上 下
204 / 287

絢斗のやりたいこと

しおりを挟む
<side絢斗>

一花ちゃんが撮影を終えるまで部屋で待っていることになり、みんなはそれぞれ旦那さまや恋人のもとに戻った。

「直くん、卓さんたちのところに行こうか」

「はい。あの、さっきのパパとのキス……本当に素敵でした」

「改めて言われると照れちゃうけど、ありがとう。直くんも可愛いキスだったよ」

そういうと、顔を赤くしていたけれどとても嬉しそうに見えた。

「卓さん。ここいい?」

「ああ、もちろんだよ。直くんもおいで」

するとすぐに昇くんもやってくる。窓際でまったりと家族の時間が過ぎていく。

「あ、そうだ。結婚式の写真とか動画をお父さんに送っておこうかな。お義父さんにも送っていい?」

「ああ。頼むよ」

「ねぇ、直くん。一緒に写真選ぼう!」

「はい」

アルバムを見せると、直くんよりも昇くんの方が真剣に見入っているようで

「絢斗さん。この写真俺にもください」

と言ってくる。

「いいよ。直くんが写ってるのは全部あげるから楽しみにしてて」

「やった!」

普段は大人びているのに、こんなところはまだまだ子どもっぽい。そんな昇くんの姿を見て直くんも嬉しそうだ。

「お父さん、今日は仕事って言ってたし、お義父さんがいるシアトルはもう夜中だからすぐに返事は来ないかもだけど、送るだけ送っておくね。返事が来たら直くんにも教えるよ」

「はい」

直くんが可愛過ぎて大量になってしまった写真と動画をお父さんたちに送っていると

「そろそろ撮影も終わる頃だと思うから、私たちも庭に移動しましょうか」

という未知子さんの誘う声が聞こえてきた。

「わぁー、直くん。行こう!」

思わず直くんと駆け出していきそうになるのを

「絢斗。みんなで行こう」

と卓さんに止められて、四人で庭に向かうと、一花ちゃんと征哉くんが白い和傘で相合傘をしているのが見えた。

「わぁ、素敵!」

「本当! あの色打掛と白い和傘がよく似合ってるね」

「いいなぁ……綺麗……」

直くんがポツリと呟いたその言葉を昇くんがしっかりと心に刻んでいるようだったから、きっと二人の結婚式の時にはその夢が叶うんじゃないかな。

<side卓>

絢斗が父と賢将さんに結婚式の動画と写真を送ってあげていた。
賢将さんは今頃例の件で動いてくれているから、可愛い絢斗と直くん、それに主役である一花くんを見て和みつつも、この可愛い直くんのためにもより一層力を出してくれることだろう。

主役二人の庭での撮影が終わる頃だということでみんなで庭に移動しているときに、胸ポケットに入れていたスマホが振動を告げる。賢将さんか、それとも父か……。

そっと取り出して画面表示を見れば、父の名前がそこにあった。

絢斗と直くんが一花くんたちに気を取られている間にメッセージに目を通すと

<絢斗くんに動画と写真をありがとうと伝えてくれ。私の可愛い孫の直くんと昇との距離がやけに近かったが、もしかしてそういうことか?>

とだけ書かれたメッセージに思わず笑ってしまった。

どうやらそれが気になってわざわざ私にメッセージを送ってきたらしい。でなければ、動画を送った絢斗に返事を送るはずだからな。すっかりメロメロになっている可愛い孫にもうすでに恋人がいて、それが昇だということに驚いたのか。

あの冷静沈着な父とは思えない行動に笑ってしまいつつも、帰国して真実を知るよりは今から知っておいた方が衝撃も和らぐかと思って、正直に伝えることにした。

<ええ。昇と私の可愛い息子の直くんは恋人同士ですよ。昇の存在が直くんには必要なんです。昇もちゃんと直くんを守って健全で初々しい付き合いをしていますよ>

普通の高校生なら直くんの無意識の煽りに負けてしまいそうなところも昇は頑張っているからな。これくらい言っておいたら父も安心だろう。

するとすぐに父から返信が来た。

<そうか。昇も大人になったものだな。来週会うのがさらに楽しみになってきたよ。また写真と動画を待っているぞ>

連絡事項だけを告げて終わりの父がこんなことをメッセージで送ってくるようになったとは……。
可愛い直くんの存在はあの父さえも変えてしまうのだな。

「伯父さん、何してるの? 直くんと絢斗さんがみんなと写真撮ってるよ」

「ああ、悪い」

いつの間にか一花くんと征哉くんの撮影が終わり、絢斗たちが一花くんと写真を撮りあっているのが見える。

少し出遅れながらも、しっかりと可愛い姿を撮影して満足のままに撮影を終え、一花くんと征哉くんは着替えに向かった。

「さぁ、これで終わりかな」

ホッと胸を撫で下ろしていると、絢斗が未知子さんや周平くんたちと何か楽しげには話をして、私のもとに駆け寄ってきた。

「絢斗、どうした?」

「あのね、卓さん。私、ちょっとやりたいことがあるから、卓さんはさっきの部屋で直くんたちと待ってて」

「何をする気だ?」

「ふふっ、いいこと」

絢斗はいたずらっ子のような笑みをみせ、未知子さんのもとに戻って行った。
一体何をする気なのかと少し心配になったが、未知子さんが一緒なら大丈夫だろう。
そう思うことにした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

もふもふ相棒と異世界で新生活!! 神の愛し子? そんなことは知りません!!

