153 / 287
私の夢
しおりを挟む
<side瑠璃>
二葉さんたちを見送ったと思ったら龍弥はすぐに到着ロビーに走って行った。
まだ時間はあるのにあの子ったら。でもそれほど待ちきれないってことなのかしらね。
「龍弥、こんな調子だったらカールくんがドイツに帰国する日が今から心配だわ」
「離れ離れになることがわかっているこそ、一分一秒も無駄にしたくないのかもしれないがな。カールくんに会えるのをあれだけ楽しみにしていたんだ、今日くらいはできるだけ好きにやらせてやろう」
「そうね」
昇くんからドイツにいる友人の短期のホームステイの受け入れを頼まれたと龍弥が話をしてきた時は、珍しいとは思わなかった。うちは家族全員で海外に暮らしたこともあるし、語学にも不自由はないから今まで何度もホームステイを受け入れてきたから。
もちろん、今回もそのつもりでいたのだけど、画面越しにカールくんを見ている時の龍弥の表情が今まで見たこともないくらい優しくて、きっとこの子が龍弥の大事な相手になるんだとすぐに理解した。
カールくんはとても溌剌とした可愛らしい子だったし、私もひと目見ただけで気に入った。カールくんなら可愛い息子と出歩きたいという私の夢を叶えてくれると思った。
幸いなことに、カールくんは日本の大学に進学することを希望していて、それならホームステイで慣れたまま、我が家に下宿すればいい。
今までのホームステイで受け入れた子たちには客間をそのまま使わせたけれど、カールくんは特別にカールくん用の部屋を準備した。可愛いカーテンに可愛い家具。そして素敵な天蓋付きのベッド。もう準備しているだけで楽しかった。
龍弥は私がカールくんの部屋を準備していることについて驚いてはいたけれど、私が歓迎していることに喜んでいたみたい。カールくんの両親ともビデオチャットで挨拶してほしいと龍弥が頼んできて、早速ビデオチャットで家族の対面を果たした。
お父さんのエーベルさんはゴールドに近い明るいブラウンの短髪にブラウンの瞳で優しくも逞しそうな印象を受けた。そしてお母さんのラウラさんは、暗めの長いブロンドがサラサラでとても綺麗な青い瞳の美人さん。カールくんは二人のいいとこどりな顔立ちをしていたけれど、どちらかというとラウラさんに似ている。
以前、ドイツに住んだことがあると話をすると、それで一気に話が盛り上がり打ち解けることができた。
遠い日本に行かせることに少なからず心配をしていたカールくんの両親だったけれど、それで少しは安心してくれたみたい。日本の大学に行かせることにも賛成してくれた。そのために頑張らないといけないぞとカールくんは発破をかけられていたけれど、あの分なら無事に龍弥と同じ大学に行けそう。
そうなったら我が家で下宿ね。もうそれが楽しみでしかない。
とうとう対面の時。
昇くんたちまで、龍弥とカールくんの対面を邪魔しないように離れてくれていたから、私たちも離れて様子を見守ることにした。けれど、ガラス扉が開くと同時に龍弥が駆け出し、私たちの目の前でハグとキスをして、まるで恋人同士のようなその対面に言葉もなかった。
もちろんドイツでは一般的な挨拶だけどその熱量が違うのはすぐにわかる。それでも待ち侘びた対面なのだからとしばらくそのままにしておいたのだけど、あまりにも二人の世界すぎてどうしていいかわからなくなる。
「ねぇ、純弥さん。龍弥にそろそろ声かけて。あ、でもカールくんを怯えさせないように優しくね!」
「分かった」
そう言っていたのに、近づいた純弥さんの声が少し怖くて、カールくんが恐縮しきりだった。
もう! 怯えさせないようにって言ったのに! もう少し優しい言い方を卓さんに伝授してもらわないと!!
