155 / 677
本当のこと
しおりを挟む
<side直純>
――ナオズミのことナオって呼んでいいかな?
そう言われてすごく嬉しかった。
カールさんが僕をナオズミと呼んでくれるのは外国人なら当然だと思っていたところもあったけれど、ナオズミと呼ばれるとどうしても両親……特に母さんのことを思い出してしまっていた。
自分の名前を嫌だとまでは思わないけれど、母さんとの日々がパッと甦ってしまうことがあって……だからパパたちに直くんと呼ばれるようになったのは嬉しかった。本当に新しい自分になれた気がしたんだ。
けれど今日、カールさんと出会って直接ナオズミと呼ばれて、ほんの少し胸の奥が騒ついた。
これが僕の名前なんだから仕方がないという気持ちもあったけれど、やっぱり少し辛かった。だからカールさんからナオと呼んでいいかと言われて嬉しかったんだ。
僕が直純という名前だってことは変えようもないことだけど、もう少し僕が母さんとの辛い記憶を忘れるまでは直くんやナオでいられたらいいな。そんなことを思ってしまう。
しかもカールさんは、僕に昇さんたちと同じようにカールと呼ばせてくれた。
年下なのに呼び捨てなんて……と思ったけれど、僕にカールって呼ばれたい! とまで言ってくれて……すごく嬉しかった。
僕に呼び捨てできる友達ができるなんて思ってもなかった。
カールって、ドキドキしながら呼んだらすごく喜んでくれて、親友とまで言ってくれた。
僕に親友……!! もう嬉しすぎておかしくなりそうだ。
その親友とパパたちとみんなでこれからご飯を食べにいくんだって。
さっき、ふーちゃんや毅パパたちとドーナツを食べたのが、多分物心ついてから初めて食べる外での食事だったと思うけど、今度はご飯をみんなで食べるなんて……。
なんだか今日は初めてのことばかりでドキドキが止まらない。でも、隣で昇さんが手を繋いでいてくれるから安心できる。昇さんがそばにいてくれてよかったな。
駐車場に着き、空港まで来た時と同じようにパパの車の後ろに乗ろうとしたら、少し離れた場所からカールの嬉しそうな声が聞こえてきた。
どうやら村山さんがカールに贈り物を用意していたみたい。僕も昇さんから突然の贈り物をもらった時、ものすごく嬉しかったから、今のカールの気持ちがよくわかる。でも何をもらったんだろう?
昇さんに案内されて、車に乗り込むと、昇さんが隣にピッタリと寄り添って座ってくれる。
「シートベルト付けるね」
「はい」
パパの車に乗り慣れない僕のためにさっきと同じようにシートベルトをつけてくれる。本当に昇さんって優しいな。
昇さんもシートベルトをつけたところで車がゆっくりと動き始めた。
「伯父さん、お店までどれくらい?」
「銀座だから普通なら一時間くらいかな。途中で休憩したかったら声をかけてくれ」
「わかった」
ここから一時間、車に乗れるんだ。なんだか嬉しい。
「直くん、疲れてない?」
「大丈夫です」
「それならよかった」
「あの、昇さん……」
「んっ? どうかした?」
「さっきの、カールへの贈り物って……昇さんは何か知っているんですか?」
「えっ? どうして?」
ふと思ったことを尋ねてみただけだったけれど、少し焦った顔で見つめられて驚いてしまった。
「えっ……あ、いえ。仲良しだから知ってるのかなって……それだけなんですけど……ごめんなさい」
「あ、いや。直くんが謝ることじゃないよ。ちょっと急に聞かれて驚いただけ」
「驚いた?」
「ああ……うん。その……」
なんとなく言いにくそうな雰囲気は伝わってくる。僕、そんなに変なこと聞いちゃったかな?
