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過保護だとわかっていても……
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食事を半分ほど食べた時には、もう周りでも食事が始まっていたが、それぞれの伴侶と楽しく食事をしているようだから誰もその間に割って入ろうとする者などいない。
ゆったりと楽しい食事のひと時を過ごしていると、
「お待たせしました」
と征哉くんの声が入り口から聞こえてきた。その声に絢斗と一緒に反応してそちらを向くとそこには気品溢れる桜色の色打掛を身に纏った一花くんの姿があった。
「一花ちゃん、桜の妖精みたい!!」
「わぁーっ!! 綺麗っ!!」
絢斗と直くんはあまりにも綺麗な一花くんの姿に声をあげて、急いで駆け寄っていた。もちろん絢斗の後ろには私が、直くんの後ろには昇がついていたけれどはしゃいでいる絢斗や直くんは気づいていないかもしれない。
それでも私たちは見守れるだけで幸せなんだ。
一花くんが父である櫻葉さんと写真が撮りたいと言って、二人で並んだところを櫻葉家の執事の二階堂さんと、貴船家の執事の牧田さん。それにたくさんの花たちが構えるスマホで一斉に写真を撮り出した。
絢斗も直くんもそのうちの一人だが、満面の笑みを見せる一花くんの姿が撮れて大満足のようだった。
その後、絢斗たちが変わるがわる一花くんとの写真を撮り、まだ食事をしていない一花くんは征哉くんに連れられて席に座った。
もちろん、豪華な色打掛姿の一花くんが一人で食事ができるはずもなく、征哉くんは嬉しそうに食事を食べさせていた。
蕎麦がきを食べて、お団子みたいと感想を述べる一花くんは直くんとよく似ている。やはり直くんと一花くんは友人として気が合うな。
そっと直くんの料理に目をやると全ての器が空になっているのが見えた。
さすが天沢くんの食事だ。量も味も完璧だったようだな。
「ねぇ、卓さん。直くんとグリちゃんたちのところに行ってきていいかな?」
「ああ、直くんも食事が終わったようだし、構わないよ。行っておいで」
「わぁ、直くん。あっち行こう!」
「はい」
絢斗は早くあの可愛い子たちと遊びたいとウズウズしている様子だったからな。
本当に幾つになっても天真爛漫な昔のままだ、絢斗は。
二人が可愛い子たちのいるサークルに近づき、ボールを軽く投げ入れて戯れたりしている姿を微笑ましく思いながら見ていると、昇がそっと立ち上がり、征哉くんの隣に腰を下ろすのが見えた。
何やら相談でもしている様子だが、小声だからかここからは何も聞こえない。
しばらく昇と話をしていた征哉くんが一花くんを抱きかかえて絢斗たちのところに連れて行く。
どうやらあちらに行きたいとおねだりされたようだ。
ペットサークルの前に置かれていた椅子に一花くんを座らせると、すぐに絢斗と直くんが近づき一花くんと笑い合う。
そんな姿を見られてたまらなく嬉しい。
征哉くんはこちらに戻る途中で甲斐くんに声をかける。一緒にいた可愛らしい子にも一花くんたちのところに行くように誘っているようだ。
するとその姿を見た絢斗が、
「ねぇ、君は桜城大学の子じゃなかった?」
とその子に話しかける。彼は驚いた様子で頷くと、絢斗は優しく微笑みながら自分が法学部の教授だと伝えた。
そうしてあっという間に彼の心を開いた絢斗は一花くんたちの輪の中に彼を連れて行った。絢斗はサッと相手の中に入るのが相変わらず上手だな。あっという間に他の花たちもサークルの周りに集まり、あそこだけ花畑のように麗しい。心なしか、あのサークルにいる可愛い子たちもはしゃいでいるように見える。やはり動物にも美しさはわかるのかもしれない。
自分の伴侶の優秀さに満足していると、征哉くんが甲斐くんを連れて私たちの席に戻ってくると、何かを思い出したように昇に声をかけた。
「今日は蓮見さんと榎木くんのカップル以外はうちの保養所で宿泊になるから、昇くん。さっきのことをみんなに相談してみようか?」
昇が征哉くんに相談? さっき話をしていたやつか。
昇は一瞬戸惑ったようにも見えたが、征哉くんを信頼しているのか最後には頷いていた。
「征哉くん、昇の相談ってなんだ?」
気になって尋ねると、征哉くんは笑顔で答えた。
「はい。今日はこの後、先生方はうちの保養所で宿泊なさるでしょう? 昇くんは直純くんのお風呂をどうしようかと悩んでいて……」
「ああ、そうか……。それがあったな」
結婚式のことでそのことはすっかり忘れていたが、今思えばわざと思い出さないようにしていたのかもしれない。
触れるなとは言ったが、その後のことはまだ考えていなかった。私自身、実のところはどうしていいか分からなかったんだ。
いくら恋人になったとはいえ、まだ14歳の直くんの裸を昇が見たり触れたりするのはさすがに早すぎる。だが、せっかく温泉に来て一人で入らせるわけにはいかない。しかし、いくら戸籍上の親子になったとはいえ、私が直くんと一緒に風呂に入るのは昇も許せないだろう。絢斗と二人で入らせるのは私が我慢できない。
まだ時間があると思って、考えを先延ばしにしてきたがもうそろそろ決めなければいけない。だからこそ昇も征哉くんに相談したんだろうし。だが……私はまだ昇と直くんが二人で入ることを受け止めきれない。
