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伯父さんの功績

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<side昇>

ペンギンのぬいぐるみを抱きしめたまま、車の中で眠ってしまった直くんを無事にベッドに寝かせることができた。直くんにとってこの週末は初めてのことばかりで大変だっただろうが、それ以上に楽しいものになったに違いない。

念の為に熱を出していないか確認したけれど、今のところは大丈夫そうだ。

しばらく直くんの寝顔を堪能してから、自分の着替えを済ませた。

直くんはよほど疲れているようでまだ起きそうな気配はない。伯父さんも長時間の運転で疲れているだろうから、夕食作りを代わろうかと思って、リビングに向かうとちょうど伯父さんが部屋から出てくるところが見えた。

「昇、直くんはまだ寝ているのか?」

「うん。もう少し寝そうだから、夕食作りを代わろうかと思ったんだけど何かあった?」

「ああ。お前にも話しておこう。そこに座ってくれ」

「あ、うん。わかった」

伯父さんの表情が旅行中のそれとは違ってかなり真剣だったから、直くんに関することに間違いないと思った。
もしかしたら、俺が直くんから聞き出したあの件だろうか。
たとえ、あの医師が見つかったとしても十年近く前のことだ。立証するのは難しいかもしれない。あまり期待はしすぎない方がいいか……。

そんなことを考えながら、絢斗さんも座っているソファーに腰掛けた。

「お前、旅行中にスマホは見ていたか?」

「えっ? いや。直くんのそばではスマホは使わないようにしてたから、写真や動画を撮る以外は見てないよ。何かあった?」

「それならいい。結論から先に言うが、直くんのあの件はすでに解決している」

「えっ? 解決? 解決ってどこまで?」

「加害者を特定し逮捕まで、だよ」

淡々と話をする伯父さんを前に俺は驚きしかなかった。
絢斗さんももちろん驚いていたけれど、

「そうなんだ……よかった……」

と涙を流して喜んでいた。伯父さんはそんな絢斗さんの肩を抱き笑顔を見せていた。

「で、でもまだあれから三日しか……」

「ああ。正確には二日だな。奴は昨夜逮捕されたそうだ。今は取り調べを受けているそうだが、言い逃れできない証拠がたっぷり揃っているから奴の有罪は確定だな」

「なんでそんなにスピード解決したの? 凄すぎじゃない?」

「そのことについては私も驚いているが、賢将さんのおかげだ。賢将さんの友人の方々がみんな協力してくれたみたいだから。本当にありがたいことだよ」

伯父さんが笑顔でそう話す横でずっと話を聞いていた絢斗さんがゆっくりと口を開いた。

「お父さんのおかげだけじゃないよ。もちろんお父さんの友人が協力してくれたのは事実だろうけど、卓さんのこれまでの功績のおかげも大きいと思うよ。みんな卓さんの可愛い息子のことだから協力してくれたんだ。だから卓さんが直くんを守ったんだと思うよ」

「絢斗……」

伯父さんは絢斗さんの言葉にこの上なく嬉しそうな表情を浮かべた。
でも本当にその通りだ。伯父さんがこれまでみんなのためにしてきたからこそ、協力してくれる人も多かったんだろうと思う。伯父さんがどれだけ慕われているかがわかるな。

「あ、伯父さん。じゃあ、さっきのスマホの話って……」

「ああ、そうだった。ほら、これを見てみなさい」

伯父さんは持っていたスマホを操作すると、俺と絢斗さんに画面を見せた。

そこには未就学児に猥褻行為の医師逮捕と大々的に報道されていた。

「こいつが、犯人?」

加害者の顔と名前がしっかりと報道されているのが見えて、腑が煮え繰り返る思いがする。
こいつが幼い直くんにトラウマを植え付けたんだ。絶対に許せない!

「昇、余計なことは考えるなよ。お前がこいつに手を出して、直くんと離れるようなことになったらその方が直くんを傷つけることになるんだからな」

「わかってる。でも、こいつが罪を償って出てきても俺は一生許さない!」

「それは私も同じだ。だが、もう二度と出てくることはないから安心していい」

「それって、どういうこと? 日本には終身刑はないから二度と出てこないなんてことはないはずだけど……」

そんなことは弁護士の伯父さんが一番よくわかっていることだろう。

「私たちの前に顔を出せないということだよ。奴に怒りを感じているのは私たちだけじゃないってことだ」

伯父さんは笑顔こそ見せているが、目の奥は笑っていない。こんな伯父さんは初めてかもしれない。

「直くんの目に触れないならよかったよ。俺は直くんが苦しまないようにずっとそばにいるよ」

「ああ。そうしてやってくれ。直くんのスマホはそういう情報が入ってこないように設定しているから、奴の情報を得ることはできないが、お前のスマホから間違えて情報を見ることがないように注意してくれ」

「わかったよ。十分気をつける。村山たちにも話をしておくから」

直くんと接触がある人間には伝えておいた方がいいだろうからな。

「じゃあ、話は終わりだ。これから夕食を作るから、お前は直くんのそばにいてやりなさい」

「あ、俺。夕食作りを代わろうと思って……」

「もうそろそろ目を覚ますだろう。直くんを寂しがらせるな」

「わかった、ありがとう」

伯父さんの直くんへの気持ちを素直に受け止めて、俺は直くんが寝ている部屋に戻った。


  *   *   *

いつも読んでいただきありがとうございます!
私ごとですが、新たな作業が始まりここ数日、日々の小説の更新が少なくなっています。
しばらくこんな状態が続くと思いますが、できる限り更新していきたいと思っていますのでどうぞご了承ください。
よろしくお願いします♡
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