「昇、もう隠さずにはっきり言った方がいいぞ」
「隠す?」
前からパパの声が聞こえてきて、思わず聞き返すと、昇さんははぁーっと大きなため息を吐いて僕を見た。
「ごめん、別に隠すことこでもないんだけど……もう恋人になったから、はっきり言うね」
「はい」
「あのさ、前に直くんに大きなクマのぬいぐるみプレゼントしただろう?」
「えっ? はい。昇さんがゲームセンターでって……」
急にぬいぐるみの話になって驚きつつも答えた。
「あれ、ゲーセンでとったやつじゃなくて、直くんのために買ったんだ」
「えっ? 僕のために……?」
「ああ、直くんにどうしてもプレゼントしたくて……でも、買うって言ったら貰ってもらえないと思って……家にあるって言ったら受け取ってくれるかと思って、そう言ったんだ。嘘ついてごめん。でも直くんを喜ばせたくて……ごめん、引いた?」
「引くなんて、そんなこと……っ! 僕、あのクマさんすごく嬉しかったです。ずっとぬいぐるみ欲しかったから、昇さんが僕のために選んでくれたのがすごく嬉しいです」
「直くん……よかった」
そう言って僕を抱きしめてくれる。昇さんの温もりがクマさん以上にあったかくて嬉しかった。
――ナオズミのことナオって呼んでいいかな?
そう言われてすごく嬉しかった。
カールさんが僕をナオズミと呼んでくれるのは外国人なら当然だと思っていたところもあったけれど、ナオズミと呼ばれるとどうしても両親……特に母さんのことを思い出してしまっていた。
自分の名前を嫌だとまでは思わないけれど、母さんとの日々がパッと甦ってしまうことがあって……だからパパたちに直くんと呼ばれるようになったのは嬉しかった。本当に新しい自分になれた気がしたんだ。
けれど今日、カールさんと出会って直接ナオズミと呼ばれて、ほんの少し胸の奥が騒ついた。
これが僕の名前なんだから仕方がないという気持ちもあったけれど、やっぱり少し辛かった。だからカールさんからナオと呼んでいいかと言われて嬉しかったんだ。
僕が直純という名前だってことは変えようもないことだけど、もう少し僕が母さんとの辛い記憶を忘れるまでは直くんやナオでいられたらいいな。そんなことを思ってしまう。
しかもカールさんは、僕に昇さんたちと同じようにカールと呼ばせてくれた。
年下なのに呼び捨てなんて……と思ったけれど、僕にカールって呼ばれたい! とまで言ってくれて……すごく嬉しかった。
僕に呼び捨てできる友達ができるなんて思ってもなかった。
カールって、ドキドキしながら呼んだらすごく喜んでくれて、親友とまで言ってくれた。
僕に親友……!! もう嬉しすぎておかしくなりそうだ。
その親友とパパたちとみんなでこれからご飯を食べにいくんだって。
さっき、ふーちゃんや毅パパたちとドーナツを食べたのが、多分物心ついてから初めて食べる外での食事だったと思うけど、今度はご飯をみんなで食べるなんて……。
なんだか今日は初めてのことばかりでドキドキが止まらない。でも、隣で昇さんが手を繋いでいてくれるから安心できる。昇さんがそばにいてくれてよかったな。
駐車場に着き、空港まで来た時と同じようにパパの車の後ろに乗ろうとしたら、少し離れた場所からカールの嬉しそうな声が聞こえてきた。
どうやら村山さんがカールに贈り物を用意していたみたい。僕も昇さんから突然の贈り物をもらった時、ものすごく嬉しかったから、今のカールの気持ちがよくわかる。でも何をもらったんだろう?
昇さんに案内されて、車に乗り込むと、昇さんが隣にピッタリと寄り添って座ってくれる。
「シートベルト付けるね」
「はい」
パパの車に乗り慣れない僕のためにさっきと同じようにシートベルトをつけてくれる。本当に昇さんって優しいな。
昇さんもシートベルトをつけたところで車がゆっくりと動き始めた。
「伯父さん、お店までどれくらい?」
「銀座だから普通なら一時間くらいかな。途中で休憩したかったら声をかけてくれ」
「わかった」
ここから一時間、車に乗れるんだ。なんだか嬉しい。
「直くん、疲れてない?」
「大丈夫です」
「それならよかった」
「あの、昇さん……」
「んっ? どうかした?」
「さっきの、カールへの贈り物って……昇さんは何か知っているんですか?」
「えっ? どうして?」
ふと思ったことを尋ねてみただけだったけれど、少し焦った顔で見つめられて驚いてしまった。
「えっ……あ、いえ。仲良しだから知ってるのかなって……それだけなんですけど……ごめんなさい」
「あ、いや。直くんが謝ることじゃないよ。ちょっと急に聞かれて驚いただけ」
「驚いた?」
「ああ……うん。その……」
なんとなく言いにくそうな雰囲気は伝わってくる。僕、そんなに変なこと聞いちゃったかな?
