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豪華な部屋と甘いキス

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<side卓>

部屋の前で昇と直くんと別れ、それぞれの部屋に入る。隣の部屋だが、あちらからの声は一切聞こえてくる気配はない。さすが貴船コンツェルンの保養所だ。防音設備はバッチリのようだ。これなら絢斗と夜に楽しんでも昇たちに聞こえることはなさそうだな。

広々としたリビングの先にあるテラスには露天風呂が見える。

「絢斗。夜はのんびりと温泉に浸かろう」

「うん。温泉久しぶりだからすっごく楽しみ」

「ああ。そうだな。ん? テラスからそのまま寝室に行けるようだな。それならゆっくりベッドでも楽しめそうだ」

「卓さんったら、えっち」

「今日はずっといつもと違う絢斗の姿に煽られて興奮していたんだ。仕方ないだろう?」

「ふふっ。夜まで我慢してね」

背伸びをしてそのまま唇を重ねてくれる。絢斗からの可愛いキスに我慢などできるはずもなく、そのまま舌を入れて絢斗の口内を堪能した。

「んんっ……」

絢斗の口から甘い声が漏れる。そろそろ昇たちが来るだろからやめなければいけないが、朝からの昂りでどうにもこうにも抑えが効かない。結局それからしばらく絢斗との甘いキスを堪能して唇を離した。

「んっ、卓さん……」

「悪い、絢斗が可愛すぎて抑えられなかった」

「いいよ。私も嬉しい。でもこれでもうちょっと我慢してね」

「ああ。分かってる」

少し暴走気味になっても絢斗がこうして止めてくれるから、私も止まっていられるんだ。
テラスにでて温泉の蒸気を感じながら、まったりと過ごしているとポケットに入れていたスマホが振動を伝えた。そっと画面を見ると相手は昇。

<もうそっちに行ってもいいかな?>

あいつもこんな気が回せる男になったらしい。

<ああ、構わないよ>

メッセージを返してしばらくして昇が直くんとともに部屋にやってきた。

絢斗をテラスに残し、格子戸の鍵を開けに行って中に案内すると直くんは嬉しそうに

「パパ! お部屋、すごかったです!」

とキラキラと目を輝かせて教えてくれた。

「そうか、気に入ったならよかった。絢斗がテラスにいるよ」

「わぁ! 僕も行っていいですか?」

「ああ。もちろんだよ。ジュースでも持ってこよう」

嬉しそうな直くんがテラスに向かうのを見届けて、私は昇とともにこの部屋にある小さなキッチンに向かった。
とはいえ、料理を作れるほどの広さはないが、潤沢に用意されている飲み物を入れたり、お菓子を準備したりということはできる。直くんにはストレートのリンゴジュースと絢斗にはアイスカフェオレを用意し、私たちのホットコーヒーも合わせてそれぞれトレイに乗せ持っていった。

「絢斗。アイスカフェオレだよ」

「わぁ、ありがとう!」

ミルクだけをたっぷり淹れたアイスカフェオレは、絢斗が疲れた時に必ず飲むもの。今朝は朝から動きっぱなしだったから疲れただろうと思って用意したが、この表情を見るとちょうど飲みたかったようだ。よかった。
直くんは美味しそうにリンゴジュースを飲んでいる。きっと征哉くんが直くんのために用意しておいてくれたものだろう。好みもきっと一花くんと同じなのだろうな。本当に二人はよく似ている。

「やっぱり直くん、そのドレスよく似合うね。お風呂に入るまでその格好でいたらいいよ」

「はい。あやちゃんがそう言ってくれるならそうします。僕もこのドレス、すごく気に入りました」

昇は自分が選んだドレスを直くんが気に入ったと言ったのが嬉しかったようで、コーヒーを飲みながらもニヤついていた。まぁ、気持ちはわかるけどな。

「ここ、緑がいっぱいで鳥の声も聞こえるしそんなところにお風呂って不思議な感じがしますね」

「夜は月の光と星明かりで幻想的な露天風呂が見られるそうだよ」

「わぁー、楽しみです!」

直くんは初めての温泉に少し興奮気味だ。今日は朝から直くんの子どもらしいところがいっぱい見られて本当によかった。絢斗も昇もそう思っているに違いない。

「ああ、そうだ。絢斗が父に今日の動画を送っていただろう? 絢斗にお礼を言ってくれってすぐに返事がきたよ」

「お義父さん、喜んでくれたんだ。よかった」

「ああ、もう大喜びでもっとたくさん送ってくれとねだられたよ」

「ふふっ。お義父さん、すっかり直くんにメロメロだね」

「パパの方のおじいちゃんですか?」

「ああ。直くんに早く会いたがってたよ」

「僕も会えるの楽しみです!」

今の言葉だけで、父は飛んできそうなくらい喜ぶだろうな。

しばらく話をしていると、スマホがまた振動を伝えた。賢将さんかまた父かと思っていると、画面表示には征哉くんの名前があった。

電話をとり、部屋のお礼と直くんたちが喜んでいたことを伝えた。すると、征哉くんから

ーもしお時間があれば、これから一時間ほどそちらに遊びに行きたいのですがいかがでしょう?

と打診があった。もちろん、拒む理由もない。絢斗も直くんも一花くんが来てくれたら喜ぶはずだ。

ーそれは嬉しいよ。直くんも一花くんとまた話ができるのを楽しみにしていたからね。いつでも来てくれ。

ーそれでは今からお伺いしますね。あの、それで、直純くんはもう着替えは済ませましたか?

ーいや、それが絢斗が直くんのあの格好を気に入ってね。せっかくだから風呂に入るまでドレスのままでいようということになったんだ。もしかして、一花くんは着替えを済ませたのか?

ーいえ、そんなこともあろうかと直純くんの様子を聞いてからにしようと話をしていたところです。

ーそうか、それはありがたい。助かるよ。じゃあ、いつでも来てくれ。

一花くんが着替えたのなら、直くんも着替えると言い出すかと心配したがよかった。さすが征哉くんたちだな。

そうして、私たちは今日の主役である二人の到着を待った。
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