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三人の楽しい時間

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<side絢斗>

「ねぇ、今の間にリースを作りに行こうか?」

「えっ、いいんですか?」

「うん、夕食作りは卓さんたちに任せていたら大丈夫だし。ねっ、直くんも行きたいよね?」

「はい。尚孝さん、一緒にいいですか?」

直くんの可愛いおねだりに尚孝くんはすぐに頷いていた。
ふふっ。尚孝くんももうすっかり直くんの可愛さにメロメロみたいだ。

「じゃあ、行こう、行こう!」

二人の手をとって、直くんの部屋に向かうと、直くんはもう身体が覚えているように片付けてあった棚からリース作りに必要なものを取り出した。

片付けも苦手だけれど、どこにしまったかもすぐに忘れてしまう私にとっては、直くんのこの行動はいつみてもすごいなと思ってしまう。

だから、私がこの趣味部屋で使っていた時はいつでも作れるようにテーブルにリースやアロマキャンドルの材料を全て並べていたんだ。

直くんはただ材料を出すだけじゃなく、作り方に見合った並べ方をしてくれるので、一緒に作ると正直に言って自分で作っていた時よりもはるかに作りやすい。

「あやちゃん、この前届いていた季節の飾り物も出しますか?」

「ああ、うん。そうだね。あれ、使っちゃおう!」

「はーい!」

嬉しそうに箱を開けてくれる直くんをみていると、

「絢斗さん、素敵な趣味ですね」

と尚孝くんが褒めてくれた。

「でも作るだけで、片付けも何もできないんだけどね。それと同じで料理も苦手で……」

ついつい本音をこぼしてしまうと、尚孝くんは一瞬キョトンとしながらも笑顔を見せてくれた。

「そうなんですか? でも僕はリースが作れるなんてことも知らなかったですし、それだけですごいと思いますよ。それに絢斗さんに苦手なものがあるのが親近感が湧きます」

「えっ? それってどういう意味?」

「実は、僕も料理は苦手で……お肉を焼くだけとかならなんとかできるんですけど、それでも焼きすぎて焦がしちゃったり生焼けすぎたりすることもあるし、ご飯は何度か炊こうとしたんですが、いつも水加減を間違えて、柔らかくなりすぎたり硬かったりするから一人の時はレンジで温めて作るご飯とかお弁当とかで補ってたんです」

「えーっ、そうなんだ……意外」

「そうですか?」

「うん、さっき志摩くんが尚孝くんは栄養学にも精通しているみたいな話をしていたから、てっきり料理も上手なのかと思ってたから……」

「それこそ必死に勉強したので、どんな栄養素が必要かとかは知識として身につけましたけど、実際に自分がそれを作れるかどうかは別問題ですよ。だから、一花くんの食事も貴船さんの家にいるシェフさんと相談しあって作っていただいてたんです」

「そうなんだ……」

「だから、唯人さんにはいつも美味しい食事を作っていただいてて……感謝してます。最初は申し訳ないと思ってたんですけど、自分の作るもので僕の身体ができるなら嬉しいって言ってくれて……」

「あ、それ……卓さんもよく言ってくれる……」

「ふふっ。ですよね。だって、さっき夕食を作るって仰ってた時の磯山先生……すごく幸せそうでしたから」

「尚孝くん……」

ああ、尚孝くんのこんな優しい言葉に直くんは安心したのかな。
本当にいい人だ。
志摩くんが好きになるのもわかる気がする。

「さぁ、絢斗さん。作り方を教えてください」

「ふふっ、まずはこの中から好きな形のものを選んで」

わかりやすい見本となるように前に作った完成形を見せて選ばせると尚孝くんは

「うわー、悩むなぁ。ねぇ直くんはどれにする?」

と真剣に悩み始めた。

「僕は今日はこの形にしようかな」

「ふふっ。それは初挑戦だね」

「じゃあ、僕はこっちにしようかな」

それぞれイメージに合う材料を選び、手を動かしながらおしゃべりにも花が咲く。
黙々と作るのも楽しいけれど、教え合いながら和気藹々と作るのも楽しい。

「絢斗さん、ここはどうしたらいいですか?」

「ああ、ここはね……」

ひとつ教えるたびにみるみるうちに理解していく尚孝くんをすごいなぁと思いつつ、あっという間にそれぞれのリースが完成した。

「わぁー、できました!」

「ふふっ。すっごく上手にできてる!! ねぇ、直くん」

「はい、尚孝さんすごいです!!」

「ふふっ。ありがとう。絢斗さんと直くん、二人の先生のおかげですね」

「出来上がったものを見てもらおうか。卓さんたちを呼んでこよう」

「はい!」

僕と直くんでさっと片付けを済ませて、部屋を出るとちょうど昇くんがこちらに向かってきていた。

「あ、昇さん」

「もうすぐご飯ができるよって呼びにきたんだ」

「すごくいい匂いがします」

「今日は伯父さんと志摩さんが腕を奮ってたから、俺はずっと助手だったよ」

「ふふっ。そうなんですね。パパと志摩さんのお料理楽しみです」

昇くんと手を繋いでリビングに向かう後ろ姿を、私と尚孝くんは微笑ましく思いながらついていった。
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