「昇、もう隠さずにはっきり言った方がいいぞ」
「隠す?」
前からパパの声が聞こえてきて、思わず聞き返すと、昇さんははぁーっと大きなため息を吐いて僕を見た。
「ごめん、別に隠すことこでもないんだけど……もう恋人になったから、はっきり言うね」
「はい」
「あのさ、前に直くんに大きなクマのぬいぐるみプレゼントしただろう?」
「えっ? はい。昇さんがゲームセンターでって……」
急にぬいぐるみの話になって驚きつつも答えた。
「あれ、ゲーセンでとったやつじゃなくて、直くんのために買ったんだ」
「えっ? 僕のために……?」
「ああ、直くんにどうしてもプレゼントしたくて……でも、買うって言ったら貰ってもらえないと思って……家にあるって言ったら受け取ってくれるかと思って、そう言ったんだ。嘘ついてごめん。でも直くんを喜ばせたくて……ごめん、引いた?」
「引くなんて、そんなこと……っ! 僕、あのクマさんすごく嬉しかったです。ずっとぬいぐるみ欲しかったから、昇さんが僕のために選んでくれたのがすごく嬉しいです」
「直くん……よかった」
そう言って僕を抱きしめてくれる。昇さんの温もりがクマさん以上にあったかくて嬉しかった。
1,616
あなたにおすすめの小説
腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。
灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。
彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。
タイトル通りのおっさんコメディーです。
なぜ、私に関係あるのかしら?
シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」
彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。
そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。
「…レオンハルト・トレヴァントだ」
非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。
そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。
「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」
この判断によって、どうなるかなども考えずに…
※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。
※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、
※ 画像はAIにて作成しております
異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~
ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした芽依は、お詫びとして大好きな異世界へ転生させてもらえることに。だが転生の際、またしても神のミスで、森の奥地に幼女の姿で送られてしまい。転生の反動で眠っていた瞳は、気づかないうちに魔獣たちに囲まれてしまう。
しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。
やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。
そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。
そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。
これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。
身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜
しょくぱん
恋愛
「お前のような無能は、死神の生贄にでもなっていろ」
魔力なしの無能と蔑まれ、家族に虐げられてきた伯爵令嬢レティシア。 彼女に命じられたのは、近づく者すべてを病ませるという『呪いの公爵』アレクシスへの身代わり結婚だった。
鉄格子の馬車で運ばれ、たどり着いたのは瘴気に満ちた死の城。 恐ろしい怪物のような男に殺される――。 そう覚悟していたレティシアだったが、目の前の光景に絶望よりも先に別の感情が湧き上がる。
(な、何これ……汚すぎるわ! 雑巾とブラシはどこ!?)
