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伝説の先輩

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<side直純>

「一花ちゃん。可愛い子、連れてきたよ」

あやちゃんの声に振り向くと、優しそうな人があやちゃんの隣にいた。

この人は誰だろうと思っていると、フランくんが嬉しそうな声をあげてパタパタと尻尾を揺らした。まるでこの人が遊んでくれるのを知ってそうなそんな感じだ。

「ああ、フランくんたちが入場する時に一緒にいた人だよ」

僕の隣にいた尚孝さんが小声でこっそりと教えてくれる。ああ、そうだ。あの時に一緒にいた。フランくんとグリちゃんが可愛すぎて記憶から抜けちゃってたな。

「伊月くん。敬介くんの後輩だよ」

あの素敵な人の後輩か。敬介さんがお着替えしてる時に少し話をさせてもらったけど、敬介さんは経済学部っていうところに通っていて、法学部のあやちゃんの授業は受けたことはないって言ってた。でも敬介さんのゼミの先生があやちゃんのお友達だったから、大学にあるあやちゃんの部屋でみんなでお茶をしたりしてたんだって教えてくれた。

伊月さんが敬介さんの後輩だけど、あやちゃんのことを知っているのも、きっと今でもあやちゃんのお友達の先生と一緒にお茶して過ごしたりしてるからなのかな。僕も早く大学生になって、あやちゃんの授業を受けたり、あやちゃんとお茶をしたりしてみたい。
家ではよくお茶をしているけれど、大学でみんなでお茶をするのはちょっと憧れる。

敬介さんが伊月さんにこっちにおいでと手招きすると、伊月さんは少しほっぺたを赤くして、

「あの、浅香さんですよね。伝説の先輩にここで会えるなんて思ってなかったです」

と興奮気味に話しかけていた。

「伝説の、先輩?」

敬介さんが? 伝説って一体なんだろう?

僕と一花さんが何もわからずにいると、近くにいた佳史さんっていう優しい人が、敬介さんのことを教えてくれた。
いくつも論文が発表されたとかわからないところもあったけど、とにかくものすごい人だっていうのは伝わってきて、僕も一花さんも敬介さんの凄さに驚きしかなかった。

けれど敬介さん本人はその話が大袈裟だと照れながら言っていたけど、あやちゃんが本当にすごかったと言ってるからすごかったんだろう。だってあやちゃんは嘘をつく人じゃないもん。

あやちゃんが教えている桜城大学は昇さんの行きたい大学で、日本で一番優秀な人たちが集まる学校だから、その中ですごいってなると本当にすごい人なんだろう。さすが伝説とか言われるはずだよね。
敬介さんって、ほんとすごいんだな……。

「そ、そんなことより、伊月くんだっけ。彼の話を聞こうよ」

話題を変えるように敬介さんがそう言って、伊月さんはみんなの中に入っていろいろ質問されている。

年齢を聞かれて、29歳だって答えててちょっとびっくりしてしまった。
昇さんより少し上かなくらいに思っていたから。でも、そういえばここにいる人たちはみんな年齢がわからない。一花さんも18歳だって聞いてるけど、僕と同じくらいに見えるし、敬介さんは伊月さんの先輩だって言ってたから29歳よりは上ってことだよね? 
今はお化粧をしているせいもあるけど、お化粧をしていない時も30歳を超えているようには見えなかったな。
そういえばあやちゃんって幾つなんだろう? パパは60歳くらい? もっと若いかな? 年齢って難しいな……。

そんなことを考えていると、いつの間にか年齢の話は終わっていて、

「ねぇねぇ、そういえば一花ちゃん。さっき征哉くん、もうすぐそのお着物でも撮影だって言ってたよね?」

とあやちゃんが一花さんに尋ねているのが聞こえた。

そうか、あの桜色のお着物でも写真を撮るんだ。素敵!

するとあやちゃんがその時にみんなで集合写真を撮ろう! って言ってくれた。

せっかく昇さんが選んでくれたドレスを着ているんだもん。みんなで綺麗な姿で写真を撮るのは楽しそう。

「だよね。ってことで、伊月くんもお着替えしよう」

当然のようにあやちゃんがいうと、伊月さんは思いっきりびっくりしていたけれど、彼も喜ぶと思うよと言われて小さく頷いていた。そして未知子さんに連れられてお着替えに出て行った。

どんな衣装を着てくるかなとワクワクしていると、

「ねぇ。ドレスか着物かどっちか賭けようか? 外れた人は自分の旦那さまにキス、っていうのはどう?」

とあやちゃんが言い出した。

何人かから反対の声が上がりそうだったけれど、

「一花ちゃんはどう? やりたくない?」

とあやちゃんが尋ねると、一花さんは思いっきり賛成し今日の主役が賛成したということで、そのゲームが始まることになった。
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