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サプライズの始まり
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<side昇>
「直くん、席に座って待っておこうか」
絢斗さんが史紀さんたちを引き連れて建物に戻っていくのを見送って、俺は直くんにそう声をかけた。
伯父さんから聞いておいた場所に直くんと並んで座ると、
「本日は誠におめでとうございます。こちらが式次第でございます』
と式のスタッフさんから声をかけられ紙をもらった。
「ありがとうございます。あ、一組で大丈夫です」
「承知しました」
直くんにも渡そうとしたのを断って、俺たちは二人で一緒に見ることにした。
「結婚式って、なんだか参加するだけでもドキドキしちゃいますね」
「ああ、そうだね。でもこうして参加して、自分たちの時の式の参考にするのも楽しいんじゃない?」
「自分たちのって、昇さん……」
「俺はそのつもりだよ。大人になったら、ね……」
「はい。嬉しいです……」
ギュッと俺の腕に絡みついたままピッタリと寄り添ってくる。ああ、もう本当に可愛い。
式が始まるまでもう少しかなと思ったところで、
「お待たせ」
と絢斗さんが伯父さんと一緒に戻ってきた。
「あ、もう皆さんの着替え終わったんですか?」
「うん。みんなすっごく綺麗になったよ。ほら」
絢斗さんが直くんに教えるのを一緒に見ていると、綺麗なドレスや着物を着た人たちが席に座っているのが見えた。
「えっ……あれって、全員?」
「うん。そうだよ。みんな綺麗でしょう?」
「はい、とっても綺麗です!!」
無邪気に笑顔を見せる直くんの隣で俺は驚きしかない。
本当に女性にしか見えないっていうか、芸能人かモデルかっていうくらい美人な人たちばっかりなんだけど……。
あれって、ドレスや着物を着ているからとかメイクをしているからとかいうだけじゃないよな?
俺がドレスか着物を着ても気持ち悪いとしか思えないのに……すげぇ……やっぱり男で綺麗だと女装しても綺麗なんだ……。もちろん、その中でもダントツ直くんが可愛いけどな。
隣にいる直くんの可愛さに惚れ惚れしていると、志摩さんが正面に立つのが見えた。
「今から、お二人がこちらに来られます。一花さんには目を瞑っていただいた状態でこちらに来られますので、皆さま、お声はお出しにならないようにご注意ください。貴船の合図で一花さんが目を開けられましたら、<結婚おめでとう!>とお声がけをお願い致します」
その説明に一気に辺りが静寂に包まれた。
そっと直くんに視線を向けると、声を上げないように意識したのか、口元を両手で覆っているのが見えて微笑ましくなる。
一花さんのサプライズを守るために必死なんだな。本当に可愛い。
それからすぐに、和装姿の貴船さんが白無垢姿の一花さんを腕に抱えてこちらに向かってきた。
驚くほどの美しい姿に思わず声を上げそうになるけれど、一花さんが目を瞑っているのが見えて誰も言葉を発しない。
「一花、目を開けてもいいよ」
ゆっくりと俺たちの正面に貴船さんが立ち、優しい声で一花さんに声をかけると、一花さんがゆっくりと目を開けた。
「結婚おめでとう!」
せーの! なんて声かけをしなくても、ここにいる全員が同じタイミングでお祝いの言葉を二人に掛け、大きな拍手で祝福を送った。
隣にいる直くんは、涙を流しながらも必死に拍手をしていて、一花さんへの想いがひしひしと伝わってきた。
「直くん」
上着の内ポケットに入れていたハンカチを出し、そっと直くんの涙を拭うと、
「の、ぼるさん……ぼく、うれしくて……」
とさらに涙をこぼす。
直くんは一花さんが不幸になったことが自分の母親のせいだと罪悪感を抱いているから、その一花さんが幸せな姿を見られるのが嬉しくてたまらないんだろう。
彼の幸せな姿を見たことで、直くんの心にある罪悪感もこのまま消えてしまえばいい。
そう思わずにはいられなかった。
一花さんも俺たち出席者のサプライズな祝福に涙を流して喜んでくれて、出席者側からも涙の声が聞こえていたけれどしばらくしてようやく落ち着きを取り戻し、結婚式が始まった。
「お義父さん、こちらに来ていただけますか?」
貴船さんの言葉に櫻葉さんが立ち上がり二人の元に近づいた。そして一言、二言、新郎新夫と言葉を交わすと、貴船さんは櫻葉さんに一花さんを渡した。
櫻葉さんは一花さんを大事な宝物でも受け取るように優しく抱きかかえ、
「――っ、一花、大きくなったな」
とポツリと呟いた。
その言葉に二人が離れていた間の年月の重さを知った気がした。
生まれてすぐに手から離れてしまった息子をもう一度腕に抱く。
その夢が叶った櫻葉さんは、この上ない幸せに包まれていることだろう。