実は、彼女が「無能」と言われていたのは、その力が『洗浄』と『浄化』に特化した特殊な聖女の魔力だったから。
レティシアが掃除をすれば、呪いの瘴気は消え去り、枯れた大地には花が咲き、不気味だった公爵城はまたたく間にピカピカの聖域に塗り替えられていく。 さらには、呪いで苦しんでいたアレクシスの素顔は、見惚れるほどの美青年で――。
「レティシア、君は一体何者なんだ……? 体が、こんなに軽いのは初めてだ」
冷酷だったはずの公爵様から、まさかの執着と溺愛。 さらには、呪いが解けたことで領地は国一番の豊かさを取り戻していく。
一方で、レティシアを捨てた実家は、彼女の『浄化』を失ったことで災厄に見舞われ、今さら「戻ってきてくれ」と泣きついてくるが……。
「私は今、お城の掃除と旦那様のお世話で忙しいんです。お引き取りくださいませ」
これは、掃除を愛する薄幸令嬢が、その愛と魔力で死神公爵を救い、最高に幸せな居場所を手に入れるまでのお話。
猫を追いかけて異世界に来たら、拾ってくれたのは優しい貴族様でした
水無瀬 蒼
BL
清石拓也はある日飼い猫の黒猫・ルナを追って古びた神社に紛れ込んだ。
そこで、御神木の根に足をひっかけて転んでしまう。
倒れる瞬間、大きな光に飲み込まれる。
そして目を覚ましたのは、遺跡の中だった。
体調の悪い拓也を助けてくれたのは貴族のレオニス・アーゼンハイツだった。
2026.1.5〜
余命半年の僕は、君を英雄にするために「裏切り者」の汚名を着る
深渡 ケイ
ファンタジー
魔力を持たない少年アルトは、ある日、残酷な未来を知ってしまう。 最愛の幼馴染であり「勇者」であるレナが、半年後に味方の裏切りによって惨殺される未来を。
未来を変える代償として、半年で全身が石化して死ぬ呪いを受けたアルトは、残された命をかけた孤独な決断を下す。
「僕が最悪の裏切り者となって、彼女を救う礎になろう」
卓越した頭脳で、冷徹な「悪の参謀」を演じるアルト。彼の真意を知らないレナは、彼を軽蔑し、やがて憎悪の刃を向ける。 石化していく体に走る激痛と、愛する人に憎まれる絶望。それでも彼は、仮面の下で血の涙を流しながら、彼女を英雄にするための完璧なシナリオを紡ぎ続ける。
これは、誰よりも彼女の幸せを願った少年が、世界一の嫌われ者として死んでいく、至高の献身の物語。
幻獣保護センター廃棄処理係の私、ボロ雑巾のような「ゴミ幻獣」をこっそり洗ってモフっていたら、実は世界を喰らう「終焉の獣」だった件について
いぬがみとうま🐾
ファンタジー
「魔力なしの穀潰し」――そう蔑まれ、幻獣保護センターの地下で廃棄幻獣の掃除に明け暮れる少女・ミヤコ。
実のところ、その施設は「価値のない命」を無慈悲に殺処分する地獄だった。
ある日、ミヤコの前に運ばれてきたのは、泥と油にまみれた「ボロ雑巾」のような正体不明の幻獣。
誰の目にもゴミとしか映らないその塊を、ミヤコは放っておけなかった。
「こんなに汚れたままなんて、かわいそう」
彼女が生活魔法を込めたブラシで丹念に汚れを落とした瞬間、世界を縛る最凶の封印が汚れと一緒に「流されてしまう。
現れたのは、月光を纏ったような美しい銀狼。
それは世界を喰らうと恐れられる伝説の災厄級幻獣『フェンリル・ヴォイド』だった……。
拗らせ問題児は癒しの君を独占したい
結衣可
BL
前世で限界社畜として心をすり減らした青年は、異世界の貧乏子爵家三男・セナとして転生する。王立貴族学院に奨学生として通う彼は、座学で首席の成績を持ちながらも、目立つことを徹底的に避けて生きていた。期待されることは、壊れる前触れだと知っているからだ。
一方、公爵家次男のアレクシスは、魔法も剣術も学年トップの才能を持ちながら、「何も期待されていない」立場に嫌気がさし、問題児として学院で浮いた存在になっていた。
補習課題のペアとして出会った二人。
セナはアレクシスを特別視せず、恐れも媚びも見せない。その静かな態度と、美しい瞳に、アレクシスは強く惹かれていく。放課後を共に過ごすうち、アレクシスはセナを守りたいと思い始める。
身分差と噂、そしてセナが隠す“癒やしの光魔法”。
期待されることを恐れるセナと、期待されないことに傷つくアレクシスは、すれ違いながらも互いを唯一の居場所として見つけていく。
これは、静かに生きたい少年と、選ばれたかった少年が出会った物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる