さぁ、喉が渇いただろう。おいで」
私の声掛けにすぐにソファーにやってきて、私の隣にちょこんと座る。
本当に子どもの頃の絢斗が戻ってきたみたいだ。
用意しておいたリンゴジュースを飲ませると、美味しそうに一気に飲み切った。
そんなところも絢斗にそっくりだな。
「さて、もうそろそろお昼だが、直くん。一緒に作らないか?」
「えっ? 僕が、おじいちゃんと一緒に? いいんですか?」
「ああ。アフリカでも子どもたちとよく一緒に作っていたものだよ。もう下準備はしてあるから一緒に作ろう!」
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