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みんなのおかげで
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賢将さんの優しさに甘えて直くんの例の件のことは全て任せ、楽しい週末を過ごした。
これほど頼れる存在がいなければあの素晴らしい結婚式の最中も、絢斗との甘い夜も、直くんの初めての観光も全て心ここに在らずだったかもしれない。それほどあの件は許し難いことだった。
賢将さんは倉橋先生にも協力を依頼すると言っていた。だから週明けには報告ができるだろうとかなり心強いことを言ってくれたおかげで楽しい週末を過ごせた。
そのお礼も兼ねて少し早いが、賢将さんに電話をかけた。
ー卓くん。旅行から戻ってきたのか?
ーはい。おかげさまで楽しい週末を過ごせました。
ーそうか。それならよかった。ああ、動画と写真を送ってくれてありがとう。あまりの可愛さに清吾たちに自慢してしまったよ。
ー清吾たち? 倉橋先生以外にもどなたか協力してくださったんですか?
ーああ、そうなんだよ。その様子を見ると、何も情報は聞いていないようだな。
ーえっ? ええ。この週末は直くんが一緒でしたから、テレビやニュースといった類のものは全て遠ざけていましたから。
ーそうだと思っていたよ。よかった、これからもしばらくは直くんからテレビやニュースは遠ざけたままにしておいた方がいい。
ーあの、それはもしかして……
ーああ。もう全て片付いた。直くんにトラウマを植え付けたあの男は昨夜遅くに逮捕された。
その言葉にただただ衝撃しかない。私が情報を提供し賢将さんに伝えた時にはまだ何の情報も得られていなかったのに。もう逮捕されたなんてたった二日の間に一体何が起こったんだろう。
ーもう、ですか?
ーああ。直くんのために友人たちが協力してくれたんだ。その一番の功労者は凌也くんだよ。
ーえっ? 観月くんですか?
絢斗の教え子で私の事務所で働いていたこともある。今は、彼の可愛い伴侶が絢斗の教え子になっているが、その凌也くんが協力をしてくれたというのか。
ーああ。凌也くんは以前、未就学児に猥褻行為をしたとして逮捕され嫌疑不十分で釈放された医師の存在を知って、何かの時のためにその医師の居場所を特定していてくれていたんだ。今回直くんの話を聞いてその医師に違いないとすぐに調査を入れてくれたおかげですぐに逮捕に至ったんだよ。彼の可愛い理央くんもその男の餌食にされそうになっていたから、感情移入したのかもしれない。
ー理央くんが男の餌食に?
ーああ。凌也くんの調査によると、理央くんのいた施設にもその男が医師として出入りしていた形跡があったようだよ。理央くんは例の男の指示もあって幸いその男とは会わずに過ごせたようだけどね。
例の男とは、理央くんの実父で市議会議員の篁のことだ。あいつは自分よりも先に手を出されるのが嫌だったってことか。理央くんへのその執着が結果的にあの男の毒牙から守ったとはなんとも皮肉なものだ。
ーやつの逮捕には元春も協力してくれたからかなりスムーズでね、それで早々の逮捕に至ったわけだよ。だから、今朝からそのニュースでもちきりだよ。もちろん、被害者の子たちの情報は出ていないから安心してくれ。ただ、逮捕された男の顔写真が出ているから、直くんには絶対に見せないようにしてくれ。ショック症状を引き起こす場合がある。
ーわかりました。あの、それで直くんの母親の方は?
ー取り調べはこれからだが、間違いなく裏で糸を引いていた証拠が出ているそうだから、その件も含めてかなり重い実刑が下るだろうといっていたよ。外に出てくるのはかなり後になるだろうが、出てきても直くんとは二度と会えないようにするから安心してくれ。それは清吾の息子に任せていたらいい。
倉橋くんか。彼に任せていれば大丈夫だな。これで本当に二度と母親とは会えないだろうが、直くんにとってはそれでいい。母親の存在自体が直くんの毒でしかないのだから。
これで直くんの父・保さんも直くんの母親と接触できなくなるのだから、保さんの気持ちさえ変われば二人を会わせることもできるようになる。直くんにとってはいい状況に変わるだろうな。
ーあの、賢将さん。
ーどうした?
