ひとりぼっちになった僕は新しい家族に愛と幸せを教えてもらいました

波木真帆

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可愛い孫のために

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<side直純>

美味しいカレーを食べて満足していたところに、あやちゃんから明日お仕事で家を空けると聞かされた。
下にパパもいるからと思ったけれど、パパも午後は出かけてしまうみたい。

ここにきて誰もいない家で過ごすことは初めてだけど、いつまでもわがままを言っていられない。
家族になったんだし、僕もお留守番できるようにならないと!

僕にはクマさんたちもペンギンくんもついているから大丈夫。心強い仲間だもんね。
でもちょっとドキドキしちゃうけどな。

なんて思っていたことに気づかれたのか、あやちゃんがおじいちゃんを呼ぼうと言ってくれた。
正直に言っておじいちゃんがいるならものすごく心強い。
おじいちゃんが用事があるなら、その時はクマさんとペンギンくんと一緒に頑張ろう!

早速おじいちゃんに電話をかけに行っていたあやちゃんが戻ってきた。

「明日、お父さん大丈夫だって」

「わぁー、嬉しいです!」

「それで、うちに来てもらうか、お父さんの家に行くかどっちでもいいって言ってくれているんだけど、直くんはどっちがいい?」

「えっ……」

おじいちゃんの家に、行ける?

――俺、週末はじいちゃん家に行くんだ。

小学生の時、自慢げに話していたクラスメイトを思い出す。

僕には祖父母がいない。両親ともに一人っ子だと聞いていたから、親戚もいない。
だから祖父母や親戚の家に行くなんて機会は一度もなかった。

学校と塾以外はいつも家にいて、クラスメイトの家すら行ったことも無い。

そんな僕が、おじいちゃんの家に行ける日がとうとうやってきたんだ!

「ぼ、僕……おじいちゃんの家に行ってみたいです!!」

「そっか。じゃあ、お父さんに連絡しておくね。明日、私が出かけるときに直くんをお父さんの家に送って行くことにするよ」

あやちゃんは嬉しそうにいうと、その場ですぐにおじいちゃんにメッセージを送っていた。

するとすぐにおじいちゃんからも返信が来たみたいだ。

「直くん、お父さんすごく楽しみにしてるって。お昼ご飯はお父さんが用意してくれるみたいだから、少し早めに出ようね」

「――っ!! はい!!」

明日、おじいちゃんの家に行ける!! それがものすごく嬉しかった。


<side賢将>

<直くん、お父さんの家に行ってみたいんだって。だから、明日はお父さんの家で預かって>

「やった!」

絢斗からそんなメッセージが来て、私は思わず声に出して喜んでしまった。
そうか、私の家に来たいのか。ああ、本当に可愛い。

可愛い孫とできるだけ長く過ごしたくて、午後からと言われていたがお昼を用意するというと、絢斗は私の気持ちを汲んで少し早めに届けると言ってくれた。

絢斗も一緒に昼食でも構わないと思ったが、絢斗は皐月くんと一緒に食べるから気にしないでいいよとメッセージを送ってきた。可愛い息子の気遣いに感謝しながら、今度は卓くんにメッセージを送った。

明日の昼食に直くんの嫌いなものを入れるわけにはいかない。アレルギーの有無も含めて尋ねると、ブロッコリーは少しトラウマがあるようだが、そのほかはなんでも食べられるようになってきたようだ。食事量はまだまだ少ないようだが、それでも卓くんの頑張りが手に取るようにわかる。それは一緒に送ってきてくれた、これまでの直くんの食事の推移を示したメモ書きのおかげだ。

これを見ると、家に来た当初は本当に酷いものだったとわかる。それがここまで食べられるようになったか……。
本当に卓くんは頑張っているな。

それから私は家の片付けを始めた。
ここに住み始めたばかりで大して汚れてもいないし、直くんにみられて困るようなものもおいていないが、可愛い孫が来ると思ったらなんだか落ち着かない。

直くんが来る日の朝から、昼寝もするかもしれないと思って直くん用の布団を用意し、着替えることもあるかもしれないと思って清吾に可愛い義息子の洋服をどこで買っているかを聞き、急いで幾つかの服を買いに行って戻ってくると、清吾の息子である祐悟くんから直くん用のトイレタリー用品が送られてきていた。

直くんに使える肌に優しいそれらの製品は、祐悟くんが開発したもので秋穂と暮らしていた時も秋穂のために使わせて貰っていたが、ここにあるものは私が知っているそれよりも種類も多くなっているようだ。きっと祐悟くんが愛しい子のためにさらに開発したのだろう。それらは彼の愛しい子だけでなく、凌也くんのところのあの可愛い子も使っているようだ。もちろん、絢斗の家でも同じものを揃えているようで安心だ。

私だけが暮らすこの家には必要ないものだが、これからも直くんが来てくれるのなら用意しておくに越したことはない。祐悟くんの気遣いに感謝しながら私は絢斗が直くんを連れてきてくれるのを今か今かと待った。
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