『カールくん、よろしくね。日本にいる間は私をお母さんだと思ってくれていいからね』
『は、はい。よろしくお願いします』
なんとか緊張を和らげようと笑顔で話しかけると、嬉しそうに笑って手を差し出してくれた。
ギュッと握った彼の手はとても柔らかくて温かかった。
『ほら、あそこに友人も待ってるよ』
純弥さんが視線を向けると、そこにはずっと待っていてくれている昇くんと直純くん、そして卓さんと絢斗さんの姿。
ビデオチャットで話をしたことがあると話していたからか、少し緊張が解れた様子で彼らの元に駆け寄っていった。
「カールくん、いい子だな」
「ええ。本当に。でも、純弥さん! カールくん、ちょっとあなたに怖がってたわよ」
「えっ? 本当に?」
「ええ。あなたが龍弥に声かけた時の言い方がちょっと怖すぎたの。カールくんを怯えさせちゃダメだからね。龍弥よりも繊細に扱ってね」
「わ、わかった。気をつけるよ」
素直に返事をする純弥さんを可愛いと思いながら、磯山家とカールくんの対面を静かに見守り続けた。
二葉さんたちを見送ったと思ったら龍弥はすぐに到着ロビーに走って行った。
まだ時間はあるのにあの子ったら。でもそれほど待ちきれないってことなのかしらね。
「龍弥、こんな調子だったらカールくんがドイツに帰国する日が今から心配だわ」
「離れ離れになることがわかっているこそ、一分一秒も無駄にしたくないのかもしれないがな。カールくんに会えるのをあれだけ楽しみにしていたんだ、今日くらいはできるだけ好きにやらせてやろう」
「そうね」
昇くんからドイツにいる友人の短期のホームステイの受け入れを頼まれたと龍弥が話をしてきた時は、珍しいとは思わなかった。うちは家族全員で海外に暮らしたこともあるし、語学にも不自由はないから今まで何度もホームステイを受け入れてきたから。
もちろん、今回もそのつもりでいたのだけど、画面越しにカールくんを見ている時の龍弥の表情が今まで見たこともないくらい優しくて、きっとこの子が龍弥の大事な相手になるんだとすぐに理解した。
カールくんはとても溌剌とした可愛らしい子だったし、私もひと目見ただけで気に入った。カールくんなら可愛い息子と出歩きたいという私の夢を叶えてくれると思った。
幸いなことに、カールくんは日本の大学に進学することを希望していて、それならホームステイで慣れたまま、我が家に下宿すればいい。
今までのホームステイで受け入れた子たちには客間をそのまま使わせたけれど、カールくんは特別にカールくん用の部屋を準備した。可愛いカーテンに可愛い家具。そして素敵な天蓋付きのベッド。もう準備しているだけで楽しかった。
龍弥は私がカールくんの部屋を準備していることについて驚いてはいたけれど、私が歓迎していることに喜んでいたみたい。カールくんの両親ともビデオチャットで挨拶してほしいと龍弥が頼んできて、早速ビデオチャットで家族の対面を果たした。
お父さんのエーベルさんはゴールドに近い明るいブラウンの短髪にブラウンの瞳で優しくも逞しそうな印象を受けた。そしてお母さんのラウラさんは、暗めの長いブロンドがサラサラでとても綺麗な青い瞳の美人さん。カールくんは二人のいいとこどりな顔立ちをしていたけれど、どちらかというとラウラさんに似ている。
以前、ドイツに住んだことがあると話をすると、それで一気に話が盛り上がり打ち解けることができた。
遠い日本に行かせることに少なからず心配をしていたカールくんの両親だったけれど、それで少しは安心してくれたみたい。日本の大学に行かせることにも賛成してくれた。そのために頑張らないといけないぞとカールくんは発破をかけられていたけれど、あの分なら無事に龍弥と同じ大学に行けそう。
そうなったら我が家で下宿ね。もうそれが楽しみでしかない。
とうとう対面の時。
昇くんたちまで、龍弥とカールくんの対面を邪魔しないように離れてくれていたから、私たちも離れて様子を見守ることにした。けれど、ガラス扉が開くと同時に龍弥が駆け出し、私たちの目の前でハグとキスをして、まるで恋人同士のようなその対面に言葉もなかった。
もちろんドイツでは一般的な挨拶だけどその熱量が違うのはすぐにわかる。それでも待ち侘びた対面なのだからとしばらくそのままにしておいたのだけど、あまりにも二人の世界すぎてどうしていいかわからなくなる。
「ねぇ、純弥さん。龍弥にそろそろ声かけて。あ、でもカールくんを怯えさせないように優しくね!」
「分かった」
そう言っていたのに、近づいた純弥さんの声が少し怖くて、カールくんが恐縮しきりだった。
もう! 怯えさせないようにって言ったのに! もう少し優しい言い方を卓さんに伝授してもらわないと!!
『カールくん、よろしくね。日本にいる間は私をお母さんだと思ってくれていいからね』
『は、はい。よろしくお願いします』
なんとか緊張を和らげようと笑顔で話しかけると、嬉しそうに笑って手を差し出してくれた。
ギュッと握った彼の手はとても柔らかくて温かかった。
『ほら、あそこに友人も待ってるよ』
純弥さんが視線を向けると、そこにはずっと待っていてくれている昇くんと直純くん、そして卓さんと絢斗さんの姿。
ビデオチャットで話をしたことがあると話していたからか、少し緊張が解れた様子で彼らの元に駆け寄っていった。
「カールくん、いい子だな」
「ええ。本当に。でも、純弥さん! カールくん、ちょっとあなたに怖がってたわよ」
「えっ? 本当に?」
「ええ。あなたが龍弥に声かけた時の言い方がちょっと怖すぎたの。カールくんを怯えさせちゃダメだからね。龍弥よりも繊細に扱ってね」
「わ、わかった。気をつけるよ」
素直に返事をする純弥さんを可愛いと思いながら、磯山家とカールくんの対面を静かに見守り続けた。
1,410
お気に入りに追加
2,134
あなたにおすすめの小説
もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」
授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。
途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。
ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。
駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。
しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。
毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。
翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。
使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった!