ードバイで出会った、直くんの父親と思しき彼とはその後の交流は続いていますか?
-彼とはないが、彼と一緒にいた男性とは繋がっているよ。だから、君の許可をもらったら、今の直くんの写真を送って実は私の孫になった子だと伝えようかと思っている。
ーそうですか。それなら、無事に直くんが桜守に合格して直くん自身が了承したら写真を送るようにしましょうか。
ーそうだな。それがいい。彼も直くんが大きな一歩を踏み出したと知ったらホッとするだろうからな。
ーええ。そうですね。
ーそれで、今日の観光はどうだった? 絢斗も楽しんでいたか?
ーそれはもう! 絢斗と直くんが二人でイルカの触れ合い体験をした動画がありますからすぐに送りますね。他にもたくさん動画も写真もありますから楽しみにしていてください。
ーイルカと触れ合い? 絢斗が一緒にやったのか?
ーええ。楽しそうでしたよ。
ーそうか。あの子も大人になったものだ。実は幼い頃にイルカの触れ合いに連れて行ったことがあったんだが、あの時は怖がってね。
ーそうなんですか?
あの時の絢斗は率先して直くんに戯れを見せていたが、実は怖かったのか?
ー秋穂と二人でやらせるつもりだったが、怖がって私が抱っこしたまま一緒に触れたんだよ。最後は楽しそうにしていたがね。
ー絢斗にもそんな時代があったんですね。
ーああ、少し幼なすぎたのかもしれない。直くんと一緒に楽しめたのならよかったよ。
動画を楽しみにしているからといって電話が切れた。
私はイルカと戯れている絢斗と直くんの動画を再生し、楽しそうな絢斗の笑顔に心が暖かくなっていくのを感じていた。
これほど頼れる存在がいなければあの素晴らしい結婚式の最中も、絢斗との甘い夜も、直くんの初めての観光も全て心ここに在らずだったかもしれない。それほどあの件は許し難いことだった。
賢将さんは倉橋先生にも協力を依頼すると言っていた。だから週明けには報告ができるだろうとかなり心強いことを言ってくれたおかげで楽しい週末を過ごせた。
そのお礼も兼ねて少し早いが、賢将さんに電話をかけた。
ー卓くん。旅行から戻ってきたのか?
ーはい。おかげさまで楽しい週末を過ごせました。
ーそうか。それならよかった。ああ、動画と写真を送ってくれてありがとう。あまりの可愛さに清吾たちに自慢してしまったよ。
ー清吾たち? 倉橋先生以外にもどなたか協力してくださったんですか?
ーああ、そうなんだよ。その様子を見ると、何も情報は聞いていないようだな。
ーえっ? ええ。この週末は直くんが一緒でしたから、テレビやニュースといった類のものは全て遠ざけていましたから。
ーそうだと思っていたよ。よかった、これからもしばらくは直くんからテレビやニュースは遠ざけたままにしておいた方がいい。
ーあの、それはもしかして……
ーああ。もう全て片付いた。直くんにトラウマを植え付けたあの男は昨夜遅くに逮捕された。
その言葉にただただ衝撃しかない。私が情報を提供し賢将さんに伝えた時にはまだ何の情報も得られていなかったのに。もう逮捕されたなんてたった二日の間に一体何が起こったんだろう。
ーもう、ですか?
ーああ。直くんのために友人たちが協力してくれたんだ。その一番の功労者は凌也くんだよ。
ーえっ? 観月くんですか?
