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もっと考えないと!
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<side昇>
村山が車に乗せていたカールへの贈り物をきっかけに、俺があげたクマのぬいぐるみが家にあったものじゃなくて、直くんのために買ったものだということがバレてしまったけれど、直くんは自分のために選んでくれたものだからと喜んでくれた。
その言葉にホッとしたのと同時に、これからはおおっぴらに直くんをあの店に連れて行って一緒にクマの着替えとか他のぬいぐるみとか選べるようになるんだと思うと嬉しかった。
騙してしまったのは申し訳なかったけれど、最初にクマをあげると約束した時は、直くんの気持ちもわからなかったからな。あの時はあれが最善だと思っていたんだし、よかったんだと思っておこう。
これも村山があのラブラドールを車まで持ってきてくれていたおかげだな。
車は銀座に到着し、ある店の地下の駐車場に入っていく。
ここは父さんたちも一緒に、伯父さんに連れてきてもらったことがある店だけど、雰囲気が落ち着いていて、大人の隠れ家という感じだ。
伯父さんは友人である警察庁長官の榊さんに教えてもらって以来、気に入って常連になったらしい。その榊さんも友人から教えてもらったそうで口コミだけで広がっているようなお店だ。
ここは身元のはっきりした信頼のおける人しか入れない店だから、セキュリティはもちろん、プライバシーもしっかり守ってくれる。
弁護士である伯父さんの友人は、弁護士はもちろん、榊さんのように警察官僚や医者、それに大会社の社長など大物と言われるような人たちばかりだから、プライバシーをしっかりと保つためにもこういうお店が安心なのだろう。
直くんが安心して食事を楽しむためにも、今日伯父さんがこの店を選んだのは大正解だ。
もちろん、直くんだけじゃなく、大事な絢斗さんに楽しく食事をしてもらうために選んだんだろうけど。
伯父さんはいつだって絢斗さんファーストだ。今はそこに可愛い息子である直くんも入って、伯父さんは大変だけど楽しいに違いない。
いつもよりかなり広い掘り炬燵の個室に案内され、きっと後で大人チームと子どもチームに分かれるだろうけど、最初はそれぞれの家族でテーブルを囲む。
料理はすでに伯父さんが注文してくれているから、飲み物をそれぞれ選ぶことにした。
「直くん、何にする?」
まずは俺のより直くんのものだろうと思って声をかけた瞬間、向かいから足を軽く蹴られて驚いた。
思わず声が出そうになったけれど、それを必死に抑えて伯父さんに視線を向けると、少し眉を顰めて俺をみていてビクッとした。
俺が何かしたんだろうかと思っていると、目で合図を送られる。
その合図に気づいて直くんを見ると、少し困ったような顔をしていた。
なんだ?
するとすぐに絢斗さんが、
「直くんは私と同じ、烏龍茶にしようか」
と優しく声をかけていて、その声に直くんは困った表情から一気に安堵の表情に変わった。
ああ、そうか……! 俺が何にするって聞いたから、困っていたのか。
直くんがこの店の料理の系統も何もわからないまま飲み物を選ぶなんてできるはずないのに。俺の質問で困らせてしまったんだな。伯父さんはすぐにそれに気づいて俺に気づかせようとして、絢斗さんは直くんが困らないように助け舟を出したんだ。
ああ……俺ってば。何やってるんだ。もっと直くんのことを考えてやらないとな。
俺も同じ烏龍茶を頼み、伯父さんと村山の両親はノンアルビールを頼んだ。ドイツでは十四歳から保護者が同伴ならアルコールを飲むことは認められていて、現在十八歳のカールはどれだけ強いアルコールでも飲むことは認められているけれど、ここは日本。カールが飲酒をすることはできない。そもそもカールはそこまで酒が強くないらしく、ドイツでもあまり飲まないみたいだ。というわけで、カールと村山は俺たちと同じ烏龍茶を頼んだ。
飲み物を注文してすぐに部屋に飲み物と一緒に料理が運ばれる。
「わぁ! 美味しそう!」
『Das sieht lecker aus!』
料理を見て直くんが声を上げると同時にカールも声をあげた。
「昇さん、カールなんて言ったんですか?」
「直くんと同じだよ。美味しそうって言ったんだ。ここの料理を見るとそう言いたくなるよね」
そういうと、直くんは嬉しそうにカールと顔を見合わせていた。
「さぁ、いただくとしようか」
「はーい。いただきます!」
直くんの声にカールも手を合わせていただきますと言っているのが面白かった。
「パパ、このお肉なんですか?」
「ああ、これは鹿のお肉だよ。ここのは食べやすくて美味しいから食べてみてごらん」
直くんは少し緊張しながらも鹿肉に箸をつけると、思い切った様子で口に入れていた。
「ん! 美味しいです!!」
「だろう? これは絢斗も大好物なんだ。なぁ、絢斗」
「うん。美味しいよね。直くんも気に入ってくれたみたいで嬉しいよ」
鹿肉やうさぎ肉といったジビエ料理はドイツではかなりポピュラーだ。それを日本風にアレンジして作られているからきっとカールも気にいるだろう。そっとカールに目を向ければ、慣れないながらも箸を使って食べているのが見える。もうすっかり村山家とも打ち解けた様子でホッとした。やっぱり村山家に頼んで正解だったな。