ありぽん
ファンタジー
[第3回次世代ファンタジーカップエントリー] 特別賞受賞 書籍化決定!! 応援くださった皆様、ありがとうございます!! 望月奏(中学1年生)は、ある日車に撥ねられそうになっていた子犬を庇い、命を落としてしまう。 そして気づけば奏の前には白く輝く玉がふわふわと浮いていて。光り輝く玉は何と神様。 神様によれば、今回奏が死んだのは、神様のせいだったらしく。 そこで奏は神様のお詫びとして、新しい世界で生きることに。 これは自分では規格外ではないと思っている奏が、規格外の力でもふもふ相棒と、 たくさんのもふもふ達と楽しく幸せに暮らす物語。

春を拒む【完結】

璃々丸
BL
 日本有数の財閥三男でΩの北條院環(ほうじょういん たまき)の目の前には見るからに可憐で儚げなΩの女子大生、桜雛子(さくら ひなこ)が座っていた。 「ケイト君を解放してあげてください!」  大きなおめめをうるうるさせながらそう訴えかけてきた。  ケイト君────諏訪恵都(すわ けいと)は環の婚約者であるαだった。  環とはひとまわり歳の差がある。この女はそんな環の負い目を突いてきたつもりだろうが、『こちとらお前等より人生経験それなりに積んどんねん────!』  そう簡単に譲って堪るか、と大人げない反撃を開始するのであった。  オメガバな設定ですが設定は緩めで独自設定があります、ご注意。 不定期更新になります。   

俺の親友がモテ過ぎて困る

くるむ
BL
☆完結済みです☆ 番外編として短い話を追加しました。 男子校なのに、当たり前のように毎日誰かに「好きだ」とか「付き合ってくれ」とか言われている俺の親友、結城陽翔(ゆうきはるひ) 中学の時も全く同じ状況で、女子からも男子からも追い掛け回されていたらしい。 一時は断るのも面倒くさくて、誰とも付き合っていなければそのままOKしていたらしいのだけど、それはそれでまた面倒くさくて仕方がなかったのだそうだ(ソリャソウダロ) ……と言う訳で、何を考えたのか陽翔の奴、俺に恋人のフリをしてくれと言う。 て、お前何考えてんの? 何しようとしてんの? ……てなわけで、俺は今日もこいつに振り回されています……。 美形策士×純情平凡♪

そばかす糸目はのんびりしたい

楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。 母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。 ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。 ユージンは、のんびりするのが好きだった。 いつでも、のんびりしたいと思っている。 でも何故か忙しい。 ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。 いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。 果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。 懐かれ体質が好きな方向けです。今のところ主人公は、のんびり重視の恋愛未満です。 全17話、約6万文字。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

生まれ変わりは嫌われ者

青ムギ
BL
無数の矢が俺の体に突き刺さる。 「ケイラ…っ!!」 王子(グレン)の悲痛な声に胸が痛む。口から大量の血が噴きその場に倒れ込む。意識が朦朧とする中、王子に最後の別れを告げる。 「グレン……。愛してる。」 「あぁ。俺も愛してるケイラ。」 壊れ物を大切に包み込むような動作のキス。 ━━━━━━━━━━━━━━━ あの時のグレン王子はとても優しく、名前を持たなかった俺にかっこいい名前をつけてくれた。いっぱい話しをしてくれた。一緒に寝たりもした。 なのにー、 運命というのは時に残酷なものだ。 俺は王子を……グレンを愛しているのに、貴方は俺を嫌い他の人を見ている。 一途に慕い続けてきたこの気持ちは諦めきれない。 ★表紙のイラストは、Picrew様の[見上げる男子]ぐんま様からお借りしました。ありがとうございます!

【完結】間違えたなら謝ってよね! ~悔しいので羨ましがられるほど幸せになります~

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
「こんな役立たずは要らん! 捨ててこい!!」  何が起きたのか分からず、茫然とする。要らない? 捨てる? きょとんとしたまま捨てられた私は、なぜか幼くなっていた。ハイキングに行って少し道に迷っただけなのに?  後に聖女召喚で間違われたと知るが、だったら責任取って育てるなり、元に戻すなりしてよ! 謝罪のひとつもないのは、納得できない!!  負けん気の強いサラは、見返すために幸せになることを誓う。途端に幸せが舞い込み続けて? いつも笑顔のサラの周りには、聖獣達が集った。  やっぱり聖女だから戻ってくれ? 絶対にお断りします(*´艸`*) 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2022/06/22……完結 2022/03/26……アルファポリス、HOT女性向け 11位 2022/03/19……小説家になろう、異世界転生/転移(ファンタジー)日間 26位 2022/03/18……エブリスタ、トレンド(ファンタジー)1位

処理中です...