ひとりぼっちになった僕は新しい家族に愛と幸せを教えてもらいました

波木真帆

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威圧に怯える

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<side昇>

貴船さんが持っていたブザーが鳴り、一花さんを迎えにいく貴船さんについて行ったのは直くんが心配だったからだ。

伯父さんは一花さんの体調が良ければ、この後もここで話がしたいと言っていたけれど、どうなるだろう。

ドキドキしながら貴船さんと一緒にキャンピングカーの扉を開け、貴船さんの後に続いて階段を上ると直くんと一花さんらしき声が聞こえた。

その仲睦まじい様子に驚いていたが、それは貴船さんも同じだったようで慌てたように一花さんの名前を呼ぶ声が聞こえた。

けれど、当の本人たちは何も気にしない様子で折り紙をしていたと答える声が聞こえた。
俺の場所からは二人の様子が見えなくて、身を乗り出して様子を窺うと、一花さんとおしゃべりができて楽しいと言って笑顔を見せる直くんの顔が見えた。

ああ、あの笑顔は本物だ。
無理も何もしていない。
素直な直くんの表情だ。

俺でもその笑顔を引き出すのに結構時間がかかったというのに、一花さんはこの短時間で直くんからあの笑顔を引き出したのか?

きっと伯父さんと絢斗さんも今の直くんの表情を見れば驚くに違いない。

階段を上り、貴船さんの横に立って直くんの名前を呼ぶと、急にさっきの笑顔から一転、俺を見てほんのりと頬を赤らめる。
なんだ?

今までにない直くんの反応に驚いていると、直くんのすぐ近くに座っていた子が僕に向かって笑顔を見せる。

「こんにちは。一花です」

その途轍もない可愛い笑顔と声で呼びかけられ、焦ってしまった。

いや、決してときめいたわけじゃない。
けれど、なんて言えばいいのか……この世に女神が存在するなら、一花さんじゃないかと思うくらいのオーラにただただ圧倒されてしまったと言うのが一番近いのかもしれない。

声を震わせながらも何とか名前を言って自己紹介をすると、二人には見えないような角度で背中に衝撃が走った。

一瞬何が起こったのかわからなかったけれど、

「一花は私のものだぞ」

と牽制されてゾクっと背筋が凍る想いがした。

ああ、この感覚。
覚えがある。

ついこの前、寝起きの絢斗さんに抱きつかれたかを伯父さんに追及された時のあの恐怖と同じだ。
いや、それよりも激しいかもしれない。

貴船コンツェルンの総帥という日本どころか世界でも一目置かれる彼が、一花さんのことで俺に牽制してくるという事実に驚きつつ、貴船さんにここまで愛されている一花さんの存在に驚きしかない。

貴船さんがこの後、伯父さんの家で話ができるかを尋ねると、一花さんは喜んで賛成していた。

伯父さんよりも絢斗さんが大喜びしそうだな。

「昇くん、一花を降ろすから、先に直純くんと外に出ていてくれないか?」

さっき、俺を牽制していた時とは驚くほど優しい声をかけられ、驚きながらも直くんを連れて外に出た。

「仲良くなれたみたいでよかったね」

「はい。一花さん、すっごく優しくて……女神さまみたいでした。僕と友だちになってくれるって言ってくれて……連絡先の交換もしたんですよ」

そう言って、嬉しそうに一花さんの名前が乗ったメッセージアプリを見せてくれる。

「それならよかった。今日、会えてよかったね」

「はい! 本当に良かったです!! 後で尚孝さんにお礼のメッセージ送らないと!!」

こんなにもはしゃいでいる直くんは初めてかもしれない。
なんだかようやく年相応に見える気がするな。

「お疲れさま」

「あっ、志摩さん!」

「尚孝さんにメッセージ送るんですか?」

「あっ、聞こえてましたか?」

「ええ。尚孝さんの話題はすぐに耳に入ってくるんです」

志摩さんが笑顔を見せると、直くんの頬が少し赤くなった気がした。
勘違いかな?

気になりつつも、ここで尋ねるのも気が引けてとりあえずは俺の心の中だけに留めておくことにした。

「その笑顔を見ると、一花さんとのお話はうまく行ったみたいですね」

「はい! 尚孝さんのおかげです。一花さん、本当に女神さまみたいでした!!」

「ふふっ。ええ、確かにその通りですね」

そんな会話をしていると、貴船さんが一花さんを抱き抱えて車から降りてきた。

貴船さんが抱き抱えているのを見ると、一花さんの小ささがよくわかる。

直くんと同じくらいと言っていたのは大袈裟ではなかったみたいだ。

こんなに小さいのにあんなに酷い目に遭っていたなら、貴船さんが直くんにも怒りの感情をむけてしまったのは分かる気がする。

「志摩くん、これから磯山先生のご自宅にお邪魔するから君も一緒に行こう」

その誘いに志摩さんも了承し、俺と直くんの案内で伯父さんたちが待つ自宅に戻った。
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