村山が車に乗せていたカールへの贈り物をきっかけに、俺があげたクマのぬいぐるみが家にあったものじゃなくて、直くんのために買ったものだということがバレてしまったけれど、直くんは自分のために選んでくれたものだからと喜んでくれた。
その言葉にホッとしたのと同時に、これからはおおっぴらに直くんをあの店に連れて行って一緒にクマの着替えとか他のぬいぐるみとか選べるようになるんだと思うと嬉しかった。
騙してしまったのは申し訳なかったけれど、最初にクマをあげると約束した時は、直くんの気持ちもわからなかったからな。あの時はあれが最善だと思っていたんだし、よかったんだと思っておこう。
これも村山があのラブラドールを車まで持ってきてくれていたおかげだな。
車は銀座に到着し、ある店の地下の駐車場に入っていく。
ここは父さんたちも一緒に、伯父さんに連れてきてもらったことがある店だけど、雰囲気が落ち着いていて、大人の隠れ家という感じだ。
伯父さんは友人である警察庁長官の榊さんに教えてもらって以来、気に入って常連になったらしい。その榊さんも友人から教えてもらったそうで口コミだけで広がっているようなお店だ。
ここは身元のはっきりした信頼のおける人しか入れない店だから、セキュリティはもちろん、プライバシーもしっかり守ってくれる。
弁護士である伯父さんの友人は、弁護士はもちろん、榊さんのように警察官僚や医者、それに大会社の社長など大物と言われるような人たちばかりだから、プライバシーをしっかりと保つためにもこういうお店が安心なのだろう。
直くんが安心して食事を楽しむためにも、今日伯父さんがこの店を選んだのは大正解だ。
もちろん、直くんだけじゃなく、大事な絢斗さんに楽しく食事をしてもらうために選んだんだろうけど。
伯父さんはいつだって絢斗さんファーストだ。今はそこに可愛い息子である直くんも入って、伯父さんは大変だけど楽しいに違いない。
いつもよりかなり広い掘り炬燵の個室に案内され、きっと後で大人チームと子どもチームに分かれるだろうけど、最初はそれぞれの家族でテーブルを囲む。
料理はすでに伯父さんが注文してくれているから、飲み物をそれぞれ選ぶことにした。
「直くん、何にする?」
まずは俺のより直くんのものだろうと思って声をかけた瞬間、向かいから足を軽く蹴られて驚いた。
思わず声が出そうになったけれど、それを必死に抑えて伯父さんに視線を向けると、少し眉を顰めて俺をみていてビクッとした。
俺が何かしたんだろうかと思っていると、目で合図を送られる。
その合図に気づいて直くんを見ると、少し困ったような顔をしていた。
なんだ?
するとすぐに絢斗さんが、
「直くんは私と同じ、烏龍茶にしようか」
と優しく声をかけていて、その声に直くんは困った表情から一気に安堵の表情に変わった。
ああ、そうか……! 俺が何にするって聞いたから、困っていたのか。
直くんがこの店の料理の系統も何もわからないまま飲み物を選ぶなんてできるはずないのに。俺の質問で困らせてしまったんだな。伯父さんはすぐにそれに気づいて俺に気づかせようとして、絢斗さんは直くんが困らないように助け舟を出したんだ。
ああ……俺ってば。何やってるんだ。もっと直くんのことを考えてやらないとな。
俺も同じ烏龍茶を頼み、伯父さんと村山の両親はノンアルビールを頼んだ。ドイツでは十四歳から保護者が同伴ならアルコールを飲むことは認められていて、現在十八歳のカールはどれだけ強いアルコールでも飲むことは認められているけれど、ここは日本。カールが飲酒をすることはできない。そもそもカールはそこまで酒が強くないらしく、ドイツでもあまり飲まないみたいだ。というわけで、カールと村山は俺たちと同じ烏龍茶を頼んだ。
飲み物を注文してすぐに部屋に飲み物と一緒に料理が運ばれる。
「わぁ! 美味しそう!」
『Das sieht lecker aus!』
料理を見て直くんが声を上げると同時にカールも声をあげた。
「昇さん、カールなんて言ったんですか?」
「直くんと同じだよ。美味しそうって言ったんだ。ここの料理を見るとそう言いたくなるよね」
そういうと、直くんは嬉しそうにカールと顔を見合わせていた。
「さぁ、いただくとしようか」
「はーい。いただきます!」
直くんの声にカールも手を合わせていただきますと言っているのが面白かった。
「パパ、このお肉なんですか?」
「ああ、これは鹿のお肉だよ。ここのは食べやすくて美味しいから食べてみてごらん」
直くんは少し緊張しながらも鹿肉に箸をつけると、思い切った様子で口に入れていた。
「ん! 美味しいです!!」
「だろう? これは絢斗も大好物なんだ。なぁ、絢斗」
「うん。美味しいよね。直くんも気に入ってくれたみたいで嬉しいよ」
鹿肉やうさぎ肉といったジビエ料理はドイツではかなりポピュラーだ。それを日本風にアレンジして作られているからきっとカールも気にいるだろう。そっとカールに目を向ければ、慣れないながらも箸を使って食べているのが見える。もうすっかり村山家とも打ち解けた様子でホッとした。やっぱり村山家に頼んで正解だったな。
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