本当に一花さんが生きていてよかった。そのことに俺は感謝の気持ちでいっぱいになっていた。
「直くん、席に座って待っておこうか」
絢斗さんが史紀さんたちを引き連れて建物に戻っていくのを見送って、俺は直くんにそう声をかけた。
伯父さんから聞いておいた場所に直くんと並んで座ると、
「本日は誠におめでとうございます。こちらが式次第でございます』
と式のスタッフさんから声をかけられ紙をもらった。
「ありがとうございます。あ、一組で大丈夫です」
「承知しました」
直くんにも渡そうとしたのを断って、俺たちは二人で一緒に見ることにした。
「結婚式って、なんだか参加するだけでもドキドキしちゃいますね」
「ああ、そうだね。でもこうして参加して、自分たちの時の式の参考にするのも楽しいんじゃない?」
「自分たちのって、昇さん……」
「俺はそのつもりだよ。大人になったら、ね……」
「はい。嬉しいです……」
ギュッと俺の腕に絡みついたままピッタリと寄り添ってくる。ああ、もう本当に可愛い。
式が始まるまでもう少しかなと思ったところで、
「お待たせ」
と絢斗さんが伯父さんと一緒に戻ってきた。
「あ、もう皆さんの着替え終わったんですか?」
「うん。みんなすっごく綺麗になったよ。ほら」
絢斗さんが直くんに教えるのを一緒に見ていると、綺麗なドレスや着物を着た人たちが席に座っているのが見えた。
「えっ……あれって、全員?」
「うん。そうだよ。みんな綺麗でしょう?」
「はい、とっても綺麗です!!」
無邪気に笑顔を見せる直くんの隣で俺は驚きしかない。
本当に女性にしか見えないっていうか、芸能人かモデルかっていうくらい美人な人たちばっかりなんだけど……。
あれって、ドレスや着物を着ているからとかメイクをしているからとかいうだけじゃないよな?
俺がドレスか着物を着ても気持ち悪いとしか思えないのに……すげぇ……やっぱり男で綺麗だと女装しても綺麗なんだ……。もちろん、その中でもダントツ直くんが可愛いけどな。
隣にいる直くんの可愛さに惚れ惚れしていると、志摩さんが正面に立つのが見えた。
「今から、お二人がこちらに来られます。一花さんには目を瞑っていただいた状態でこちらに来られますので、皆さま、お声はお出しにならないようにご注意ください。貴船の合図で一花さんが目を開けられましたら、<結婚おめでとう!>とお声がけをお願い致します」
その説明に一気に辺りが静寂に包まれた。
そっと直くんに視線を向けると、声を上げないように意識したのか、口元を両手で覆っているのが見えて微笑ましくなる。
一花さんのサプライズを守るために必死なんだな。本当に可愛い。
それからすぐに、和装姿の貴船さんが白無垢姿の一花さんを腕に抱えてこちらに向かってきた。
驚くほどの美しい姿に思わず声を上げそうになるけれど、一花さんが目を瞑っているのが見えて誰も言葉を発しない。
「一花、目を開けてもいいよ」
ゆっくりと俺たちの正面に貴船さんが立ち、優しい声で一花さんに声をかけると、一花さんがゆっくりと目を開けた。
「結婚おめでとう!」
せーの! なんて声かけをしなくても、ここにいる全員が同じタイミングでお祝いの言葉を二人に掛け、大きな拍手で祝福を送った。
隣にいる直くんは、涙を流しながらも必死に拍手をしていて、一花さんへの想いがひしひしと伝わってきた。
「直くん」
上着の内ポケットに入れていたハンカチを出し、そっと直くんの涙を拭うと、
「の、ぼるさん……ぼく、うれしくて……」
とさらに涙をこぼす。
直くんは一花さんが不幸になったことが自分の母親のせいだと罪悪感を抱いているから、その一花さんが幸せな姿を見られるのが嬉しくてたまらないんだろう。
彼の幸せな姿を見たことで、直くんの心にある罪悪感もこのまま消えてしまえばいい。
そう思わずにはいられなかった。
一花さんも俺たち出席者のサプライズな祝福に涙を流して喜んでくれて、出席者側からも涙の声が聞こえていたけれどしばらくしてようやく落ち着きを取り戻し、結婚式が始まった。
「お義父さん、こちらに来ていただけますか?」
貴船さんの言葉に櫻葉さんが立ち上がり二人の元に近づいた。そして一言、二言、新郎新夫と言葉を交わすと、貴船さんは櫻葉さんに一花さんを渡した。
櫻葉さんは一花さんを大事な宝物でも受け取るように優しく抱きかかえ、
「――っ、一花、大きくなったな」
とポツリと呟いた。
その言葉に二人が離れていた間の年月の重さを知った気がした。
生まれてすぐに手から離れてしまった息子をもう一度腕に抱く。
その夢が叶った櫻葉さんは、この上ない幸せに包まれていることだろう。
本当に一花さんが生きていてよかった。そのことに俺は感謝の気持ちでいっぱいになっていた。
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