一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。
その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。
この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。
次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。
悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。
ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった!
<第一部:疫病編>
一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24
二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29
三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31
四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4
五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8
六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11
七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18
もふもふ相棒と異世界で新生活!! 神の愛し子? そんなことは知りません!!
ありぽん
ファンタジー
[第3回次世代ファンタジーカップエントリー]
特別賞受賞 書籍化決定!!
応援くださった皆様、ありがとうございます!!
望月奏(中学1年生)は、ある日車に撥ねられそうになっていた子犬を庇い、命を落としてしまう。
そして気づけば奏の前には白く輝く玉がふわふわと浮いていて。光り輝く玉は何と神様。
神様によれば、今回奏が死んだのは、神様のせいだったらしく。
そこで奏は神様のお詫びとして、新しい世界で生きることに。
これは自分では規格外ではないと思っている奏が、規格外の力でもふもふ相棒と、
たくさんのもふもふ達と楽しく幸せに暮らす物語。
春を拒む【完結】
璃々丸
BL
日本有数の財閥三男でΩの北條院環(ほうじょういん たまき)の目の前には見るからに可憐で儚げなΩの女子大生、桜雛子(さくら ひなこ)が座っていた。
「ケイト君を解放してあげてください!」
大きなおめめをうるうるさせながらそう訴えかけてきた。
ケイト君────諏訪恵都(すわ けいと)は環の婚約者であるαだった。
環とはひとまわり歳の差がある。この女はそんな環の負い目を突いてきたつもりだろうが、『こちとらお前等より人生経験それなりに積んどんねん────!』
そう簡単に譲って堪るか、と大人げない反撃を開始するのであった。
オメガバな設定ですが設定は緩めで独自設定があります、ご注意。
不定期更新になります。
俺の親友がモテ過ぎて困る
くるむ
BL
☆完結済みです☆
番外編として短い話を追加しました。
男子校なのに、当たり前のように毎日誰かに「好きだ」とか「付き合ってくれ」とか言われている俺の親友、結城陽翔(ゆうきはるひ)
中学の時も全く同じ状況で、女子からも男子からも追い掛け回されていたらしい。
一時は断るのも面倒くさくて、誰とも付き合っていなければそのままOKしていたらしいのだけど、それはそれでまた面倒くさくて仕方がなかったのだそうだ(ソリャソウダロ)
……と言う訳で、何を考えたのか陽翔の奴、俺に恋人のフリをしてくれと言う。
て、お前何考えてんの?
何しようとしてんの?
……てなわけで、俺は今日もこいつに振り回されています……。
美形策士×純情平凡♪
そばかす糸目はのんびりしたい
楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。
母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。
ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。
ユージンは、のんびりするのが好きだった。
いつでも、のんびりしたいと思っている。
でも何故か忙しい。
ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。
いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。
果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。
懐かれ体質が好きな方向けです。今のところ主人公は、のんびり重視の恋愛未満です。
全17話、約6万文字。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
生まれ変わりは嫌われ者
青ムギ
BL
無数の矢が俺の体に突き刺さる。
「ケイラ…っ!!」
王子(グレン)の悲痛な声に胸が痛む。口から大量の血が噴きその場に倒れ込む。意識が朦朧とする中、王子に最後の別れを告げる。
「グレン……。愛してる。」
「あぁ。俺も愛してるケイラ。」
壊れ物を大切に包み込むような動作のキス。
━━━━━━━━━━━━━━━
あの時のグレン王子はとても優しく、名前を持たなかった俺にかっこいい名前をつけてくれた。いっぱい話しをしてくれた。一緒に寝たりもした。
なのにー、
運命というのは時に残酷なものだ。
俺は王子を……グレンを愛しているのに、貴方は俺を嫌い他の人を見ている。
一途に慕い続けてきたこの気持ちは諦めきれない。
★表紙のイラストは、Picrew様の[見上げる男子]ぐんま様からお借りしました。ありがとうございます!
そばにいてほしい。
15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。
そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。
──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。
幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け
安心してください、ハピエンです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる