ひとりぼっちになった僕は新しい家族に愛と幸せを教えてもらいました

波木真帆

文字の大きさ
上 下
115 / 361

好きの意味

しおりを挟む
「ねぇ、直純くんってスマホ持ってる?」

そう尋ねられて僕は喜び勇んで、ついこの前パパとあやちゃんにスマホをプレゼントしてもらった話をした。

<あやちゃん>という言葉が気になったのか、不思議そうに聞き返されて、僕はなんと言っていいのか困ってしまった。

パパの大事な人に間違いないけれど、ママじゃない。
だって、あやちゃんは男の人だから。
ママって女の人のことをいうんだろうし、でもママみたいな存在で……しっくりくる言葉が見つからない。

悩みながらも、ママみたいだけど男の人だから……と伝えると、一花さんはすぐに納得してくれた。
どうしてだろうと思ったら、先日お家に来てくれた尚孝さんがパパたちと同じだと教えてくれたんだ。

同じということが最初は理解できなかったけれど、

「尚孝さんにも恋人がいるんだけど、男の人なんだよ」

と教えられて、すぐにわかった。

あの時、尚孝さんと一緒に来ていた人だ!

その人が今日も来ていて、しかも運転席にいることに驚きつつも、

「あの……ちょっと聞いてみたいんですけど……あの、好きってどういうことですか?」

と気になることを聞いてみた。

パパとあやちゃんが好き同士だということも、尚孝さんが運転席にいる志摩さんを好きだということは一緒にいて楽しそうだからわかるけれど、その好きだという感情が僕にはまだわからない。

学校に通っていたときは、クラスメイトが誰々が好きなんて話をしていたのが耳に入ったこともあるけれど、それがどういう感情のことなのかは全くわからなかった。

一緒にいて楽しい人が好きな人ってことなら、僕は一花さんのことも尚孝さんのことも、パパやあやちゃん、それに昇さんのことも好きだということになってしまう。

好きって思う人は何か他の人とは違うものがあるんじゃないかと思って尋ねると、一花さんは少し悩みながらも

「一緒にいてすごく安心したり、ずっとそばにいたいなって思ったり、匂いにホッとしたりすることかな。逆に離れてる時間が寂しかったりもするのも好きってことなのかも。うまく教えられなくてごめんね」

と教えてくれた。

パパやあやちゃんがそばにいると安心するけど、そばにいて安心して、匂いにホッとするのは昇さんだけだ。

昇さんがお家に帰っている時はものすごく寂しくて自分の部屋で寝られなくなってしまったけれど、昇さんの匂いを感じたら眠れるようになった。

「安心……匂い……寂しい……」

その全てを兼ね備えているのが昇さんしかいないってことは、僕は昇さんが好き、っていうこと?

「あの、僕も誰でも好きになっていいんですか?」

昇さんは、男の人だし、その上、毅パパの子どもで、僕がパパの子どもになったら従兄弟になるって言ってたし、親戚同士なのに好きなったりしてもいいんだろうか?

やっぱりダメだったりするんじゃないかな……。
これが本当に好きだっていうことなのかすらもわからなくて、頭の中がぐちゃぐちゃになってきてどうしていいかわからなかったけれど、

「いいよ、ゆっくり教えて。直純くん、もしかして誰か好きな人がいるの?」

と一花さんに尋ねられて、僕は今頭の中を占めている気持ちを相手が誰とは言わずに伝えてみた。

「一緒に寝ると安心するし、匂いも好きだし、そばにいてくれるとホッとして、でも離れている時間が寂しくて……。一花さんのいう通りな人がいるんですけど、それが好きな人ってことですか?」

「うん、僕だったらそう思うかな。その人って、もしかして男の人?」

そう聞かれて、僕は素直に頷いた。

「あのね、好きになるのに性別は関係ないんだって。誰でも好きになっていいんだよ」

一花さんは笑顔で、その気持ちが大事なんだよと言ってくれた。

まさか僕の好きな相手がもうすぐ従兄弟になる昇さんだって知らないからそう言ってくれているのかもしれないけれど、それでも誰でも好きになっていいと言われたことは僕の気持ちを軽くしてくれた。