絢斗の教え子で私の事務所で働いていたこともある。今は、彼の可愛い伴侶が絢斗の教え子になっているが、その凌也くんが協力をしてくれたというのか。
ーああ。凌也くんは以前、未就学児に猥褻行為をしたとして逮捕され嫌疑不十分で釈放された医師の存在を知って、何かの時のためにその医師の居場所を特定していてくれていたんだ。今回直くんの話を聞いてその医師に違いないとすぐに調査を入れてくれたおかげですぐに逮捕に至ったんだよ。彼の可愛い理央くんもその男の餌食にされそうになっていたから、感情移入したのかもしれない。
ー理央くんが男の餌食に?
ーああ。凌也くんの調査によると、理央くんのいた施設にもその男が医師として出入りしていた形跡があったようだよ。理央くんは例の男の指示もあって幸いその男とは会わずに過ごせたようだけどね。
例の男とは、理央くんの実父で市議会議員の篁のことだ。あいつは自分よりも先に手を出されるのが嫌だったってことか。理央くんへのその執着が結果的にあの男の毒牙から守ったとはなんとも皮肉なものだ。
ーやつの逮捕には元春も協力してくれたからかなりスムーズでね、それで早々の逮捕に至ったわけだよ。だから、今朝からそのニュースでもちきりだよ。もちろん、被害者の子たちの情報は出ていないから安心してくれ。ただ、逮捕された男の顔写真が出ているから、直くんには絶対に見せないようにしてくれ。ショック症状を引き起こす場合がある。
ーわかりました。あの、それで直くんの母親の方は?
ー取り調べはこれからだが、間違いなく裏で糸を引いていた証拠が出ているそうだから、その件も含めてかなり重い実刑が下るだろうといっていたよ。外に出てくるのはかなり後になるだろうが、出てきても直くんとは二度と会えないようにするから安心してくれ。それは清吾の息子に任せていたらいい。
倉橋くんか。彼に任せていれば大丈夫だな。これで本当に二度と母親とは会えないだろうが、直くんにとってはそれでいい。母親の存在自体が直くんの毒でしかないのだから。
これで直くんの父・保さんも直くんの母親と接触できなくなるのだから、保さんの気持ちさえ変われば二人を会わせることもできるようになる。直くんにとってはいい状況に変わるだろうな。
ーあの、賢将さん。
ーどうした?
ードバイで出会った、直くんの父親と思しき彼とはその後の交流は続いていますか?
-彼とはないが、彼と一緒にいた男性とは繋がっているよ。だから、君の許可をもらったら、今の直くんの写真を送って実は私の孫になった子だと伝えようかと思っている。
ーそうですか。それなら、無事に直くんが桜守に合格して直くん自身が了承したら写真を送るようにしましょうか。
ーそうだな。それがいい。彼も直くんが大きな一歩を踏み出したと知ったらホッとするだろうからな。
ーええ。そうですね。
ーそれで、今日の観光はどうだった? 絢斗も楽しんでいたか?
ーそれはもう! 絢斗と直くんが二人でイルカの触れ合い体験をした動画がありますからすぐに送りますね。他にもたくさん動画も写真もありますから楽しみにしていてください。
ーイルカと触れ合い? 絢斗が一緒にやったのか?
ーええ。楽しそうでしたよ。
ーそうか。あの子も大人になったものだ。実は幼い頃にイルカの触れ合いに連れて行ったことがあったんだが、あの時は怖がってね。
ーそうなんですか?
あの時の絢斗は率先して直くんに戯れを見せていたが、実は怖かったのか?
ー秋穂と二人でやらせるつもりだったが、怖がって私が抱っこしたまま一緒に触れたんだよ。最後は楽しそうにしていたがね。
ー絢斗にもそんな時代があったんですね。
ーああ、少し幼なすぎたのかもしれない。直くんと一緒に楽しめたのならよかったよ。
動画を楽しみにしているからといって電話が切れた。
私はイルカと戯れている絢斗と直くんの動画を再生し、楽しそうな絢斗の笑顔に心が暖かくなっていくのを感じていた。
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