わかってる、それが過保護な親バカだってことは。
それでも直くんが可愛くてたまらないんだ。ああ、本当にどうしたらいいのだろうな……。
ゆったりと楽しい食事のひと時を過ごしていると、
「お待たせしました」
と征哉くんの声が入り口から聞こえてきた。その声に絢斗と一緒に反応してそちらを向くとそこには気品溢れる桜色の色打掛を身に纏った一花くんの姿があった。
「一花ちゃん、桜の妖精みたい!!」
「わぁーっ!! 綺麗っ!!」
絢斗と直くんはあまりにも綺麗な一花くんの姿に声をあげて、急いで駆け寄っていた。もちろん絢斗の後ろには私が、直くんの後ろには昇がついていたけれどはしゃいでいる絢斗や直くんは気づいていないかもしれない。
それでも私たちは見守れるだけで幸せなんだ。
一花くんが父である櫻葉さんと写真が撮りたいと言って、二人で並んだところを櫻葉家の執事の二階堂さんと、貴船家の執事の牧田さん。それにたくさんの花たちが構えるスマホで一斉に写真を撮り出した。
絢斗も直くんもそのうちの一人だが、満面の笑みを見せる一花くんの姿が撮れて大満足のようだった。
その後、絢斗たちが変わるがわる一花くんとの写真を撮り、まだ食事をしていない一花くんは征哉くんに連れられて席に座った。
もちろん、豪華な色打掛姿の一花くんが一人で食事ができるはずもなく、征哉くんは嬉しそうに食事を食べさせていた。
蕎麦がきを食べて、お団子みたいと感想を述べる一花くんは直くんとよく似ている。やはり直くんと一花くんは友人として気が合うな。
そっと直くんの料理に目をやると全ての器が空になっているのが見えた。
さすが天沢くんの食事だ。量も味も完璧だったようだな。
「ねぇ、卓さん。直くんとグリちゃんたちのところに行ってきていいかな?」
「ああ、直くんも食事が終わったようだし、構わないよ。行っておいで」
「わぁ、直くん。あっち行こう!」
「はい」
絢斗は早くあの可愛い子たちと遊びたいとウズウズしている様子だったからな。
本当に幾つになっても天真爛漫な昔のままだ、絢斗は。
二人が可愛い子たちのいるサークルに近づき、ボールを軽く投げ入れて戯れたりしている姿を微笑ましく思いながら見ていると、昇がそっと立ち上がり、征哉くんの隣に腰を下ろすのが見えた。
何やら相談でもしている様子だが、小声だからかここからは何も聞こえない。
しばらく昇と話をしていた征哉くんが一花くんを抱きかかえて絢斗たちのところに連れて行く。
どうやらあちらに行きたいとおねだりされたようだ。
ペットサークルの前に置かれていた椅子に一花くんを座らせると、すぐに絢斗と直くんが近づき一花くんと笑い合う。
そんな姿を見られてたまらなく嬉しい。
征哉くんはこちらに戻る途中で甲斐くんに声をかける。一緒にいた可愛らしい子にも一花くんたちのところに行くように誘っているようだ。
するとその姿を見た絢斗が、
「ねぇ、君は桜城大学の子じゃなかった?」
とその子に話しかける。彼は驚いた様子で頷くと、絢斗は優しく微笑みながら自分が法学部の教授だと伝えた。
そうしてあっという間に彼の心を開いた絢斗は一花くんたちの輪の中に彼を連れて行った。絢斗はサッと相手の中に入るのが相変わらず上手だな。あっという間に他の花たちもサークルの周りに集まり、あそこだけ花畑のように麗しい。心なしか、あのサークルにいる可愛い子たちもはしゃいでいるように見える。やはり動物にも美しさはわかるのかもしれない。
自分の伴侶の優秀さに満足していると、征哉くんが甲斐くんを連れて私たちの席に戻ってくると、何かを思い出したように昇に声をかけた。
「今日は蓮見さんと榎木くんのカップル以外はうちの保養所で宿泊になるから、昇くん。さっきのことをみんなに相談してみようか?」
昇が征哉くんに相談? さっき話をしていたやつか。
昇は一瞬戸惑ったようにも見えたが、征哉くんを信頼しているのか最後には頷いていた。
「征哉くん、昇の相談ってなんだ?」
気になって尋ねると、征哉くんは笑顔で答えた。
「はい。今日はこの後、先生方はうちの保養所で宿泊なさるでしょう? 昇くんは直純くんのお風呂をどうしようかと悩んでいて……」
「ああ、そうか……。それがあったな」
結婚式のことでそのことはすっかり忘れていたが、今思えばわざと思い出さないようにしていたのかもしれない。
触れるなとは言ったが、その後のことはまだ考えていなかった。私自身、実のところはどうしていいか分からなかったんだ。
いくら恋人になったとはいえ、まだ14歳の直くんの裸を昇が見たり触れたりするのはさすがに早すぎる。だが、せっかく温泉に来て一人で入らせるわけにはいかない。しかし、いくら戸籍上の親子になったとはいえ、私が直くんと一緒に風呂に入るのは昇も許せないだろう。絢斗と二人で入らせるのは私が我慢できない。
まだ時間があると思って、考えを先延ばしにしてきたがもうそろそろ決めなければいけない。だからこそ昇も征哉くんに相談したんだろうし。だが……私はまだ昇と直くんが二人で入ることを受け止めきれない。
わかってる、それが過保護な親バカだってことは。
それでも直くんが可愛くてたまらないんだ。ああ、本当にどうしたらいいのだろうな……。
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