「僕の恋人も男の人だし」

と言われたことにはものすごく驚いてしまったけれど、相手が貴船さんだということも驚いた。
でも一花さんと貴船さん……なんかお似合いかも。

「ねぇ、直純くんの好きな人も紹介してほしいな」

一花さんのそんな可愛いお願いについ、

「えっ、でも昇さんは僕のことなんて……」

と口が滑ってしまって、

「昇さんっていうんだ!」

と一花さんに僕の好きな人が知られてしまった。
ああー、もう僕ってばバカ。

「ねっ、お迎えに来てもらうからその昇さん、紹介してね」

なんだか一花さんにお願いされると断るなんてできない。
わかりましたというと、

「ふふっ。じゃあ連絡先も交換しよう!」

と嬉しそうに言われて、僕はスマホを取り出した。

連絡先の交換の仕方を昇さんから習っておいてよかった。

メッセージアプリの連絡先が家族以外にカールくんと尚孝さんと一花さん、三人に増えて僕はとっても嬉しい気持ちになれた。
しおりを挟む
感想 543

あなたにおすすめの小説

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

追放された薬師でしたが、特に気にもしていません 

志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、自身が所属していた冒険者パーティを追い出された薬師のメディ。 まぁ、どうでもいいので特に気にもせずに、会うつもりもないので別の国へ向かってしまった。 だが、密かに彼女を大事にしていた人たちの逆鱗に触れてしまったようであった‥‥‥ たまにやりたくなる短編。 ちょっと連載作品 「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」に登場している方が登場したりしますが、どうぞ読んでみてください。

【完結】身勝手な旦那様と離縁したら、異国で我が子と幸せになれました

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
恋愛
腹を痛めて産んだ子を蔑ろにする身勝手な旦那様、離縁してくださいませ! 完璧な人生だと思っていた。優しい夫、大切にしてくれる義父母……待望の跡取り息子を産んだ私は、彼らの仕打ちに打ちのめされた。腹を痛めて産んだ我が子を取り戻すため、バレンティナは離縁を選ぶ。復讐する気のなかった彼女だが、新しく出会った隣国貴族に一目惚れで口説かれる。身勝手な元婚家は、嘘がバレて自業自得で没落していった。 崩壊する幸せ⇒異国での出会い⇒ハッピーエンド 元婚家の自業自得ざまぁ有りです。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2022/10/07……アルファポリス、女性向けHOT4位 2022/10/05……カクヨム、恋愛週間13位 2022/10/04……小説家になろう、恋愛日間63位 2022/09/30……エブリスタ、トレンド恋愛19位 2022/09/28……連載開始

春を拒む【完結】

璃々丸
BL
 日本有数の財閥三男でΩの北條院環(ほうじょういん たまき)の目の前には見るからに可憐で儚げなΩの女子大生、桜雛子(さくら ひなこ)が座っていた。 「ケイト君を解放してあげてください!」  大きなおめめをうるうるさせながらそう訴えかけてきた。  ケイト君────諏訪恵都(すわ けいと)は環の婚約者であるαだった。  環とはひとまわり歳の差がある。この女はそんな環の負い目を突いてきたつもりだろうが、『こちとらお前等より人生経験それなりに積んどんねん────!』  そう簡単に譲って堪るか、と大人げない反撃を開始するのであった。  オメガバな設定ですが設定は緩めで独自設定があります、ご注意。 不定期更新になります。   

ある日、木から落ちたらしい。どういう状況だったのだろうか。

水鳴諒
BL
 目を覚ますとズキリと頭部が痛んだ俺は、自分が記憶喪失だと気づいた。そして風紀委員長に面倒を見てもらうことになった。(風紀委員長攻めです)

とある文官のひとりごと

きりか
BL
貧乏な弱小子爵家出身のノア・マキシム。 アシュリー王国の花形騎士団の文官として、日々頑張っているが、学生の頃からやたらと絡んでくるイケメン部隊長であるアベル・エメを大の苦手というか、天敵認定をしていた。しかし、ある日、父の借金が判明して…。 基本コメディで、少しだけシリアス? エチシーンところか、チュッどまりで申し訳ございません(土下座) ムーンライト様でも公開しております。

処理中です...