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幼いカップル

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<side卓>

「幸せ……」

「ああ、そうだな」

このまま絢斗を寝室に連れ込みたかったが、すぐに昇と直くんも帰ってくるだろう。

もう少ししたら夕食も作らないといけないし、夜までの辛抱だな。

「絢斗、続きは夜にな」

「うん」

ほんのりと頬を赤らめた絢斗を抱きかかえてソファーに腰を下ろし、二人が帰ってくるのを待った。
けれどなかなか帰ってくる気配がない。

駐車場で征哉くんたちと話が盛り上がっているのかと思ったが、彼らの車はすでに帰っているようだ。

「昇たち、遅いな」

「卓さんったら、顔が怖いよ」

「そ、そうか?」

「昇くんたちのことなら心配しないでいいって。いいようにしかならないよ」

それはわかっているけれど。
直くんが昇への恋心を自覚したと征哉くんが言っていたし、少し気になる。

手を出さないと約束はさせたが、私自身、それがどこまでを許していいのかもわからずにいる。

「何か心配事があるの?」

「ああ、実は征哉くんが言っていたんだが、直くん……どうやら、昇への恋心を自覚したらしい」

「えっ? 本当?」

「絢斗は気づかなかったか?」

「そういえば、みんなでお茶をしているとき、直くんがいつもよりも嬉しそうに昇くんを見ているなとは思ったけど……」

「それだよ」

「そうだったんだ……。でも良かったんじゃない? 好きな人がそばにいてくれるほうがいろんなことにやる気になれるし」

「まぁ、そうなんだが……」

「何かあるの?」

私の曖昧な態度が絢斗にはどうも気になったらしい。

「いや、直くんが昇への恋心を自覚した以上、片想いだと思わせてしまうと、まだまだ自己評価の低い直くんのことだ。昇には受け入れてもらえないと不安に思って体調を崩しかねない。かと言って、昇も直くんへの思いを伝えて、どこまで許すかというのは決めないといけないだろう? なんと言っても直くんはまだ14歳なんだからな」

「ああ、そっか。そういうことか。でも直くんはお互いに好きになったからと言って、次に何があるかを全く知らないわけだから心配しなくてもいいんじゃない?」

「というと?」

「だから、昇くんには今まで通り直くんを第一に考えて行動してくれればいいんだよ。手を繋いだり、ご飯を食べさせたり、一緒に寝たり……そこに好きだって愛情を感じられれば直くんはそれで満足だと思うよ」

「だが、そんなふうに触れ合っていれば、昇だって触れ合いたいと思うんじゃないか?」

「まぁ、それはそう思うかもしれないけどそこは昇くんの意志の強さを信じるしかないじゃない。昇くんは絶対に直くんが嫌がったり怖がったりすることはしないだろうし、約束は守れる子だと思うよ。最後までは成人するまではもちろんダメだと思うけど、恋人として、直くんが不安にならない程度の触れ合いはあってもいいんじゃないかな? 外国では愛情表現として、頬にキスとかハグとはするわけだし。そこまで神経質にならなくてもいいんじゃない?」

絢斗の言葉に頑なだった私の心がほぐれていく気がする。

確かに恋心を抱いている相手から、急にふれあいが減ったらそれはそれで嫌われたと不安になるだろう。

「私は直くんを守ろうとしすぎて、逆に不安にさせるところだったのかもしれないな」

「直くんを守ろうとする気持ちは大事なことだよ」

「ありがとう、絢斗。とりあえず、昇が戻ってきたらこっそり話しておこう。いつまでも片想いのままにさせてはいけないとな」

「うん、そうだね」

絢斗のおかげで気持ちが楽になったな。

だが、二人が戻ってきてすぐにさっきまでの私たちの会話がただの杞憂に過ぎなかったことを知った。

「伯父さん、絢斗さん。俺たち、恋人として付き合うことになったから」

直くんを抱きかかえたまま戻ってきた昇は、私たちにはっきりと宣言したのだ。
その時の直くんの表情は照れながらも、今まで見たことがないほど嬉しそうに見えた。

昇は私が思っていたよりもずっと大人だったようだな。

「わぁー、直くん。良かったね」

「は、はい。あの、パパとあやちゃんは僕が昇さんを好きでも、大丈夫ですか?」

「もちろんだよ。前に話したでしょう? ずっと一緒にいたいなって思える人に必ず出会えるって。それが男性でも女性でも関係ない、自分の気持ちに素直になったらいいって。その相手が昇くんだったってことでしょう?」

「あっ……」

そうか、絢斗はそんなことを直くんに話していたのか。

「二人が恋人になっても、この家族は何も変わらないよ。今まで以上に幸せになるだけ。だから、嬉しいことなんだよ」

「あやちゃん……」

「昇くん、直くんを悲しませないようにね」

「はい。任せてください!!」

昇のその力強い言葉に、私は信じようと決めたんだ。
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