ひとりぼっちになった僕は新しい家族に愛と幸せを教えてもらいました

波木真帆

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堂々と

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授業が始まってからも、俺の頭の中は直くんのことでいっぱいだ。

目を覚ました時には、昨日の俺との話を覚えていないようでホッとしたけれど、直くんの心の中にトラウマが残っているのは変わらない。

本当ならずっとついていてあげたいくらいだけど、学校を休むと直くんを心配させてしまうからな。
早く帰って直くんの顔が見たい。

いつも直くんのおにぎりを食べている休み時間になってスマホを取り出すと、メッセージが二件も入っていた。

一つは直くん。もう一つは伯父さんからだ。
どちらから見ようかと考えたけれど、やっぱり直くんのメッセージだ。
少し緊張しながら開けると、まずは今日はおにぎりを作れなかったことのお詫びだった。
体調を崩していたんだからそんなことを申し訳なく思う必要なんてないのに、直くんは本当に律儀だ。
そして、その後には<明日結婚式に着ていく用の服が届いたので、試着しました>というメッセージと共にジャケットを羽織った直くんの写真が添付されていた。

大人の礼装と違って、普段にも着られそうなカジュアルフォーマルといったジャケットは可愛い直くんにピッタリだ。
その嬉しそうな表情に、落ち込んでいた俺の心が浮上する。

そうだ、俺が落ちていても意味がない。あのトラウマのことは伯父さんたち大人に任せて、俺は直くんの心を支えるようにしないとな。

<よく似合ってるよ! 可愛い!! 明日の結婚式が楽しみだな!!>

そんなメッセージと共に、こっそり教室で撮った俺の自撮りを送信すると、

<わぁ、学校にいる昇さんが見られて嬉しい!! 帰ってくるのを楽しみにしてますね>

という可愛いメッセージが返ってきた。しかも可愛い猫耳をつけた直くんのスタンプ付き。
くそっ、なんだ、これ! めっちゃ可愛い!!

一気に興奮しそうになるのを必死に抑えて

<猫耳直くんが可愛すぎてやばい!! 学校終わったら速攻で帰るね!!」>

とメッセージを返した。そして、深呼吸をしてから今度は伯父さんからのメッセージを開いた。

<例の件、賢将さんに相談してきた。すぐに動いてくれると言ってくれて、週明けには報告をしてくれるようだ。だから、あとは賢将さんに任せて、私たちは明日の結婚式と家族旅行を楽しもう>

そんな内容に俺は安堵のため息を漏らした。

俺が必死に撮った音声データがきっと役に立ったんだろう。 やっぱり大人が動くと早いな。

それなら伯父さんが言ってくれたように、俺は直くんを笑顔にできるように頑張ろう!!
伯父さんにお礼のメッセージを送ってスマホをポケットにしまうと、

「少し顔色が良くなったな」

と村山から声をかけられた。

「そうか?」

「ああ。安心したよ」

村山はそれだけいうと、自分もスマホに目をやっていたけれど、その表情がいつもより柔らかく感じる。きっとカールと連絡を取り合っているんだろう。
そんな中でも俺を心配してくれたことがなんだか嬉しかった。

午前中の授業も終わり、学食で昼食を食べ、ようやく午後の授業も終わりを迎えた頃、廊下が騒がしくなってきた。
早めに授業が終わった教室が騒いでいるのかと思ったが、それだけじゃないみたいだ。

「ねぇねぇ、めちゃめちゃ可愛い外国人の男の子が両親と校長室に入っていくのを見たって!」
「えっ? それって留学生ってこと?」
「こんな時期に?」
「だから多分、高一か、高二じゃない?」
「ああ、そうか。でもそんな可愛い子なの?」
「それはもう! びっくりするくらい小顔でスタイルも良くて可愛い系イケメンだって!」
「ええーっ!! 見たいっ! 見たいっ!」
「その子が入るクラスとか超最高じゃん!」
「いいなぁー!」

女子たちが大騒ぎしている声がうちのクラスにまで飛び込んできて、

「なぁ、村山。これって……」

気になって声をかけると、

「多分、そうだ。俺、校長室行ってくるよ!」

と行って教室を飛び出して行った。

村山が教室を飛び出すのと鐘がなるのはほぼ同時だったからなんとかセーフだろう。
それにしてもカール……目立ちまくりだな。

心配になって俺も校長室に向かった。

校長室の前には騒ぎを聞きつけた奴らでごった返している。

本当にすごい騒ぎになってるな。村山もカールも大丈夫かな?

しばらくそこで待っていると校長室の扉が開き、まず出てきたのは村山の両親。
俺は慌てて駆け寄って

「大丈夫ですか?」

と声をかけた。

「昇くん、わざわざ来てくれたのか。ありがとう。だが、龍弥は大丈夫だよ。ほら」

そう言って後ろに視線を向けた村山の父さんに倣うように俺も校長室の扉に視線を向けると、村山がカールを守るように肩を抱いて校長室から出てきた。

その姿に、

「きゃーっ!!」

ととんでもない声が上がっていたけれど、村山もカールも驚くどころか見せつけるようにその場に立っていた。
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